キャデラック・CTS
キャデラックCTSは、アメリカの自動車メーカー、ゼネラルモーターズ（GM）が製造し、高級車ブランドであるキャデラックから販売されていた乗用車です。
かつてキャデラックは主に北米市場に注力しており、その車体サイズからヨーロッパやアジアなどの地域では「大きすぎる」と見なされ、販売実績が伸び悩んでいました。また、CTSが登場した頃のキャデラックオーナーは高齢層が中心であり、「リタイヤした人が乗る車」というイメージが強かったため、ブランドイメージを刷新し、より若い世代の顧客を獲得することが喫緊の課題でした。これらの状況を打開すべく開発されたのがCTSです。これまでのキャデラックよりも一回りコンパクトで、よりスポーティな性格を持つこのモデルは、ドイツのニュルブルクリンクでの徹底的な走行テストを経て、メルセデス・ベンツやBMWといった欧州の主要なセダンを明確なライバルとして位置づけていました。デザイン面では、キャデラック独自の「アート＆サイエンス」と呼ばれるデザイン哲学を初めて具現化したモデルでもあります。
2002年に発表され、2003年モデルとして登場した初代CTSは、シグマ・アーキテクチャと称される新設計のFR（後輪駆動）プラットフォームを採用しました。オイルショック以降、長らくFF（前輪駆動）モデルに注力してきたキャデラックにとって、このFR化は大きな転換点となりました。旧モデルであるカテラの後継にあたり、北米最優秀自動車賞にもノミネートされるなど、一定の評価を得ました。生産は主にアメリカのミシガン州ランシングで行われましたが、一時、中国でもノックダウン生産が行われました。
当初搭載されたエンジンは3.2リッターV型6気筒でしたが、後に可変バルブ機構を備えた3.6リッターV型6気筒が追加され、出力とトルクが向上しました。廉価モデルとして2.8リッターV型6気筒もラインナップに加わり、ヨーロッパ市場では従来の2.6リッターに代わって導入されました。さらに、シボレー・コルベットと共通のV型8気筒エンジンを搭載した高性能版「CTS-V」も登場しました。
トランスミッションは自社製の5速オートマチックと、ゲトラグ製の5速マニュアルが用意されましたが、マニュアルは後にアイシン製の6速MTに変更されました。日本市場へは5速ATモデルのみが導入され、エンジンは初期の2.6リッター/3.2リッターから、後に2.8リッター/3.6リッターV6となりました。一部の特別仕様車を除き、左右どちらのハンドルも選択可能でした。特に日本仕様の右ハンドル車は、一般的な輸入車とは異なり、ウインカーレバーが日本の国産車と同じ右側に配置されていました。しかし、日本国内での販売はあまり伸び悩みました。
また、初代CTSは映画『マトリックス リローデッド』に登場し、派手なカーチェイスシーンで活躍したことでも知られています。
2008年モデルとしてデビューした2代目は、2003年のコンセプトカー「キャデラック・シックスティーン」のデザイン要素を内外装に取り入れ、より洗練されたスタイルとなりました。ニュルブルクリンクでの開発テストも継続され、走行性能のさらなる向上を目指しました。
エンジンは、可変バルブ機構付きの3.6リッターV6がベースとなり、高出力な直噴式の新型3.6リッターV6エンジンも加わりました。トランスミッションは基本的に6速オートマチックが標準装備となりましたが、6速マニュアルも選択可能でした。また、オートマチック車にはオプションで四輪駆動（AWD）も設定されました。サスペンションやブレーキ、ステアリング系は、先に登場していた高性能モデルCTS-Vで培われた技術がフィードバックされ、標準モデルでもその恩恵を受けました。
標準装備は充実しており、オプションでは先進的なナビゲーションシステムや高品質なオーディオ、快適装備などが用意されました。この世代では、セダンに加え、クーペやステーションワゴン（スポーツワゴン）といったボディバリエーションの展開も図られました。高性能版の2代目CTS-Vは、大幅にパワーアップしたスーパーチャージャー付き6.2リッターV8エンジンを搭載し、セダン、クーペ、スポーツワゴンの各ボディタイプが設定されました。
