第14軍団ゲミナ

第14軍団ゲミナ：双子の名を冠するローマ帝国の精鋭

第14軍団ゲミナ（Legio XIIII Gemina）、正式名称レギオン14軍団ゲミナ・マルティア・ウィクトリクスは、ローマ帝国の歴史を彩る名高い軍団の一つです。その起源は共和政ローマ末期、紀元前41年にオクタウィアヌス（後のアウグストゥス）によって創設され、5世紀半ばまで、長きにわたり帝国の防衛と拡大に貢献しました。

軍団名の由来

「ゲミナ」とは、ラテン語で「双子」を意味します。この名は、軍団が元々二つの部隊から統合されたことに由来すると考えられています。その一つは、ウェルキンゲトリクスの反乱におけるアレシアの戦いに参加した、ガイウス・ユリウス・カエサルの第14軍団である可能性が指摘されています。「マルティア・ウィクトリクス」という称号は、60-61年のボウディッカの反乱鎮圧における目覚ましい活躍を讃え、時の皇帝ネロによって授与されました。

軍団の紋章は、創設者オクタウィアヌスが設立した他の軍団と同様に、一角獣が用いられています。

輝かしい軍歴

ユリウス＝クラウディウス朝時代

第14軍団ゲミナは、まず低地ゲルマニアのモグンティアクム（現在のマインツ）に駐屯しました。43年には、皇帝クラウディウスによるブリタンニア侵攻に参加し、その後の60年から61年にかけて発生したボウディッカの反乱鎮圧において、重要な役割を果たしました。

フラウィウス朝時代

ドミティアヌス帝の治世下で、ルキウス・アントニウス・サトゥルニヌスが反乱を起こすと、第14軍団は第21軍団ラパクスとともに反乱を支持しました。しかし、反乱は鎮圧され、第21軍団は解散という憂き目に遭います。92年、第14軍団ゲミナは任地をパンノニア（現在のハンガリー西部）に移され、以降、ウィンドボナ（現在のウィーン）を拠点としました。

五賢帝時代

パンノニアでは、サルマタイ人の侵入に対する防衛任務に当たりました。トラヤヌス帝の時代には、ダキア人との戦争（ダキア戦争）に従軍し、勇猛果敢に戦いました。その後、軍団はカルヌントゥム（現在のオーストリア、ペトロネル＝カルヌントゥム）に移転し、その後の歴史を通じてこの地を拠点とすることになります。カルヌントゥムでは、主にマウリ族の国境侵犯を防ぐ任務に就き、またルキウス・ウェルスの下でパルティアとの戦争にも参加しました。マルクス・アウレリウス・アントニヌス帝の時代には、皇帝自身がカルヌントゥムで軍の指揮を執りました。

セウェルス朝時代

五賢帝時代が終焉を迎え、コンモドゥス帝が暗殺され、ペルティナクス帝が即位すると、各地で対立皇帝が擁立され、帝国は内乱状態に陥ります。この時、第14軍団を含むパンノニアの全軍団は、セプティミウス・セウェルスを支持し、皇帝として推戴しました。第14軍団は彼の指揮下でローマに進軍し、対立皇帝ディディウス・ユリアヌスを殺害。セウェルスは元老院からローマ皇帝として正式に承認され、セウェルス朝を開きます。皇帝となったセウェルスの下で、第14軍団は対抗勢力であるペスケンニウス・ニゲルとの戦いにも従軍し、勝利に貢献しました。また、セウェルスの指揮下で、中東のパルティアとの戦争にも参加し、クテシフォンを陥落させた戦闘にも参加したと考えられています。

軍人皇帝時代

ウァレリアヌス帝がサーサーン朝ペルシアとの戦いで捕虜となり、ローマ帝国は深刻な混乱に陥ります。第14軍団は、対立皇帝レガリアヌスを支持して、正当な皇帝であるガリエヌスと戦いました。しかし、ガリエヌスが皇帝として権力を確立すると、今度はガリエヌスの下で、西方に出現したガリア帝国のポストゥムスに対抗する戦いに参加しました。

帝国末期

5世紀に入っても、第14軍団はカルヌントゥムに駐屯していました。しかし、430年代を境に、記録からその姿を消します。恐らく、ローマ帝国末期の混乱の中で、ドナウ川流域の領土が蛮族の侵略を受けたことにより、壊滅したと考えられています。

第14軍団ゲミナは、その長い歴史の中で、数々の戦いを経験し、ローマ帝国の興亡を見守ってきました。その勇敢な戦いぶりは、後世に語り継がれています。

もう一度検索