カリュプソー

カリュプソー: ギリシャ神話の海女神

カリュプソー（Καλυψώ）は、古代ギリシャ神話に登場する海の女神であり、その名は「覆い隠す者」を意味します。彼女は、伝説的な島オーギュギアー島に住んでおり、イタケーの王オデュッセウスとのロマンチックな物語で知られています。彼女にまつわる詳細を探ってみましょう。

系譜

カリュプソーについては、ホメーロスが叙事詩『オデュッセイア』の中で言及しています。この中で、彼女は巨人アトラースの娘であるとされ、また奸知に長けた女神として描かれています。しかし、母親の正体については語られることが少なく、いくつかの異伝が存在します。ヒュギーヌスの記録によると、母親はプレーイオネーであり、彼女はプレイアデスの一員とされます。さらに、他の神話では、カリュプソーがアポロドーロスの記述によってネーレーイデスの一員とされることもあります。

カリュプソーは、姉妹にプレイアデスやヒュアデスを持ち、異母姉妹にはヘスペリデスがいます。また彼女は、オデュッセウスとの間に二人の息子、ナウシトオスとナウシノオスをもうけたと伝えられています。

オーギュギアー島

カリュプソーは、オーギュギアー島の美しい洞窟に住んでいました。この洞窟は、ハンノキやポプラ、糸杉に囲まれ、果実の実ったブドウの蔓が入り口を覆っていました。さらに、四つの泉があり、それぞれ異なる方向に流れ出ていました。泉の周りにはスミレやパセリが生い茂り、神々をも楽しませる美しい風景が広がっていました。カリュプソーは、洞窟の炉で香木を焚き、その香りが島全体に漂っていました。外界から隔離されたこの美しい島は、後にマルタのゴゾ島に結び付けられることとなりました。

神話の核心

カリュプソーが登場する『オデュッセイア』は、トロイア戦争を経て帰国を目指すオデュッセウスの冒険の一部です。オデュッセウスは魔女キルケーのもとで過ごした後、神々の怒りを買って船を失い、再び海を漂い、カリュプソーが住む島に辿り着きました。彼女はオデュッセウスを深く愛し、彼に親切に接しました。カリュプソーは彼に不死を与えることを約束し、二人はしばらくの間幸福な日々を過ごします。

しかし、オデュッセウスは次第に故郷への強い思いに駆られ、カリュプソーもまた彼を引き留めようと尽力しました。彼女とオデュッセウスが共に過ごした年数は異なる文献によって異なりますが、5年または7年とも言われています。その間、オデュッセウスはホームシックに悩み、涙を流さない日はなかったとホメーロスは語ります。

最終的にゼウスの命令を受けたカリュプソーは、オデュッセウスを帰国させることを決意します。彼女はオデュッセウスに筏を作るよう提案し、これに驚く彼に対し自分に害意がないことを誓いました。更に、出航に必要な物資を手配し、港を見送った後も彼が無事に帰れるようにルートのポイントを教えました。このように、カリュプソーの愛情は深いものでありましたが、運命には逆らえず、彼女はオデュッセウスを見送ることになります。

その後

オデュッセウスは、海の冒険の末、カリュプソーが与えた衣類のおかげで新たな土地にたどり着きますが、最終的に一説にはカリュプソーが彼への愛ゆえに自ら命を絶ったとも言われています。

影響

カリュプソーの名は今なお語り継がれ、土星の第14衛星「カリプソ」は彼女に由来する名前です。彼女の物語は、愛と運命、別れと再会の象徴として、多くの文学やアートに影響を与え続けています。

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