日本市場には2008年初頭に導入されましたが、当初は左ハンドル仕様のみでした。しかし、翌2009年モデルからは右ハンドル仕様が復活し、GM車として初めて電気式パーキングブレーキが採用されるなどの改良が行われました。2010年にはスポーツワゴンの導入に合わせてマイナーチェンジが実施され、エンジンラインナップやグレード構成が見直されました。
2013年のニューヨークモーターショーで初公開された3代目CTSは、弟分として位置づけられるATSが登場したことに伴い、サイズが一回り拡大され、欧州のEセグメントに相当する車格となりました。この世代のバリエーションはセダン一本に絞られ、パワートレインにおいてはV8エンジンが廃止される一方、CTSとして初めて直列4気筒エンジンが採用されました。この2.0リッター直噴ターボエンジンは、軽量化、高出力化、燃費向上を同時に狙ったユニットでした。
車体の軽量化と剛性向上も徹底され、キャデラック初となるアルミニウムドアの採用や、構造用接着剤、アルミニウム、マグネシウムといった軽量素材を積極的に使用しました。これにより、先代比で約100Kgの軽量化と車体剛性の40％向上を実現しました。前後重量配分も理想的な50:50に近づけられています。また、7代目コルベットにも採用された高度な可変ダンピングシステム「マグネティック・ライドコントロール」を導入し、精密なボディコントロール性能を獲得しました。
インテリアには、大型タッチスクリーンを備えたインフォテイメントシステム「CUE」や、上質な素材を用いたキャビンが特徴でした。日本市場には2014年から導入され、当初は直列4気筒エンジンに6速AT、左ハンドルという組み合わせのみでしたが、後にグレード構成が見直されました。高性能モデルであるCTS-Vも引き続き設定されました。
2019年をもって生産を終了し、後継モデルはCT5や一部のCT6に引き継がれました。
「CTS」という名称は、「Catera Touring Sedan（カテラ・ツーリング・セダン）」の略とされています。
開発背景とコンセプト
かつてキャデラックは主に北米市場に注力しており、その車体サイズからヨーロッパやアジアなどの地域では「大きすぎる」と見なされ、販売実績が伸び悩んでいました。また、CTSが登場した頃のキャデラックオーナーは高齢層が中心であり、「リタイヤした人が乗る車」というイメージが強かったため、ブランドイメージを刷新し、より若い世代の顧客を獲得することが喫緊の課題でした。これらの状況を打開すべく開発されたのがCTSです。これまでのキャデラックよりも一回りコンパクトで、よりスポーティな性格を持つこのモデルは、ドイツのニュルブルクリンクでの徹底的な走行テストを経て、メルセデス・ベンツやBMWといった欧州の主要なセダンを明確なライバルとして位置づけていました。デザイン面では、キャデラック独自の「アート＆サイエンス」と呼ばれるデザイン哲学を初めて具現化したモデルでもあります。
初代 (2003-2008年)
2002年に発表され、2003年モデルとして登場した初代CTSは、シグマ・アーキテクチャと称される新設計のFR（後輪駆動）プラットフォームを採用しました。オイルショック以降、長らくFF（前輪駆動）モデルに注力してきたキャデラックにとって、このFR化は大きな転換点となりました。旧モデルであるカテラの後継にあたり、北米最優秀自動車賞にもノミネートされるなど、一定の評価を得ました。生産は主にアメリカのミシガン州ランシングで行われましたが、一時、中国でもノックダウン生産が行われました。
当初搭載されたエンジンは3.2リッターV型6気筒でしたが、後に可変バルブ機構を備えた3.6リッターV型6気筒が追加され、出力とトルクが向上しました。廉価モデルとして2.8リッターV型6気筒もラインナップに加わり、ヨーロッパ市場では従来の2.6リッターに代わって導入されました。さらに、シボレー・コルベットと共通のV型8気筒エンジンを搭載した高性能版「CTS-V」も登場しました。
