スタテル

スタテル（古代ギリシア語: στατήρ, stater）は、古代ギリシアおよびその周辺地域で使用されていた硬貨です。その名称は古代ギリシア語で「重さ」を意味する言葉に由来しています。

起源と変遷

スタテルの起源は、紀元前8世紀に遡ります。当初は、エウボイア島でフェニキアのシェケルを重量単位として使用していたことに端を発します。このシェケル（約8.33グラム）は、1ミナの50分の1の重さに相当します。スタテルは、西ヨーロッパでは、ギリシア北部で傭兵として働いていたケルト人を通じて伝わったため、マケドニア起源であるという誤解も生じました。

スタテルは、紀元前8世紀から紀元50年頃まで、広い範囲で流通していました。アテナイで最初に鋳造されたスタテル貨は、1テトラドラクマ（4ドラクマ）に相当しましたが、場所や時代によっては1ディドラクマ（2ドラクマ）硬貨をスタテルと呼ぶこともありました。コリントス、地中海のアイギナ島やクレタ島のキドニアなどでもスタテル貨が鋳造されました。例えば、キドニアで造られた銀貨には、ミノア文明の神ブリトマルティスが描かれています。

金貨の存在

スタテルには金貨も存在しましたが、その発行量はごく一部に限られていました。一般的なスタテル金貨の価値は、20ドラクマから28ドラクマ程度でした。アテナイでは、スタテル金貨は20ドラクマと定められていました。これは、スタテル金貨の重さが約8.5グラムであり、1ドラクマの約2倍であったにもかかわらず、金は銀の約10倍の価値があったためです。

有名なスタテル金貨

特に有名なスタテル金貨としては、キュジコスで発行された「Kyzikenos」と呼ばれる28ドラクマ相当のものや、ピリッポス2世のスタテル貨を模倣してガリアで発行されたものがあります。ガリアで発行されたスタテル貨は、マケドニア王国で傭兵として働いたガリア人が故郷に持ち帰ったものが元になっています。

まとめ

スタテルは、古代ギリシア社会において、経済活動を支える重要な役割を果たした硬貨でした。その起源から変遷、金貨の存在、そして各地域で鋳造された多様なスタテル貨は、当時の社会や文化を理解する上で貴重な資料となっています。

参考

* The British Museum Electrum 1/6 stater (650-600 BCE) [外部リンク参照]

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