ジョン・カーク・タウンゼント

ジョン・カーク・タウンゼント (1809年8月10日-1851年2月6日) は、19世紀アメリカ合衆国を代表する博物学者の一人です。ペンシルバニア州フィラデルフィアでクエーカー教徒の家庭に生まれました。彼の家族には、博物学の分野で活躍した人物が複数いました。例えば、昆虫をテーマにした書籍『Life In the Insect World』を著した妹メアリーや、奴隷制度廃止運動に関わった姉ハンナです。

タウンゼント自身は当初、医師や薬剤師としての道を歩もうとしていました。しかし、彼の関心は次第に博物学、特に鳥類学へと傾いていきます。そして、彼は本格的に鳥類の収集を開始しました。

1833年、タウンゼントはハーバード大学植物園の学芸員であったトーマス・ナトールに招かれ、翌1834年には、実業家のナサニエル・ワイスが率いるロッキー山脈から太平洋岸までの大規模な探検隊に参加します。この探検隊は、北アメリカ大陸の未開拓地域を探査することを目的としていました。

探検隊での活動を通して、タウンゼントは数多くの鳥類標本を収集しました。1835年から1836年にかけては、バンクーバーの砦に軍医として滞在し、その地で精力的に動物の標本収集を続けました。この期間、彼は北米の多様な動植物相を目の当たりにし、貴重なコレクションを形成していったのです。

1839年には、探検の経験に基づいた旅行記『Narrative of a Journey Across the Rocky Mountains to the Columbia River』を出版。この著作は、当時の北米大陸の自然環境や先住民の生活について貴重な情報を提供するものでした。

その後、1840年には『Ornithology of the United States of North America』を編集・出版。さらに、タウンゼントが収集した鳥類標本の一部は、ジョン・ジェームズ・オーデュボンが編集・出版した『アメリカの鳥類』の最終巻に掲載され、北米鳥類学史に大きな足跡を残しました。哺乳類のコレクションは、オーデュボンとジョン・バックマンの共著『北アメリカの4足動物』で紹介されています。

タウンゼントが収集し、新種として記載された鳥類には、チドリ科の Charadrius montanus、アマツバメ科の Chaetura vauxi、ホオジロ科の Calcarius ornatus（アカエリツメナガホオジロ）、アメリカムシクイ科の Setophaga nigrescens、そして Setophaga townsendi などがあります。また、リス科の Tamiasciurus douglasii など、哺乳類の新種記載にも貢献しています。

タウンゼントの博物学への貢献は、彼が収集した膨大な標本のみならず、彼が執筆した著作、そして彼が探検隊に参加した経験を通じて得られた知見にも表れています。彼の業績は、北米の自然史研究に多大な影響を与え、現代の博物学研究の基礎を築いたと言えるでしょう。彼の名前は、彼が発見し新種として記載した鳥類の一種 Setophaga townsendi にも刻まれています。これは、彼の北米鳥類学への貢献を後世に伝える、重要な証となっています。

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