トランスミッションは自社製の5速オートマチックと、ゲトラグ製の5速マニュアルが用意されましたが、マニュアルは後にアイシン製の6速MTに変更されました。日本市場へは5速ATモデルのみが導入され、エンジンは初期の2.6リッター/3.2リッターから、後に2.8リッター/3.6リッターV6となりました。一部の特別仕様車を除き、左右どちらのハンドルも選択可能でした。特に日本仕様の右ハンドル車は、一般的な輸入車とは異なり、ウインカーレバーが日本の国産車と同じ右側に配置されていました。しかし、日本国内での販売はあまり伸び悩みました。
また、初代CTSは映画『マトリックス リローデッド』に登場し、派手なカーチェイスシーンで活躍したことでも知られています。
2代目 (2008-2013年)
2008年モデルとしてデビューした2代目は、2003年のコンセプトカー「キャデラック・シックスティーン」のデザイン要素を内外装に取り入れ、より洗練されたスタイルとなりました。ニュルブルクリンクでの開発テストも継続され、走行性能のさらなる向上を目指しました。
エンジンは、可変バルブ機構付きの3.6リッターV6がベースとなり、高出力な直噴式の新型3.6リッターV6エンジンも加わりました。トランスミッションは基本的に6速オートマチックが標準装備となりましたが、6速マニュアルも選択可能でした。また、オートマチック車にはオプションで四輪駆動（AWD）も設定されました。サスペンションやブレーキ、ステアリング系は、先に登場していた高性能モデルCTS-Vで培われた技術がフィードバックされ、標準モデルでもその恩恵を受けました。
標準装備は充実しており、オプションでは先進的なナビゲーションシステムや高品質なオーディオ、快適装備などが用意されました。この世代では、セダンに加え、クーペやステーションワゴン（スポーツワゴン）といったボディバリエーションの展開も図られました。高性能版の2代目CTS-Vは、大幅にパワーアップしたスーパーチャージャー付き6.2リッターV8エンジンを搭載し、セダン、クーペ、スポーツワゴンの各ボディタイプが設定されました。
日本市場には2008年初頭に導入されましたが、当初は左ハンドル仕様のみでした。しかし、翌2009年モデルからは右ハンドル仕様が復活し、GM車として初めて電気式パーキングブレーキが採用されるなどの改良が行われました。2010年にはスポーツワゴンの導入に合わせてマイナーチェンジが実施され、エンジンラインナップやグレード構成が見直されました。
3代目 (2013-2019年)
2013年のニューヨークモーターショーで初公開された3代目CTSは、弟分として位置づけられるATSが登場したことに伴い、サイズが一回り拡大され、欧州のEセグメントに相当する車格となりました。この世代のバリエーションはセダン一本に絞られ、パワートレインにおいてはV8エンジンが廃止される一方、CTSとして初めて直列4気筒エンジンが採用されました。この2.0リッター直噴ターボエンジンは、軽量化、高出力化、燃費向上を同時に狙ったユニットでした。
車体の軽量化と剛性向上も徹底され、キャデラック初となるアルミニウムドアの採用や、構造用接着剤、アルミニウム、マグネシウムといった軽量素材を積極的に使用しました。これにより、先代比で約100Kgの軽量化と車体剛性の40％向上を実現しました。前後重量配分も理想的な50:50に近づけられています。また、7代目コルベットにも採用された高度な可変ダンピングシステム「マグネティック・ライドコントロール」を導入し、精密なボディコントロール性能を獲得しました。
インテリアには、大型タッチスクリーンを備えたインフォテイメントシステム「CUE」や、上質な素材を用いたキャビンが特徴でした。日本市場には2014年から導入され、当初は直列4気筒エンジンに6速AT、左ハンドルという組み合わせのみでしたが、後にグレード構成が見直されました。高性能モデルであるCTS-Vも引き続き設定されました。
2019年をもって生産を終了し、後継モデルはCT5や一部のCT6に引き継がれました。
車名
「CTS」という名称は、「Catera Touring Sedan（カテラ・ツーリング・セダン）」の略とされています。
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