カールリス・ウルマニス

カールリス・ウルマニス：ラトビアの指導者、その功績と評価

カールリス・アウグスツ・ヴィルヘルムス・ウルマニス（1877年9月4日 - 1942年9月20日）は、ラトビア共和国の政治家であり、1918年から1940年まで同国の指導者として、絶大な影響力を行使しました。彼の治世は、ラトビア国内で未だに評価が分かれるものの、独立国家としてのラトビアの基礎を築いた功績は否定できません。

生い立ちと青年時代

富農の家に生まれたウルマニスは、スイス連邦工科大学チューリッヒ校とライプツィヒ大学で農学を学びました。帰国後は、記者、教師、農場管理人として働き、1905年の革命に参加。一時投獄された後、ロシア帝国当局の追及を避けるため亡命し、アメリカ合衆国のネブラスカ大学リンカーン校で農学の博士号を取得しました。その後、テキサス州で事業を経営しましたが、1913年に帰国しました。

独立ラトビアの政治家として

第一次世界大戦終盤、ウルマニスは「ラトビア農民連合」を組織し、同党はラトビアを代表する政党へと成長しました。1918年11月18日、サエイマ（国会）はウルマニスを初代首相に任命し、ラトビア共和国の独立を宣言しました。独立戦争勝利後、ラトビアは議会共和制を確立し、ウルマニスは1918年から1934年の間に、数度にわたり首相を務めました。

1934年5月15日のクーデター

1934年5月15日、ウルマニスはクーデターを決行し、戦時体制を宣言、すべての政党を解散させ、サエイマの機能を停止しました。彼は権威主義体制を確立し、自らを大統領に任じました。このクーデターにより、多くの政治家や活動家が逮捕され、収容所に送られました。

権威主義体制

ウルマニスの統治は、他の欧州諸国の独裁制とは異なり、個人的なものでした。彼は支配政党や傀儡の国会を設けず、新しいイデオロギーの建設も試みませんでした。政治活動は非合法化され、文化的・経済的な活動は国家の指導下に置かれました。ウルマニスは農民や保守的なラトビア人から支持を得ていたとされますが、1931年の選挙での支持率は低いものでした。

思想

ウルマニスはラトビア人の国粋主義者であり、「ラトビア人のためのラトビア」というスローガンを掲げ、ラトビア民族による国民国家を志向しました。しかし、特定の民族への抑圧政策は行われず、少数民族の文化的な発展も奨励されました。ウルマニス政権は、国民経済に介入し、ラトビア文化を推奨する政策を実施しました。

経済

ウルマニス政権下において、ラトビアは経済成長を遂げました。政府は産業を指導し、零細企業を国有化・合併させることで競争力を強化しました。1935年には中央銀行が設置され、多くの公共事業が発注されました。経済は国家の監督下に置かれ、特に農業や製造業は綿密に管理されました。この結果、ラトビアは高い生活水準を享受しましたが、自由や市民権に対する制約も伴いました。

後半生とその死

1939年、モロトフ・リッベントロップ協定により、ラトビアはソ連の勢力圏下に置かれました。1940年、ソ連はラトビアを占領し、ウルマニスは辞職を強制されました。その後、逮捕されシベリアに送還され、1942年に赤痢により死亡しました。ウルマニスの墓地の所在は不明ですが、トルクメンバシに記念碑が残されています。

評価

ウルマニスの事績に対する評価は、今もなお議論の的となっています。ソビエト時代には、ナチス同様のファシストとして糾弾されましたが、亡命ラトビア人の間では、黄金時代を築いた指導者として称賛されました。現代のラトビアでは、独立の象徴として評価される一方で、権威主義体制については賛否が分かれています。しかし、ラトビアの独立と発展に大きく貢献した人物として、その名は歴史に刻まれています。

ウルマニスの甥であるグンティス・ウルマニスが、ソビエトからの解放後初の大統領に選出されたことは、彼の知名度が衰えていないことを示しています。リガにはウルマニスにちなんで名付けられた道路があり、中央公園には記念の銅像が設置されています。

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