ガイウス・フリウス・サビニウス・アクイラ・ティメシテウス

ガイウス・フリウス・サビニウス・アクイラ・ティメシテウス

ガイウス・フリウス・サビニウス・アクイラ・ティメシテウスは、3世紀のローマ帝国において、皇帝ゴルディアヌス3世の側近として活躍した人物です。彼の生涯は、ローマ帝国の動乱期における政治と軍事の複雑な関係を浮き彫りにしています。

生涯

ティメシテウスの出生地や前半生については、詳しい記録が残っていません。しかし、彼のキャリアはセウェルス朝の皇帝ヘリオガバルスの時代に始まったとされています。彼は特に財務能力に長けており、その手腕を買われて帝国の各地で要職を歴任しました。

彼はヒスパニア、アラビア・ペトラエア、シリア、パレスティナ、ビテュニア、ポントス、パフラゴニア、ゲルマニア・インフェリオル、ガリア・ベルギカ、ガリア・アクィタニア、ガリア・ルグドゥネンシスといった広範囲の属州で財務を担当しました。これらの経験を通じて、彼は帝国の財政状況を熟知し、行政手腕を磨きました。

238年にゴルディアヌス3世がローマ皇帝に即位すると、ティメシテウスはその能力を認められ、241年にプラエフェクトゥス・プラエトリオ（近衛長官）に任命されました。近衛長官として、彼は軍事面でも才能を発揮し、若き皇帝ゴルディアヌス3世を支えました。皇帝自身も彼を深く信頼し、その母アントニアと共に、ティメシテウスに全幅の信頼を寄せました。その証として、ゴルディアヌス3世はティメシテウスの娘フリア・サビニア・トランquilinaを皇后に迎えました。これにより、ティメシテウスは皇帝の義父という、帝国において非常に強い影響力を持つ立場を手に入れることになりました。

ティメシテウスは、まず不安定だったアフリカのリメス（国境地帯）の安定化に尽力しました。その後、ローマ帝国の東方属州を脅かしていたサーサーン朝（ペルシア）への対策として、ゴルディアヌス3世と共に遠征を計画しました。

243年、ティメシテウスが指揮するローマ軍は、ニシビス（現在のヌサイビン）やカルラエ（現在のハッラーン）を制圧し、レサエナの戦いではサーサーン朝に対して勝利を収めました。これにより、ペルシア軍をローマ領から駆逐することに成功し、ローマ帝国の東方における勢力を回復しました。しかし、さらなる進軍を目前にしたその時、ティメシテウスは病に倒れ、急死してしまいました。

ティメシテウスの死後、その後任にはピリップス・アラブスが任命され、ペルシアとの戦いは継続されました。ペルシア側の資料では、ローマ軍はペルシアに敗北し、ゴルディアヌス3世は戦死したとされています。一方、ローマ側の資料では、ゴルディアヌス3世はユーフラテス川上流で病死したとされています。いずれにせよ、ティメシテウスの死から1年後の244年、ゴルディアヌス3世に代わってピリップス・アラブスがローマ皇帝に即位しました。

ティメシテウスは、短期間ながらもゴルディアヌス3世の治世を支え、ローマ帝国の安定に大きく貢献しました。彼の軍事・政治手腕は、当時のローマ帝国にとって不可欠なものであり、その死は帝国の将来に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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