キュジコス

キュジコス：ミュシア地方の古代都市

キュジコス（キジクス）は、古代においてアナトリア半島のミュシア地方に位置し、現在のトルコ、バルケスィル県のマルマラ海に突き出した半島に存在した古代都市です。かつては島であったこの地は、時を経て徐々に大陸と陸続きになったとされています。中世には「Aydıncıḳ」と呼ばれていました。

歴史

伝説によれば、テッサリアから来たペラスゴイ人が都市を建設したとされ、紀元前756年頃にはミレトスからの移民を多く受け入れました。ペロポネソス戦争後、アテナイとミレトスが衰退すると、キュジコスは重要性を増していきます。紀元前410年には、アルキビアデスがラケダエモニア軍を破りました。

地理的な利点から、キュジコスは商業拠点として発展し、キュジコス製のスタテル金貨は古代世界で広く流通しました。しかし、後にマケドニア王国の通貨に取って代わられます。キュジコスの特徴的な硬貨であるキュジケヌスは、28ドラクマ相当の価値を持っていました。

ペロポネソス戦争中、キュジコスはアテナイとスパルタの間で支配が変動しました。紀元前410年のキュジコスの海戦では、アテナイ艦隊がスパルタ艦隊を打ち破ります。紀元前387年には、アンタルキダスの和約により、他の小アジアのギリシア都市と同様にアケメネス朝ペルシアの支配下に入りましたが、紀元前334年にアレクサンドロス3世によってペルシアから奪還されました。

ヘレニズム時代には、ペルガモンのアッタロス朝と密接な関係を築き、アッタロス朝の滅亡後はローマの直接的な支配下に入りました。紀元前74年、ポントス王ミトリダテス6世は30万の軍勢でキュジコスを包囲しましたが、ローマのルクッルスの活躍によって包囲は解かれ、キュジコスは特権と領土を得て自治を認められ、北ミュシアを代表する都市となりました。

ローマ皇帝ティベリウスの時代に、キュジコスは自治権を失いローマ帝国に組み込まれましたが、依然としてミュシアの中心地として繁栄し、古代世界有数の大都市となりました。

しかし、675年にはアラブ人に一時的に占領され、443年以降は度重なる地震によって徐々に衰退しました。1063年の大地震が決定打となり、11世紀には都市の放棄が始まり、13世紀に十字軍がこの地を占領した際には、住民の多くがエルデクに移住しました。オスマン帝国時代には、キュジコスはブルサ州のエルデクの一部となりました。

遺跡

現在、キュジコスの跡地には居住者はいません。4世紀に築かれた城壁、ハドリアヌスの神殿の基礎部分、ローマ水道、ローマ劇場の遺跡などが残っています。紀元前3世紀に建設されたアンフィテアトルムは、直径約150メートルで、当時世界最大級の競技場でした。1444年まで31本の巨大な円柱が残っていましたが、建材として運び去られました。

ハドリアヌス帝に捧げられた神殿の巨大な基礎が現存しており、円柱の高さは21.35メートルで、古代の円柱としては最も高い部類に入ります。東ローマ帝国皇帝ユスティニアヌス1世は、キュジコスの遺構をアヤソフィア建設のための採石場として利用しました。

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