カスタムサウンドトラック

カスタムサウンドトラックとは、ユーザーが所有する音楽データをコンピュータゲームのBGMとして流せるようにする機能です。「カスタムサントラ」や「ユーザーBGM」とも略称されます。

通常、ゲーム内で流れる音楽（BGM）は、ゲームの媒体にあらかじめ収録されており、ゲームの進行や場面展開に合わせて製作者の意図した曲が自動的に再生されます。例えば、感動的なシーンでは叙情的な音楽が、緊迫した戦闘シーンでは激しい音楽が流れるのが一般的です。これにより、ゲームの世界観や雰囲気がより深く伝わるようになっています。しかし、カスタムサウンドトラック機能があれば、プレイヤーはこのようなゲーム固有のBGMに代えて、自分の好きな音楽をゲームプレイ中に楽しむことが可能になります。

この機能を利用するには、まず使用したい音楽ファイルをゲーム機本体のストレージや外部記録メディアの指定されたフォルダに保存します。その後、ゲーム内の設定メニューなどで、どの場面（例：通常移動時、特定のイベント時、戦闘時など）でこれらの音楽を流すかを選択・設定します。設定が完了すれば、ゲーム中にプレイヤーが選んだ音楽がBGMとして再生されるようになります。

カスタムサウンドトラック機能が搭載される背景にはいくつかの理由があります。特に、アニメや特撮番組などの既存の知的財産（IP）を原作とするキャラクターゲームでは、原作ファンがテレビ放送時と同じBGMでゲームをプレイしたいという強い要望がある場合があります。しかし、ゲーム内で原作の楽曲を使用するには、日本音楽著作権協会（JASRAC）などの著作権管理団体への申請や使用料の支払いが必要となり、コストがかかる場合があります。このような場合にカスタムサウンドトラック機能を採用することで、ゲーム開発側が特定の楽曲の著作権処理をせずとも、ユーザーが自ら所有する楽曲を流せるようにするという解決策となり得ます。

この機能の実装方法は、ゲーム機本体のハードウェア機能として提供される場合と、特定のゲームソフトが独自に実装する場合に分かれます。過去には、XboxやXbox 360がハードウェアレベルでカスタムサウンドトラック機能に対応しており、特に旧世代のXboxでは場面ごとに細かくBGMを設定できるなどの仕様が見られました。PlayStationプラットフォームでは、PS3やPSPといった音楽ファイル（MP3形式など）を保存できる機種の登場が、ソフト側での機能実装を後押ししました。しかし、PS3やPSPでこの機能に対応したゲームソフトは一部に限られています。PlayStation Vita（PS Vita）はハードウェアの音楽再生アプリを起動しながらゲームをプレイできる点でカスタムサントラ利用が可能とされていましたが、全てのゲームソフトがこの挙動に対応しているわけではありませんでした。PlayStation 4|PlayStation_4では当初Spotify連携によってカスタムトラックが実現し、PlayStation 5|PlayStation_5ではApple Musicにも対応範囲が広がりました。一方、Xbox One以降のXboxハードでは、CDの直接挿入（取り込みは不可）を含む形で、対応アプリケーションをゲームと同時に起動することでカスタムトラックに対応しています。任天堂のハードウェア、例えばNintendo Switchでは、ゲーム中にカスタムサウンドトラック機能が公式に採用された例は現在のところありませんが、過去には音楽再生専用のツール（プレイやん、ニンテンドーDSi/3DSサウンドなど）が存在しました。

この機能は全てのゲームに搭載されているわけではありませんが、特にレースゲーム、格闘ゲーム、アクションゲームなど、BGMがプレイヤーのモチベーションや臨場感に大きく影響するジャンルのゲームで採用されることがあります。例えば、『グランツーリスモ』シリーズや『バーンアウトパラダイス』といったレースゲーム、また『ストリートファイターIV』や『ソウルキャリバーV』などの格闘ゲーム、さらには『スーパーロボット大戦』シリーズのようなシミュレーションRPGなど、多岐にわたるタイトルでプレイヤーが自らの選んだ音楽と共にゲームを楽しむことが可能になりました。

カスタムサウンドトラック機能は、ゲーム体験をよりパーソナルで自由なものにするためのユニークな試みと言えるでしょう。ユーザーが自身のライブラリから選んだ楽曲と共にゲームの世界に没入できることは、ゲームの再プレイ性を高め、より深い愛着を持たせる一助となります。

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