アラビア・ペトラエア

アラビア・ペトラエア：ローマ帝国の属州

アラビア・ペトラエアは、2世紀にローマ帝国によって創設された属州で、現在のヨルダン、シリア南部、シナイ半島、サウジアラビア北西部を含む地域に存在しました。本記事では、その成立からローマ化、そしてイスラム教徒による征服まで、アラビア・ペトラエアの歴史を詳しく解説します。

成立の背景

アラビア・ペトラエアは、皇帝トラヤヌスによって106年にローマ帝国に編入されました。この地域は以前、ナバテア王国の領域でしたが、ラッベル2世ソテルの死後、ローマ軍によって征服されました。トラヤヌスは積極的な外征を行い、この地域を帝国の版図に組み込みました。ただし、アラビア征服においてトラヤヌスは「アラビクス」の称号を得ていないため、ナバテア王国側に何らかの事情があったとも考えられています。

地理的特徴

アラビア・ペトラエアは地域によって大きく異なり、北部のヨルダン川周辺に都市が集中していました。モアブ台地は比較的肥沃でしたが、それ以外の地域は乾燥地帯でした。アカバ湾に面したアカバは重要な港湾都市でした。州都はボスラとペトラの2箇所とする説があり、属州総督は両方を拠点としていました。

ローマ化

ローマ帝国の支配下に入ると、公用語はギリシア語に改められました。当初はナバテア語やアラム語が使われていましたが、ローマの支配が進むにつれてギリシア語が普及しました。ラテン語は一部で使用されたものの、ギリシア語ほどではありませんでした。また、ローマの文化や価値観も導入され、公共事業や軍事の賛美、ギリシア文化などが広まりました。

ローマ帝国の国境として

アラビア・ペトラエアの南の国境は、砂漠地帯であり「アラビアの防護壁（リメス）」と呼ばれました。その先にはパルティア王国が存在し、サラセン人が住んでいました。パルティア人やパルミラ人の侵入もありましたが、他のローマ帝国の国境地域に比べると比較的平穏な期間が長かったと言えます。

その後

シリア属州総督が反乱を起こした際、アラビア・ペトラエアは支援を行いませんでした。セプティミウス・セウェルス帝の時代には、その忠誠心を認められ、領土が拡大されました。ディオクレティアヌス帝の時代には、統治制度の再編によって領域がさらに拡大されました。

イスラム教徒による征服

7世紀になると、アラビア・ペトラエアは正統カリフのウマル率いるイスラム教徒によって征服され、ローマ帝国の支配は終焉を迎えました。

アラビア・ペトラエアは、ローマ帝国の属州として、その歴史の中で重要な役割を果たしました。その地理的特徴、ローマ化の過程、そしてその後の変遷は、古代史を理解する上で貴重な情報を提供してくれます。

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