ガロン (競走馬)

ガロン：日本競馬史を彩った伝説の種牡馬

ガロン (Gallon) は、大正期から昭和初期（1920年代～1930年代前半）にかけて日本競馬界を席巻したサラブレッド種牡馬です。競走馬としては活躍できませんでしたが、その類まれな繁殖能力で、日本競馬の歴史に不滅の功績を残しました。本稿では、ガロンの生涯、その血統、そして産駒たちの活躍について詳細に見ていきます。

輝かしい血統背景

ガロンの血統は、まさに華麗なるものでした。父系祖父はアスコットゴールドカップを連覇した名馬アイソノミー。父ガリニュールは、競走成績こそ平凡でしたが、イギリスのリーディングサイアーに上り詰めた名種牡馬です。母フレアはイギリスの2歳チャンピオンで、1000ギニー（桜花賞のモデル）優勝馬という輝かしい経歴を持っていました。さらに、その妹もコロネーションステークスの優勝馬という、まさにサラブレッドの王族と言える血統でした。

当時、ガロンの従兄弟にあたるプリンスパラタインがイギリスで活躍していたことも、ガロンの血統の高さを示すものです。このような良血統の馬が日本に輸入されたことは、当時としては異例中の異例と言えるでしょう。

惜しまれつつも種牡馬として

ガロンは若くして肩を痛め、競走馬としてのキャリアを断たれました。しかし、その才能は種牡馬として開花することになります。1912年、24000円で陸軍省馬政局に購入され、青森県七戸の奥羽種馬牧場に迎えられました。当初は軍用馬の改良にも貢献しましたが、その気性の荒さは有名で、牧夫の指を食いちぎったという逸話も残っています。

驚異的な産駒たちの活躍

ガロンの産駒たちは、日本競馬界に大きな衝撃を与えました。初年度産駒から重賞勝ち馬を輩出し、その名は瞬く間に広まりました。特に1923年以降は、当時の最高峰競走である連合二哩を3連覇するなど、数々の重賞を制覇。10戦9勝のピューアゴウルドを始め、ナスノ、フロラーカップ、アスベルといった名馬が、連合二哩や帝室御賞典といった大競走を制覇しました。

ガロンは1924年、1925年、1927年にはリーディングサイアーランキング3位にランクインするなど、その繁殖能力の高さを証明しました。昭和に入ると、産駒の活躍はさらに加速。ナスノは連合二哩、濠抽混合、帝室御賞典と、当時の三大競走を制覇する偉業を達成しました。

ガロン自身は1930年に急死しましたが、その血統はその後も長く競馬界を席巻しました。ガロン産駒の第七ガロン、エミグラント、ヒラデエナモールド、アスパイヤリングなども種牡馬として成功を収め、さらに多くの重賞勝ち馬を輩出しました。

伝説の血脈

ガロンの血統は、現代の競馬界にも大きな影響を与えています。フロラーカップの血統からはウオッカ、スペシャルウィーク、ディープインパクトといったG1優勝馬が輩出され、その子孫は現在も活躍を続けています。アスベルを母に持つオーグメントの血統からも、メジロマックイーン、ヤマトキョウダイといった名馬が誕生しています。ガロンの血脈は、日本競馬の歴史に深く刻まれています。

代表的な産駒

ここでは、ガロンの代表的な産駒の数々について、その活躍を簡単に紹介します。

ピューアゴウルド: 7戦全勝で連合二哩を制覇した名牝。生涯唯一の敗戦は、過酷なハンデキャップを背負ったレースでした。
スターリング: 連合二哩優勝馬。若くして競走中に事故死するという悲劇的な最期を遂げました。
フロラーカップ: 連合二哩、帝室御賞典を制覇。繁殖牝馬としても成功し、その子孫は現在も活躍しています。
アスベル: 帝室御賞典、連合二哩を制覇。繁殖牝馬としても成功し、メジロマックイーンなどの名馬を輩出しました。
ナスノ: 帝室御賞典、連合二哩、濠抽混合と当時の三大競走を制覇した伝説的名馬。
第七ガロン: ガロン産駒の中でも特に優秀な種牡馬。数々の帝室御賞典優勝馬を輩出しました。
エミグラント: 北海道で活躍した種牡馬。
アラタマ(ヒラデエナモールド): 京都連合二哩優勝馬。種牡馬としても成功しました。
* アスパイヤリング: 帝室御賞典優勝馬。小岩井農場で種牡馬として活躍しました。

ガロンは、競走馬としての輝かしい成績こそ残せませんでしたが、その類まれな繁殖能力で、日本競馬史に永遠の足跡を残した、まさに伝説的な種牡馬と言えるでしょう。

もう一度検索