キジル石窟
キジル石窟は、中国新疆ウイグル自治区アクス地区バイ県に位置する仏教石窟寺院の遺跡群です。地元では「赤い」を意味するウイグル語の「キジル」にちなんで名付けられ、その名の通り、赤い岩壁に多くの石窟が掘られています。この石窟群は、中国では最大の規模を誇り、古代シルクロードの重要な地点として、その歴史的価値が認められ、2014年にはユネスコ世界遺産に登録されました。
キジル石窟は、クチャ市の西方約70キロメートル、バイ県城の東方約50キロメートルに位置し、ムザルト川の北岸にあるミンウイ・タグ（千仏洞山）の岩壁に沿って掘られています。周囲にはポプラや柏楊などの樹木が生い茂り、畑や果樹園も広がっています。一方、南岸には赤いチャール・タグ（荒涼の山）が連なり、対照的な風景を織りなしています。
石窟が掘られた岩山は、高さ50～60メートルにもなり、その中腹から下方にかけて多くの石窟が点在しています。岩壁には、小さな渓谷が崖面と直角に走っており、その奥にも石窟が掘られています。建築様式や壁画にはインドやペルシアの影響が見られ、中にはヨーロッパ風の要素を感じさせるものもあります。
キジル石窟は、3世紀中頃から8世紀にかけて、この地域を支配していた古代仏教王国、亀茲（きゅうし）国によって造られました。亀茲国は早くから仏教を信仰しており、4世紀中頃の記録には「亀茲の僧衆一万余人」「寺が甚だ多く、修飾至麗」と記されています。3世紀末から4世紀初めには、多くの亀茲出身の僧侶が中国で仏典翻訳に従事しており、中でも鳩摩羅什（クマーラジーヴァ）は、4世紀後半から5世紀前半にかけて活躍した高僧として知られています。
20世紀初頭、中央アジア探検が盛んになり、ドイツのグリュンヴェーデルやル・コック、日本の大谷探検隊など、各国の研究者がキジル石窟を訪れて調査を行いました。特にル・コックは、石窟の壁画を大量に切り取ってベルリンに持ち帰ったため、貴重な壁画が失われるという悲劇も起きました。現在、石窟は無残な状態になっていますが、1953年以降、中国政府によって調査と修復作業が進められています。これまでに236の石窟が確認され、番号が付けられています。
キジル石窟には、ドイツ隊によって発見された際に付けられた独特の名称を持つ石窟がいくつかあります。
暖炉洞（第4窟）
フレスコ床洞（第7窟）
十六剣士洞（第8窟）
菩薩天井洞（第17窟）
日神思惟洞（第34窟）
音楽洞（第38窟）
着兜者洞（第5窟）
迦葉洞（第63窟）
紅穹窿洞（第67窟）
孔雀洞（第76窟）
像洞（第77窟）
地獄釜洞（第80窟）
雌猿洞（第92窟）
海馬洞（第118窟）
悪魔洞（第198窟）
小峡谷高所洞（第182窟）
マヤ洞（第224窟）
石窟は、その構造によって以下の5種類に分類されます。
1. ヴォールト天井の長方形窟で、奥壁に仏龕があり、その後ろに隧道の回廊がある（例：アジアタシャートル洞）。
2. ラテルネンデッケ天井の方形窟（例：画家洞）。
3. ドーム天井の方形窟（例：紅穹窿洞）。
4. 人字披頂の長方形窟。
5. 藻井（そうせい）天井窟。
キジル石窟は、その創建時期によっても、大きく4つの時期に分けられます。
三国時代（220年 - 280年）： 第17窟、第47、48、69窟など。
西晋時代（265年 - 317年）： 第7、13、14、38、85、106、114、173、175、178、180、195窟など。
南北朝時代から隋代（420年 - 618年）： 第8、27、32、34、58、64、80、92、97、98、99、100、101、104、110、126、163、171、179、185、192、193、196、198、199、205、206、207、219、224窟など。
晩唐時代（763年 - 907年）： 第33、43、67、76、81、107、116、117、118、123、129、132、135、160、161、165、166、167、176、184、186、188、212、227、229窟など。
キジル石窟は、古代シルクロードにおける仏教文化の伝播を示す貴重な遺跡であり、その壁画は、当時の生活や文化、宗教観を今に伝える重要な資料です。現在、石窟の保存・修復活動が行われており、その価値は広く認識されつつあります。キジル石窟は、歴史と文化を学ぶ上で、非常に重要な場所と言えるでしょう。
樋口隆康『シルクロード考古学第3巻 敦煌から日本へ』（1986年、法蔵館）
ル・コック（訳：木下龍也）『中央アジア発掘記』（1960年、昭森社）
アアイ石窟
アスターナ古墓群
雲崗石窟
カラ・ホージャ
カラ・ホト
キジルガハ石窟
クムトラ石窟
交河故城
シムシム石窟
スバシ故城
トグラク・アキン遺跡
