カタジロクロシトド

カタジロクロシトド（Calamospiza melanocorys）

カタジロクロシトドは、北アメリカ大陸の中央部から西部にかけて広く分布する、ホオジロ科に属する鳥類の一種です。広大な草原地帯を生息域とし、特にアメリカ合衆国のコロラド州では、1931年に州を代表する鳥として指定されています。

分類と学名

本種は分類上、カタジロクロシトド属（Calamospiza）に属する唯一の種であり、この属は単型とされています。初めて学術的に記載されたのは1837年のことで、探検家ジョン・カーク・タウンゼントがトーマス・ナトールとの旅の途中で採取した標本に基づき、Fringilla bicolorという学名が与えられました。しかし、この名前は既に他の種に使われていたため、1885年にレオナード・ヘス・ステイネガーによって現在の学名であるCalamospiza melanocorysへと改名されました。さらに遡ること1838年には、シャルル・リュシアン・ボナパルトによって、本種のために独自の属であるCalamospizaが設けられています。

分布と生息環境

カタジロクロシトドは、北米の草原に生息するスズメ目の鳥の中では比較的よく見られる種の一つです。繁殖期の主な生息地はカナダの中央部やアメリカ合衆国の中西部にある草原地帯です。秋になると、繁殖地から集団で南下し、冬の間はテキサス州南部、アリゾナ州、そしてメキシコ北部の高原地帯で越冬します。

形態

本種は小型の鳴鳥で、全長は140ミリメートルから180ミリメートル、体重は37グラムから43グラム程度です。翼を広げた際の長さ（翼開長）は250ミリメートルから280ミリメートルになります。特徴的なのは、短く太い、やや青みがかった色の嘴です。翼には大きな白い斑点が目立ち、尾羽は比較的短めで先端が白くなっています。

性的二型が見られ、特に繁殖期の雄はその全身が光沢のある黒い羽毛に覆われますが、翼の上部には依然として大きな白い斑点があります。非繁殖期になると、雄の黒い羽色は目立たなくなり、雌雄ともに似たような灰褐色の地色に白い縞模様が入った姿になります。

生態

カタジロクロシトドは主に地面の上で餌を探して生活しています。食性は季節によって変化し、夏期は主にバッタやカミキリムシなどの昆虫やクモといった無脊椎動物を捕食しますが、冬季には植物の種子を主食とします。昆虫を追いかける際には、短距離を素早く飛ぶこともあります。繁殖期以外は、群れを形成して行動し、一緒に採餌することが一般的です。

営巣期には、通常は密集しない、散らばった小規模なコロニーを形成して巣を作ります。巣は草原の地面に掘られた浅いくぼみに、草や茎などを使ってカップ状に作られます。雄は自分の縄張りを主張する際に、縄張りの上空を飛び回った後、地面に降りて特徴的なさえずりを行います。さえずりは、口笛のような音と細かく震えるトリルを組み合わせたような響きを持ちます。また、柔らかい「フー」という鳴き声も発します。

繁殖システムと性選択

繁殖において、カタジロクロシトドは社会的なつがいとしては一夫一婦制を形成する傾向がありますが、つがい相手以外との交配（つがい外交配）が広範囲に行われることが知られています。雄の個体数が雌に偏っていること、社会的な一夫一婦制というシステム、そして高いつがい外交配の頻度により、多くの雄は社会的なつがい相手を見つけることができません。社会的なつがい相手を獲得できるかどうかは、雄の繁殖成功や生涯にわたる適応度にとって非常に重要な要素であるため、社会的な交配の成功は、雄が持つ様々な形質が選択される上で重要な役割を果たしています。

雌が配偶者を選択する際の好みは、年によって大きく変動することが観察されています。ある年には雄の全身の黒さ、別の年には翼の白い模様の大きさ、また別の年には嘴の大きさなど、様々な形質に基づいて好みが示されます。このような雌の選択の年ごとの極端な変動は、雄集団における遺伝的な多様性が維持される要因の一つと考えられています。ある研究では、体の黒い羽毛と茶色い羽毛の比率、翼の模様の大きさや色、体の大きさ、嘴のサイズ、体重など、雌が選択基準とする可能性のある複数の形質を評価し、社会的な交配の成功度と年ごとの総合的な適応度を測定しました。その結果、雌の選択が雄の適応度を決定する主な要因であることが明らかになりました。雌の選択の基準が年によって変化することは、生息環境や社会的な状況の変化に適応するために有利であると推測されています。

このような雌の選択の変動は、ガラパゴス諸島に生息するダーウィンフィンチに見られる現象と類似しています。ダーウィンフィンチでは、年ごとに変動する食料供給に適応するため、異なるサイズの嘴が有利になり、これが自然選択における時間的選択の一例とされています。カタジロクロシトドにおいても、ある年に有利な形質が、別の年には不利になる可能性があるということです。これらの変動は、長期にわたる性選択のパターンを観察することの重要性を浮き彫りにしています。雌の具体的な好みを毎年特定することは可能ですが、その評価は容易ではありません。雌の選択が毎年変動するもう一つの結果として、雄の特定の形質に対する表現型的な選択圧が軽減される可能性も考えられています。

雄は交尾期に入る前は縄張り意識が比較的弱いですが、その縄張りの環境が雌の定着率、ひいては雌の繁殖成功に影響するという証拠がいくつかあります。研究によれば、巣の近くに適切な日陰があることは、雌の繁殖成功にとって重要な要素であることが示されています。このことから、雄が繁殖期に縄張りを強く守る理由の一つは、雌を引きつけ、繁殖を成功させるためであるとも考えられます。しかし、雄の攻撃性のレベル自体はあまり変化しないようです。したがって、雌の選択は、個体の適応度を示す形質の変動に対応していると結論づけられます。つがい外での交尾は、営巣地の質と関連があることも示唆されています。多くの研究で縄張りの特徴が配偶者獲得に重要であるとされてきましたが、近年の研究では、雌の選択の役割が縄張りの重要性を上回る傾向にあるという証拠が提示されています。

ています。近年の研究では、縄張りの特徴が配偶者獲得において重要である一方で、雌による選択の役割がより強調される傾向にあるという証拠も示されています。

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