カヴァキーニョ

カヴァキーニョとは

カヴァキーニョは、ブラジルを代表する弦楽器の一つで、特にサンバやショーロといった活気あふれる音楽ジャンルにおいて、リズム楽器としてもメロディー楽器としても重要な役割を果たしています。その明るく軽快な音色は、ブラジル音楽に独特の魅力をもたらします。

歴史的背景とルーツ

カヴァキーニョの直接的なルーツは、15世紀から16世紀にかけてポルトガルからブラジルへ渡った移民たちが持ち込んだ「ブラギーニャ」という民族楽器にあるとされています。このブラギーニャは、当時ポルトガルで人気を博していた小型の弦楽器でした。驚くべきことに、同じブラギーニャを起源とする楽器は、遠く離れた他の地域にも伝播し、それぞれ独自の発展を遂げています。例えば、ポルトガルからの移民がハワイに持ち込んだものは、今日世界中で親しまれているウクレレへと変化しました。また、インドネシアに伝わったものは、クロンチョン音楽に用いられる同名の楽器となりました。このように、カヴァキーニョはブラギーニャという共通の祖先を持つ楽器ファミリーの一員と言えます。

名前の由来

カヴァキーニョの本来の呼び名は「カヴァコ（Cavaco）」と言われています。この楽器が比較的小型であることから、愛情を込めて、ポルトガル語で「小さいもの」を示す指小辞である「-nho（ンニョ）」を付けて「カヴァキーニョ」と呼ばれるようになったと伝えられています。この愛称が一般的になり、現在では「カヴァキーニョ」という名称で広く知られています。

楽器の特徴

カヴァキーニョは、一般的に4本の鉄弦を備えています。標準的な調弦としては、D-G-B-DやD-G-B-Eが多く用いられます。これらの調弦によって、コード演奏や単音でのメロディー演奏が可能となります。
演奏には、パリェタと呼ばれるナイロン製の薄いピックが使われます。このピックを用いて弦を素早くかき鳴らすことで、カヴァキーニョ特有のリズミカルでパーカッシブなサウンドが生み出されます。特にサンバのリズムセクションにおいては、その刻むような演奏が楽曲全体のグルーヴを支える重要な要素となります。

派生楽器：バンジョー・カヴァコ

1980年代に入ると、サンバの一形態であるパゴーヂを演奏していた著名なグループ、フンド・ジ・キンタルのメンバーであったアルミール・ギネトが、従来のカヴァキーニョの木製胴を、バンジョーの共鳴胴に置き換えるという革新的な試みを行いました。これにより、楽器の音量が飛躍的に増大し、特に拡声設備のない屋外などでの演奏においてその効果を発揮しました。この改良された楽器は、現在バンジョー・カヴァコ、あるいはバンジョー・カヴァキーニョと呼ばれ、多くの演奏家に用いられています。

主な演奏家

カヴァキーニョは、ブラジル音楽において多くの名手を生み出してきました。

エンヒッキ・カゼス
ワルヂール・アゼヴェード
ハファエル・ハベーロ
ルシアナ・ハベーロ

など、歴史的あるいは現代の著名な演奏家たちが、この楽器の可能性を追求し、その魅力を世界に伝えています。

関連事項

カヴァキーニョが活躍するサンバをはじめ、ブラジル音楽には様々な楽器が使われます。

スルド
アゴゴ
タンボリン
パンデイロ
カイシャ
ガンザ
クイーカ
タンタン
ヘコヘコ
ヘピーキ

といった多くの打楽器群と共に、カヴァキーニョはブラジル音楽の豊かなサウンドスケープを形作っています。また、カヴァキーニョは楽器としてだけでなく、楽曲のモチーフにもなっています。例えば、ブラジルの作曲家エルネスト・ナザレーは、ピアノのためのポルカ『カヴァキーニョよ、頑張れ! (Apanhei-te, Cavaquinho!)』を作曲しており、この楽器への愛情が込められた名曲として知られています。

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