カルヌントゥム

カルヌントゥム：ローマ帝国の栄光を刻むオーストリアの古代都市

現在のオーストリアに位置するカルヌントゥムは、ローマ帝国において重要な軍事拠点として栄えた都市です。紀元1世紀以降はパンノニア属州に属し、ウィーンとブラチスラヴァを結ぶ主要道路の中間地点に位置していました。現在では、ニーダーエスターライヒ州のペトローネル＝カルヌントゥムとバート・ドイチュ＝アルテンブルクという2つの村にまたがる広大な「カルヌントゥム考古学公園」として、その歴史的遺産を今に伝えています。

カルヌントゥムの歴史：軍事的要衝から文化の中心地へ

カルヌントゥムの歴史は、ローマ軍の駐屯地として始まりました。その地名は、岩やケアンを意味する「Kar」または「Karn」に由来すると推測されています。紀元6年、アウグストゥスの治世下でその名が歴史上に初めて登場し、ティベリウス帝によるマルボドゥウス討伐の遠征基地として利用されたことが記録に残っています。第15軍団アポリナリスの駐屯地となったことで、カルヌントゥムは急速にローマ化が進み、ドナウ川沿いの要塞都市として発展しました。

トラヤヌス帝とハドリアヌス帝の治世下では、第14軍団ゲミナが恒久的に駐屯するようになり、カルヌントゥムの軍事的重要性が増しました。一方、北方からの琥珀交易の中心地として、経済的にも繁栄しました。有名な琥珀の道は、カルヌントゥム付近でドナウ川を渡っていたとされています。

ハドリアヌス帝はここに都市「アエリウム・カルヌントゥム」を建設し、マルクス・アウレリウス帝はマルコマンニ族との戦争中、3年間をカルヌントゥムで過ごし、有名な『自省録』の一部をこの地で執筆したと伝えられています。さらに、セプティミウス・セウェルス帝は、パンノニア属州総督時代にカルヌントゥムで皇帝位を僭称しました。しかし、4世紀にはゲルマン人の侵入によって破壊され、その後ウァレンティニアヌス1世帝によって部分的に修復されたものの、かつての重要性を失い、中心地はウィンドボナ（ウィーン）に移りました。中世にはハンガリー人によって完全に破壊され、長い眠りにつきました。

カルヌントゥム考古学公園：古代都市の息吹

現在、カルヌントゥム考古学公園は、市民都市、軍事都市、そしてカルヌントゥム博物館の3つの主要なエリアから構成されています。

市民都市は、ローマ時代の市民生活を垣間見ることができるエリアです。ローマ都市市街地、宮殿（公衆浴場と推測されている）、アンフィテアトルム、そしてハイデントーア（異教徒の門）といった遺跡が残されています。特に、ルキウスの家と呼ばれる古代住居は、古代の工法を用いて復元され、一般公開されています。約15,000人を収容できたアンフィテアトルムは、ローマ帝国でも4番目の規模を誇っていたと伝えられています。

軍事都市では、アンフィテアトルムの遺跡が残っており、隣接する博物館では剣闘士の歴史を紹介しています。

カルヌントゥム博物館は、バート・ドイチュ＝アルテンブルク村のドナウ川河畔に位置し、発掘調査で出土した貴重な遺物が展示されています。

カルヌントゥムとフィクション

カルヌントゥムの遺跡は、多くの作家にインスピレーションを与えました。グイド・フォン・リストはカルヌントゥムの廃墟に感銘を受け、最初の小説を書いたと言われています。また、ハリイ・タートルダヴとジュディス・タールの小説『Household Gods』は、マルクス・アウレリウス時代のカルヌントゥムを舞台にしています。

カルヌントゥム考古学公園は、ローマ帝国の歴史と文化を理解するための貴重な場所です。雄大な遺跡と博物館の展示を通して、2000年以上前の歴史にタイムトリップしてみませんか？

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