ニヤ遺跡
莫高窟
ベゼクリク千仏洞
ミーラン遺跡
* 龍門石窟
キジル石窟の地理と外観
キジル石窟は、クチャ市の西方約70キロメートル、バイ県城の東方約50キロメートルに位置し、ムザルト川の北岸にあるミンウイ・タグ（千仏洞山）の岩壁に沿って掘られています。周囲にはポプラや柏楊などの樹木が生い茂り、畑や果樹園も広がっています。一方、南岸には赤いチャール・タグ（荒涼の山）が連なり、対照的な風景を織りなしています。
石窟が掘られた岩山は、高さ50～60メートルにもなり、その中腹から下方にかけて多くの石窟が点在しています。岩壁には、小さな渓谷が崖面と直角に走っており、その奥にも石窟が掘られています。建築様式や壁画にはインドやペルシアの影響が見られ、中にはヨーロッパ風の要素を感じさせるものもあります。
キジル石窟の歴史
キジル石窟は、3世紀中頃から8世紀にかけて、この地域を支配していた古代仏教王国、亀茲（きゅうし）国によって造られました。亀茲国は早くから仏教を信仰しており、4世紀中頃の記録には「亀茲の僧衆一万余人」「寺が甚だ多く、修飾至麗」と記されています。3世紀末から4世紀初めには、多くの亀茲出身の僧侶が中国で仏典翻訳に従事しており、中でも鳩摩羅什（クマーラジーヴァ）は、4世紀後半から5世紀前半にかけて活躍した高僧として知られています。
キジル石窟の研究史
20世紀初頭、中央アジア探検が盛んになり、ドイツのグリュンヴェーデルやル・コック、日本の大谷探検隊など、各国の研究者がキジル石窟を訪れて調査を行いました。特にル・コックは、石窟の壁画を大量に切り取ってベルリンに持ち帰ったため、貴重な壁画が失われるという悲劇も起きました。現在、石窟は無残な状態になっていますが、1953年以降、中国政府によって調査と修復作業が進められています。これまでに236の石窟が確認され、番号が付けられています。
各石窟の名称と構造
キジル石窟には、ドイツ隊によって発見された際に付けられた独特の名称を持つ石窟がいくつかあります。
暖炉洞（第4窟）
フレスコ床洞（第7窟）
十六剣士洞（第8窟）
菩薩天井洞（第17窟）
日神思惟洞（第34窟）
音楽洞（第38窟）
着兜者洞（第5窟）
迦葉洞（第63窟）
紅穹窿洞（第67窟）
孔雀洞（第76窟）
像洞（第77窟）
地獄釜洞（第80窟）
雌猿洞（第92窟）
海馬洞（第118窟）
悪魔洞（第198窟）
小峡谷高所洞（第182窟）
マヤ洞（第224窟）
石窟は、その構造によって以下の5種類に分類されます。
1. ヴォールト天井の長方形窟で、奥壁に仏龕があり、その後ろに隧道の回廊がある（例：アジアタシャートル洞）。
2. ラテルネンデッケ天井の方形窟（例：画家洞）。
3. ドーム天井の方形窟（例：紅穹窿洞）。
4. 人字披頂の長方形窟。
5. 藻井（そうせい）天井窟。
キジル石窟は、その創建時期によっても、大きく4つの時期に分けられます。
三国時代（220年 - 280年）： 第17窟、第47、48、69窟など。
西晋時代（265年 - 317年）： 第7、13、14、38、85、106、114、173、175、178、180、195窟など。
南北朝時代から隋代（420年 - 618年）： 第8、27、32、34、58、64、80、92、97、98、99、100、101、104、110、126、163、171、179、185、192、193、196、198、199、205、206、207、219、224窟など。
晩唐時代（763年 - 907年）： 第33、43、67、76、81、107、116、117、118、123、129、132、135、160、161、165、166、167、176、184、186、188、212、227、229窟など。
キジル石窟の意義
キジル石窟は、古代シルクロードにおける仏教文化の伝播を示す貴重な遺跡であり、その壁画は、当時の生活や文化、宗教観を今に伝える重要な資料です。現在、石窟の保存・修復活動が行われており、その価値は広く認識されつつあります。キジル石窟は、歴史と文化を学ぶ上で、非常に重要な場所と言えるでしょう。
参考資料
樋口隆康『シルクロード考古学第3巻 敦煌から日本へ』（1986年、法蔵館）
ル・コック（訳：木下龍也）『中央アジア発掘記』（1960年、昭森社）
関連項目
アアイ石窟
アスターナ古墓群
雲崗石窟
カラ・ホージャ
カラ・ホト
キジルガハ石窟
クムトラ石窟
交河故城
シムシム石窟
スバシ故城
トグラク・アキン遺跡
ニヤ遺跡
莫高窟
ベゼクリク千仏洞
ミーラン遺跡
* 龍門石窟
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