ガティネ家

ガティネ家（アンジュー家）とは

ガティネ家（フランス語：Maison de Gâtinais）、またはアンジュー家（フランス語：Maison d'Anjou）は、フランスのガティネ伯に由来する貴族の家系です。11世紀以降、アンジュー伯として勢力を拡大し、1131年以降はエルサレム王を輩出、イングランド王家との婚姻を通じて1154年よりイングランド王位を獲得し、プランタジネット朝を開きました。

起源と発展

ガティネ家は、1060年にジョフロワ3世が母方の伯父であるジョフロワ2世からアンジュー伯位を相続したことで台頭しました。婚姻政策によってメーヌを獲得し、十字軍への参加を通じてテンプル騎士団との関係を深めました。1131年には、フルク5世がエルサレム女王メリザンドと結婚し、エルサレム王国を支配下に置きました。本家は1154年にプランタジネット家となり、イングランド王国、アイルランド、ウェールズ公国を支配する広大なアンジュー帝国を築き上げました。

アンジュー伯

ジョフロワ3世（髭伯）：1060年 - 1067年
フルク4世（病弱伯）：1067年 - 1109年（ジョフロワ4世と共同統治）
フルク5世（若伯）：1106年 - 1129年（エルサレム女王メリザンドと結婚しエルサレム王フルク1世となる）
ジョフロワ5世（美男伯）：1129年 - 1151年
* アンリ1世：1151年 - 1189年（1154年にイングランド王ヘンリー2世となる。以降、1199年までイングランド王がアンジュー伯を兼ねる）

エルサレム王国の統治

1127年、アンジュー伯フルク5世はエルサレム国王ボードゥアン2世の要請を受け、王女メリザンドと結婚しました。ボードゥアン2世には後継となる男子がいなかったため、メリザンドを後継者とするために、フルク5世の軍事力と財力が必要だったのです。フルク5世はメリザンドとの共同統治を条件に結婚を承諾し、1129年に結婚しました。

1131年にボードゥアン2世が死去すると、フルク5世とメリザンドはエルサレムを共同統治しましたが、フルク5世はアンジュー出身者を重用し、現地貴族との対立を招きました。また、フルク5世はエルサレム王国の宗主権を主張しましたが、その権威は弱く、諸侯からの反発を受けました。

国内では、メリザンドの従兄弟であるヤッファ伯ユーグ2世との対立が激化しました。フルク5世はユーグ2世を反逆罪で告発し追放しましたが、ユーグ2世に対する暗殺未遂事件が発生し、フルク5世への疑念が高まりました。この事件を機に、メリザンドが主導権を握り、フルク5世の影響力は低下しました。1143年、フルク5世は狩猟中に事故死し、メリザンドが単独で統治を行うこととなりました。

イングランド王位の継承

フルク5世の息子ジョフロワ5世は、1128年にイングランド王ヘンリー1世の娘マティルダと結婚しました。マティルダは、神聖ローマ皇帝ハインリヒ5世との死別後、父ヘンリー1世からイングランド王位継承者に定められていましたが、ヘンリー1世の死後に王位を簒奪されたスティーブンとの間で王位を巡る争いが勃発しました。1133年にマティルダは男子アンリ（後のヘンリー2世）を出産し、王位継承権を主張しました。1153年、スティーブンの後継者ウスタシュが死去したことで、スティーブンはアンリを後継者とする講和を結びました。翌1154年にスティーブンが死去すると、アンリはヘンリー2世としてイングランド王位に就き、プランタジネット朝を開きました。以後、プランタジネット朝、ランカスター朝、ヨーク朝と3つの王朝を通して、ガティネ家の血を引く者がイングランド王位を継承しました。

エルサレム王国の終焉

ボードゥアン4世の死後、エルサレム王国は衰退の一途を辿りました。1187年にはエルサレムが陥落し、シビーユ女王が死去しましたが、ギー・ド・リュジニャンは王位を譲らず、王位を巡る争いが続きました。イザベル1世の死によってガティネ家のエルサレム王統は断絶し、サラセン人による征服によって、ウトルメールは失われました。しかし、エルサレム国王の称号はその後も受け継がれ、現代のヨーロッパ君主の多くがこの称号を保持しています。

まとめ

ガティネ家は、アンジュー伯からエルサレム王、そしてイングランド王へと繋がる、ヨーロッパ史において重要な役割を果たした家系です。その興隆と衰退は、中世ヨーロッパの政治、宗教、社会情勢を反映しており、興味深い研究対象となっています。

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