キャンディーズ 1 1/2〜やさしい悪魔〜

『キャンディーズ1+1⁄2〜やさしい悪魔〜』

『キャンディーズ1+1⁄2〜やさしい悪魔〜』は、1977年4月21日にリリースされた、アイドルグループ・キャンディーズにとって通算8枚目のオリジナルアルバムです。当時のLP帯には「拓郎、ビートルズからラン・スー・ミキまで 話題の特別企画」と記されており、その内容の多様性がうかがえます。

このアルバムの核となるのは、先行してリリースされたヒットシングル「やさしい悪魔」（1977年3月1日発売）と「哀愁のシンフォニー」（1976年11月21日発売）です。これらの代表曲に加え、アルバムには洋楽の著名な楽曲のカバー、そしてメンバーである伊藤蘭、田中好子、藤村美樹の三人が初めて作詞・作曲に挑戦した楽曲が収録されています。

アルバムのタイトルに含まれる「1+1⁄2」（1枚半）は、LP盤のユニークな構成に由来しています。LPは物理的には2枚組として発表されましたが、Side A、B、Cの3面に楽曲が収録されているのに対し、Side Dには一切楽曲が収録されていませんでした。この無音のD面には、メンバー三人の直筆サインが刻印されるという趣向が凝らされており、これが文字通りの「1枚半」というコンセプトを表現しています。

収録曲は非常にバラエティ豊かです。

Side A: 「やさしい悪魔」（吉田拓郎作曲、喜多條忠作詞）や「哀愁のシンフォニー」（三木たかし作曲、なかにし礼作詞）といったシングル曲を中心に、国内作家によるポップスが並びます。シングル「やさしい悪魔」のB面曲「あなたのイエスタデイ」も収録されています。

Side B: ザ・ビートルズの「HERE, THERE AND EVERYWHERE」、ニール・セダカの「BREAKING UP IS HARD TO DO」、ドリー・パートンの「JOLENE」、ジャニス・イアンの「LOVE IS BLIND」、ジョン・デンバーの「TAKE ME HOME, COUNTRY ROADS」、ジョーン・サマーズの「ONE BOY」といった、当時の人気洋楽がキャンディーズによってカバーされています。幅広いジャンルから選曲されており、彼女たちの歌唱力の高さを披露する場となりました。

Side C: ここには、メンバー自身が作詞・作曲を手がけた意欲的な楽曲が6曲収録されています。伊藤蘭は「恋がひとつ」「今日から私は」、田中好子は「LOVE ME LOVE ME」「ミッドナイト・ハイウェイ」、藤村美樹は「素敵な魔法使い」「さよならの朝」を提供しており、それまでのキャンディーズにはなかった内省的な一面や、等身大の感情を表現した作品が多く含まれています。

Side D: 前述の通り、楽曲は収録されていません。

このアルバムはLPとして発売された後、CD-DA化された際も基本的にはLPの構成を踏襲し、2枚組としてリリースされました。さらに、2008年9月3日に発売されたCD-BOX『キャンディーズ・タイムカプセル』に収録された紙ジャケット盤では、多数のボーナストラックが追加収録され、ファンにとって貴重な音源が初めて多数CD化されました。ボーナストラックには、「哀愁のシンフォニー」のB面曲「別れても愛して」、別ミックスバージョンの「やさしい悪魔」（通称「木魚バージョン」）、複数の種類のオリジナルカラオケ、テレビ番組『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』のテーマ、プロモーション用バージョンなどが含まれており、このアルバムの多角的な魅力をさらに深く掘り下げることができる内容となっています。

『キャンディーズ1+1⁄2〜やさしい悪魔〜』は、ヒット曲と新たな試みが融合した、キャンディーズのキャリアにおける重要な一枚と言えるでしょう。

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