オーバリン大学

アメリカ合衆国オハイオ州オーバリンに位置するオーバリン大学（Oberlin College、略称OC）は、1833年に設立された歴史ある私立リベラル・アーツ・カレッジです。オハイオ州における代表的な名門校の一つに数えられ、『USニューズ&ワールド・レポート』誌が発表する国内のリベラル・アーツ・カレッジ部門ランキングでは、常に上位50位以内に位置づけられる高い評価を得ています。

歴史と多様性の尊重

オーバリンの町と大学は、1833年に長老派教会の牧師たちによって創設されました。その名称は、18世紀から19世紀にかけてフランスのアルザス地方で活躍した慈善活動家、ヨハン・フリードリヒ・オーベルリーン牧師に由来しています。創立当初から、オーバリン大学は教育の機会均等を強く志向しており、入学資格において性別や肌の色による制限を設けませんでした。これは当時のアメリカにおいては極めて先進的な姿勢であり、1833年には女性、1835年にはアフリカ系を含む有色人種の学生を受け入れを開始しました。奴隷制度廃止運動とも深く関わりを持つなど、初期から社会的な公正や進歩的な価値観を追求する伝統を培ってきました。第2代学長チャールズ・フィニーの時代に大学の地位はさらに向上し、現在も彼の名が冠されたチャペルが存在します。

教育と学術環境

全米の多くのリベラル・アーツ・カレッジと同様に、オーバリン大学も少人数制の教育を特徴としています。学生数は約3,000人程度で、教授と学生の距離が近く、きめ細やかな指導が行われています。リベラル・アーツ教育の理念に基づき、幅広い学問分野に触れることを通じて、学生の批判的思考力や総合的な人間力を育むことを目指しています。

特筆すべき教育機関として、併設されている音楽学校があります。このオーバリン音楽院（Oberlin Conservatory of Music）は、全米でも指折りの音楽学校として高い評価を得ており、世界中から才能ある学生が集まります。一般的な大学の学部と音楽院の両方を擁していることも、オーバリン大学の大きな魅力の一つと言えるでしょう。

日本との繋がり

日本の桜美林大学は、その創立者である清水安三がオーバリン大学の卒業生であることから、この大学にちなんで命名されました。両校は現在も提携関係にあり、教育交流が行われています。桜美林大学の名称の由来を説明する際には、「オベリン」と表記されることもあります。

各界で活躍する卒業生たち

オーバリン大学は、これまで様々な分野で貢献する多くの卒業生を輩出してきました。著名な出身者としては、ノーベル賞受賞者が複数いるほか、以下のような人物が挙げられます。

芸術・エンターテイメント: オーソン・ウェルズ（俳優・映画監督）、ジョン・カザール（俳優）、エイヴリー・ブルックス（俳優）、デイヴィッド・ジンマン（指揮者・ヴァイオリニスト）、ウィリアム・グラント・スティル（作曲家）
文学: ウィリアム・ゴールドマン（脚本家・小説家・劇作家）、トレイシー・シュヴァリエ（小説家）、ドナルド・ソボル（小説家）、エマニュエル・ドンガラ（小説家）、ソーントン・ワイルダー（小説家・劇作家）
学術・研究: エドウィン・O・ライシャワー（日本学者、元駐日大使）、スタンリー・コーエン（生化学者、ノーベル賞受賞）、ロバート・ミリカン（物理学者、ノーベル賞受賞）、ウィラード・ヴァン・オーマン・クワイン（哲学者）、ジョージ・ハーバート・ミード（心理学者）、ロロ・メイ（心理学者）、ロジャー・スペリー（心理学者）、ジョシュア・アングリスト（経済学者）、ロバート・ジャーヴィス（政治学者）、デイヴィド・ルイス（哲学者）、ポール・ゴールビー・クレッセー（社会学者）、岡田実麿（教授）
スポーツ・運動: モーゼス・フリート・ウォーカー（野球選手）、ダニエル・キンゼイ（陸上競技選手・体育教育者）、ジム・フィックス（ジョギング提唱者）
* 政治・社会: ジェイコブ・ドルソン・コックス（法律家・軍人・政治家）、エドゥアルド・モンドラーネ（モザンビーク独立指導者）、天木直人（外交官）、蕭美琴（政治家）、マーサ・ルート（バハーイー信仰の伝道者）

このように、オーバリン大学は学術、芸術、社会貢献など多岐にわたる分野で指導的な役割を果たす人材を育成し続けています。

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