カラフトシシャモ

カラフトシシャモ（樺太柳葉魚）とは

カラフトシシャモ（学名：Mallotus villosus）は、キュウリウオ目キュウリウオ科に属する海水魚です。英語ではキャペリン（capelin）と呼ばれています。

分布

カラフトシシャモは、極北海域の比較的浅い海（水深725m以浅）に生息しています。具体的には、北東大西洋の白海、ノルウェー海、バレンツ海、グリーンランド沿岸（74°Nまで）、北西大西洋のハドソン湾からメイン湾、北太平洋の韓国からファンデフカ海峡などが挙げられます。日本においては、北海道のオホーツク海沿岸に回遊してくることが知られています。

季節によって回遊パターンが異なり、そのパターンは海流や水塊と密接に関連しています。例えば、アイスランド周辺では、成熟したカラフトシシャモは春から夏にかけて北方に摂餌回遊を行い、ヤンマイエン島やグリーンランドなどを経由して9月から11月にかけて元の場所に戻ってきます。産卵回遊はアイスランド北部から1月から12月にかけて始まります。2009年には、相互作用する粒子群モデルを用いて2008年の産卵回遊ルートを予測することに成功したという研究結果も発表されています。

アイスランドでは、カラフトシシャモが貨幣のデザインに採用されるほど、国民に親しまれています。

形態

カラフトシシャモは通常、全長15cm程度に成長しますが、雄は最大20cm、雌は最大25cmに達することがあります。体重は約52gです。背鰭は10-14軟条、臀鰭は16-23軟条から構成され、脊椎骨数は62-73です。体色は、背面が薄緑色で、体側と腹面は銀色をしています。

カラフトシシャモという和名は、同じキュウリウオ科に属し、外見が似ているシシャモに由来しています。この名前は、古くから魚類学や水産学の現場で使用されてきました。

ただし、和名に「カラフト（樺太）」という地名が含まれている理由は明確にはわかっていません。シシャモとカラフトシシャモは、科内の系統的な位置が近くなく、色合いや食味も異なります。最も確実な区別点は鱗の大きさで、側線沿いの鱗の数がシシャモは61-63枚であるのに対し、カラフトシシャモは170-220枚と非常に多いです。

生態

カラフトシシャモは浅海に群れをなして生息しています。成体の餌は、浮遊性の甲殻類、多毛類、小魚などです。2-6歳（通常は3-4歳）で性成熟し、体長約13.3cmになると一度だけ産卵します。寿命は約7年です。

シシャモと同様に、産卵期の雌の腹腔は肥大した卵巣で満たされますが、河川に遡上するのではなく、春から初夏にかけて浅海域で大群を成し、夜間に波打ち際の砂礫底に押し寄せて産卵します。雄が先に産卵場所に到着し、後から来た雌は1匹あたり6,000-12,000個の付着性の卵を産みつけます。繁殖後には死んでしまいます。

卵は直径0.6-1.2mmで、約40日間で孵化します。孵化した稚魚は沿岸部を移動しながら成長し、その後、浅海へと移動します。

利用

日本へは、ノルウェー、アイスランド、カナダから生干し加工後に冷凍されたものが年間約3万トン輸入され、スーパーや居酒屋などで「子持ちシシャモ」として販売されています。

1970年代以降、シシャモの代用魚として輸入が急増しましたが、資源量に大きな差があることから、現在では「シシャモ」といえばカラフトシシャモを指すことが多く、本来のシシャモは「本シシャモ」などと呼ばれるようになりました。

2003年の農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律（JAS法）の改正に伴い、販売表示が厳格化され、原材料名には「カラフトシシャモ」と表記されるようになりましたが、商品名についてはこの規制の対象外です。

また、カラフトシシャモの塩漬けの魚卵は「シシャモッコ」や「真砂子（まさご）」という名前で、とびこと同様に利用されています。

世界的には、大西洋北東海域におけるタラ資源の重要なベースとして認識されており、ニシンとともにノルウェーとロシアによって資源管理が行われています。

カラフトシシャモは、魚粉や魚油として養殖魚用のエサとして利用されるほか、魚卵を加工したワサビキャビアも販売されています。カラフトシシャモ自体は美味な魚ですが、本シシャモの産地である鵡川漁協などでは邪魔者扱いされています。食味は本シシャモと大きく異なりますが、外見が非常によく似ているため、漁師以外では外見だけで見分けるのが難しく、また本シシャモの味を知らない人が多いことから、食品偽装の対象となるケースもあります。

乱獲と資源問題

カラフトシシャモは、和名が示す通りオホーツク海にも回遊してきますが、漁獲量の統計はなく、輸入品が流通しています。

シシャモはメスだけでなくオスも利用され、むしろ高値が付くこともありますが、カラフトシシャモの場合は商品価値がないオスは廃棄されることがあります。これは、日本の商社が、魚卵のプチプチとした食感が好まれるとしてメスを要求したためであり、オスは日本国内ではほとんど流通していません。

現在、乱獲による資源枯渇が懸念されており、漁獲制限が行われています。

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