カーヴィヤ

カーヴィヤとは

カーヴィヤ（サンスクリット: काव्य, kāvya）は、インド古典文学の重要な一部であり、主に美文体によって表現される作品群を指します。この言葉は「詩人」を意味するカヴィ（कवि, kavi）に由来し、「詩人の作品」という意味を持ちます。カーヴィヤはサンスクリットやプラークリット、またはアパブランシャで書かれ、韻文として扱われることが一般的ですが、必ずしも韻を踏まなくても良いとされています。

カーヴィヤの概要

カーヴィヤは、特定の技法や韻律を共有する作品集であり、高度な教養を持つ作者や享受者が求められます。多くの場合、これらの作品は宮廷文学として成立し、文学的な技術と内容の密度が強調されるため、理解には相応の知識が必要とされます。カーヴィヤは大きく分けて詩と戯曲の2つのカテゴリに分類されますが、特に6世紀以降、詩的な技法を用いた散文作品も数多く登場しました。

マハーカーヴィヤ

長大な作品は「マハーカーヴィヤ」（mahākāvya、大詩）として知られ、その代表作としては、カーリダーサによる『ラグ・ヴァンシャ』や『クマーラ・サンバヴァ』、バーラヴィの『キラータールジュニーヤ』、マーガの『シシュパーラヴァダ』が挙げられます。これらの作品は物語的な内容を持ちながらも、語りよりも叙述技法の巧みさが際立っているのが特徴です。

ラグカーヴィヤ

一方、ラグカーヴィヤ（laghu-kāvya、小詩）は、個々の詩節が独立した作品として成立しています。古典的な戯曲に関する重要な資料は、バラタの『ナーティヤ・シャーストラ』（演劇論書）であり、演劇は多様な種類に分けられます。主なものとしてはナータカ（nāṭaka）という、神話や叙事詩を基にした約10幕の劇があり、王や神聖に仕える仙人を主人公としています。プラカラナ（prakaraṇa）という形式では、都市の上層社会を描いた作品が多いです。また、ナーティカー（nāṭikā）作品は、王と後宮の女性間の恋愛を描写し、しばしば女王の嫉妬がストーリーの中心に据えられます。

ラサの概念

戯曲の中では、8つのラサ（情感）が振り分けられることが重視されます。戯曲全体の主調となるラサは統一されているべきで、他のラサはあくまで補助的に用いる必要があります。カシミール地域において発展した詩論は、ラサ論と詩論を統合したアプローチを取り入れ、特にドゥヴァニ（暗示された真意）を含む詩を高く評価しました。

歴史的背景

カーヴィヤの早い例としては、2世紀の仏教文学者アシュヴァゴーシャの叙事詩『サウンダラナンダ』や『ブッダチャリタ』が挙げられます。また、彼の戯曲も一部が現存しています。4-5世紀に活躍したカーリダーサは、確実に真作とされる作品を残しており、特に『ラグ・ヴァンシャ』や『クマーラ・サンバヴァ』などが有名です。さらに、シュードラカ作の『ムリッチカティカー』は、プラカラナ劇の優れた例として評価されています。

その後、10世紀までに美文は栄え続け、ラグカーヴィヤの初期の形が見られるようになりました。ハーラ王が編纂した『ガーハー・サッタサイー』や、グプタ朝時代に作られたバルトリハリの『三百頌』などがこの時期に知られています。8世紀には、恋愛抒情詩集『アマルシャタカ』も作られました。

さらに6-8世紀の時代には、バーラヴィの『キラータールジュニーヤ』やマーガの『シシュパーラヴァダ』が創作され、言語的な技巧や叙述の多様性が見られました。ジャイナ教においても、プラークリットを利用したマハーカーヴィヤが創作され始め、この時期に散文によるカーヴィヤも現れました。著名な作品には、ハルシャ・ヴァルダナの事績を記したバーナの『ハルシャチャリタ』があり、作品の難解さが増すにつれて注釈も書かれるようになりました。ダンディンの『カーヴィヤーダルシャ』などの詩論書もこの時代の中で編纂されています。

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