マルコマンニ

マルコマンニ族：古代ゲルマンの一民族

マルコマンニ族は、古代ヨーロッパに存在したゲルマン民族の一つであり、ブリ族やスエビ族と密接な関係を持っていたとされています。

歴史

出自

マルコマンニという名称の語源には、以下の2つの説があります。

1. 古いゲルマン語の「march」（前線、境界）と「men」（人々）を組み合わせた言葉であるという説。
2. 紀元前13年頃、大ドルススのローマ軍団によるゲルマン遠征に副官として参加したマルクス・ファビウス・ロマーヌスに由来するという説。ロマーヌスはローマを捨て、ゲルマン人を軍隊として組織したと伝えられています。ただし、ロマーヌスは小麦の投機売買の罪で追放されたとする文献もあり、その追放後にマルコマンニ族と結びついたとも考えられています。一部の情報源によれば、ロマーヌスは元老院議員であり、広大な土地を所有し、戦車競走のチームスポンサーでもあったとされています。

紀元前9年、大ドルススはマルコマンニ族を攻撃し、現在のボヘミア地方に追いやりました。そこでマルコマンニの王マルボドゥウスが強力な王国を築き、ローマ帝国にとって脅威となりました。しかし、アウグストゥス帝が対応する前にイリュリアで戦争が勃発し、マルコマンニ討伐は実行されませんでした。その後、マルボドゥウスはカトゥアルダによって王位を奪われ、追放されました（紀元19年）。

1世紀後半のタキトゥスの『ゲルマニア』によれば、マルコマンニ族の王はローマの承認を得て即位していたとされています。

マルコマンニ戦争

2世紀、マルコマンニ族はクアディ族、ヴァンダル族、サルマタイ族などの周辺民族と同盟を結び、ローマ帝国と敵対するようになりました。これは、ゴート族のような大規模な民族の移動に触発されたものと考えられています。歴史家エウトロピウスによれば、マルクス・アウレリウス帝率いるローマ軍は、パンノニアのカルヌントゥム要塞で3年間、マルコマンニ同盟と戦いました。エウトロピウスはこの戦争とマルクス・アウレリウス帝の勝利をポエニ戦争になぞらえましたが、この比較は、この戦争がローマ帝国の衰退の始まりとなったという点で適切でした。この戦争では、2人のプラエトリアニ司令官が戦死しています。マルコマンニ族がウィンドボナとカルヌントゥムを攻撃したことがきっかけで、166年に戦争が始まりました。マルコマンニ側はパンノニアとノリクムの国境地帯を侵略し、Flavia Solvaを荒廃させ、アドリア海沿岸のアクイレイアにまで迫りました。戦争はマルクス・アウレリウス帝が亡くなる180年まで続きました。ローマ帝国は一応勝利を収めましたが、得たものは少なく、滅亡までドナウ川を国境線として維持しました。

その後

4世紀中頃、マルコマンニの女王フリティギルの時代に、アンブロジウスによってキリスト教が伝えられました。

「マルコマンニ型ルーン」と呼ばれるルーン文字がありますが、マルコマンニ族そのものとは無関係とされています。

409年、マルコマンニ族、クアディ族、ブリ族の一団がピレネー山脈を越えてガラエキア（現在のガリシア州およびポルトガル北部）に移住しました。そこで彼らはフォエデラティ（ローマの同盟者）となり、ガラエキアにスエビ王国を建国しました。410年、王ヘルメリックはローマ皇帝に忠誠を誓い、ガラエキア属州の首都であったブラカラ・アウグスタ（現在のブラガ）をスエビ王国の首都としました。

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