アッタロス朝

アッタロス朝は、紀元前282年から紀元前133年まで、アナトリア西部に存在したヘレニズム国家です。ペルガモンを首都とし、その繁栄から「ペルガモン王国」とも呼ばれます。この王朝は、パフラゴニア出身のフィレタイロスがリュシマコスからペルガモンの管理を任されたことに始まります。

歴史

フィレタイロスは、リュシマコスがセレウコス1世に敗れた後、セレウコス朝の支配下に入りました。その後、セレウコス朝との同盟を深めつつ、周辺国家や都市との関係を強化しました。紀元前263年に甥のエウメネス1世が王位を継承すると、プトレマイオス朝との友好関係を築き、セレウコス朝からの独立を目指します。サルディス近郊での戦いでセレウコス朝を破り、独立を達成しました。

エウメネス1世の跡を継いだアッタロス1世は、ガラティア人への進貢を停止し、戦争でこれを打ち破りました。この勝利により王の称号を得て、周辺都市からは救済者として迎えられました。アッタロス1世はその後も、セレウコス朝との戦いを繰り広げ、小アジアでの領土を拡大しました。また、アイトリア同盟やデルポイへの寄付を通じて、西方との友好関係も築きました。

第二次マケドニア戦争では、ローマ側に加わり、ローマとの友好関係を確立しました。アッタロス1世の死後、エウメネス2世が王位を継承し、ローマとの関係を継続しました。エウメネス2世は、ローマ・シリア戦争でローマ側として参戦し、セレウコス朝の敗北に大きく貢献しました。その後、アパメアの和約によって小アジアの大部分の領土を獲得し、ガラティア人への勝利によって救済者の称号を得ました。しかし、マケドニアとの戦争を境にローマとの関係が悪化しました。エウメネス2世は、芸術の庇護者としても知られ、図書館やゼウスの祭壇を設立しました。

アッタロス2世の時代には、ローマとの関係改善が図られました。アッタロス3世は、紀元前133年に王国をローマに委ねるという遺書を残して亡くなりました。アッタロス3世の死後、アリストニコスが反乱を起こしますが、ローマ軍によって鎮圧され、アッタロス朝の領土はローマに編入されました。

経済

アッタロス朝は、穀物、鉱物、毛織物などの生産が盛んで、経済的に豊かな国家でした。主要な収入源は、従属都市からの税収、関税、戦争時の臨時税でした。農村部の土地所有者には土地税が課され、支払えない場合は土地が没収されました。軍事植民地では、税を払うことを条件に兵士に土地が与えられました。王は神殿の財産を利用し、王室工場では織物、なめし革、羊皮紙などが生産されました。

文化

エウメネス2世の時代には、文化が最盛期を迎えました。ペルガモンは、神殿、劇場などの建造物が立ち並ぶ文化都市として栄え、プトレマイオス朝のアレクサンドリア図書館に次ぐ規模の図書館がありました。

王国組織

王国は、小アジア西岸のギリシア都市、軍事植民地、神殿領、王領、半独立の部族が住む地域で構成されていました。ギリシア都市は、自由都市と従属都市に分かれ、自由都市には自治が認められていました。植民地は、商業的、軍事的な目的で建設され、農村部の村落は、神官の財産として巡礼者によって発展しました。王領は、オイコノモスと呼ばれる行政官によって管理され、バシリコイ・ラオイと呼ばれる小作人によって耕作されました。

都市行政

ペルガモンの住民は、市民、外国人居住者、兵士、解放奴隷、奴隷から構成されていました。行政組織は、民会と評議会からなり、評議会は民会で審議されるものの立案や重要でないことの決定を行いました。五人のストラテーゴイは、大きな権力を持ち、軍事的な役割に加え、国内の職務も担いました。ストラテーゴイは、初期には民衆によって選ばれていましたが、後に王によって指名されるようになりました。その他、公共施設の管理をする役人、法案を編集する役人、法律の施行を行う役人、金銭を管理する役人、王の不在時の代理人などがいました。また、王は重要な決定のために諮問機関を利用していました。

年表

紀元前282年: フィレタイロスがセレウコス朝から支配権を得る
紀元前276年: ガラティア人の侵入を撃退
紀元前262年: エウメネス1世、セレウコス朝から独立
紀元前208年: 第一次マケドニア戦争、共和政ローマと同盟関係を結ぶ
紀元前200年: 第二次マケドニア戦争
紀元前195年: ナビス戦争
紀元前192年: ローマ・シリア戦争
紀元前183年: セレウコス朝の小アジア領を獲得
紀元前171年: 第三次マケドニア戦争
紀元前133年: 領土をローマに寄贈、アシア属州に編入される

歴代君主

フィレタイロス（紀元前282年 - 紀元前263年）
エウメネス1世（紀元前263年 - 紀元前241年）
アッタロス1世（紀元前241年 - 紀元前197年）
エウメネス2世（紀元前197年 - 紀元前159年）
アッタロス2世（紀元前159年 - 紀元前138年）
アッタロス3世（紀元前138年 - 紀元前133年）
* エウメネス3世（紀元前133年 - 紀元前129年） - 僭王

アッタロス朝は、その繁栄と文化的な貢献によって、歴史に名を残すヘレニズム国家です。その盛衰は、当時の国際関係と都市構造を理解する上で重要な事例と言えるでしょう。

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