キレスクス

キレスクス：ジュラ紀シベリアの小型獣脚類

キレスクス ( Kileskus) は、中生代ジュラ紀中期（バトニアン期、約1億6830万年前～約1億6610万年前）に、現在のロシア連邦クラスノヤルスク地方に位置するイタット累層に生息していた恐竜です。比較的小型の獣脚類で、ティラノサウルス上科に分類されます。属名は、ハカス語で「トカゲ」を意味する「килескí（kileskí）」とラテン語接尾辞「-us」を組み合わせたものです。

化石と形態

キレスクスの化石は、不完全な頭骨（上顎骨、前上顎骨、上角状骨の一部）や四肢の骨などから構成されています。頭骨は、プロケラトサウルスに類似した特徴を示しています。上顎骨と前上顎骨には、鋸歯のある歯が確認されており、断面はティラノサウルス上科に共通するD字型です。外鼻孔は頭骨長の20％以上と長く伸びており、前眼窩窓の下にある前眼窩窩は上顎骨よりも上下方向に長いといった特徴も持ちます。これらの特徴から、キレスクスはプロケラトサウルス科に分類されると考えられています。

2010年には、新たな標本（頚椎、尾椎、血道弓骨、腓骨）が発見され、キレスクス独自の形態学的特徴が明らかになりました。例えば、神経腔と関節前突起の間の前方に深い溝があること、中央の頚椎の神経棘の根元に窪みがあること、中央の尾椎の腹側に溝があることなどが挙げられます。これらの特徴に加え、腓骨の中央表面にある楕円形の深い孔は、ティラノサウルス上科に共通する特徴であるとされています。脛骨の血管構造からは、大型のティラノサウルス科よりも成長速度が遅かった可能性が示唆されています。

古環境と食性

キレスクスが生息していたイタット累層からは、様々な脊椎動物の化石が発見されています。軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、ワニ形類、翼竜、様々な種類の恐竜（竜脚類、鳥盤類など）、そして哺乳類の祖先など多様な生物が生息していました。植物としては、トクサ類、シダ類、イチョウ類、球果植物などが確認されています。

キレスクスを含むプロケラトサウルス類は、主に小動物を捕食していたと考えられています。そのため、イタット累層から産出する小型のキノドン類（シネレウテルスなど）がキレスクスの餌になっていた可能性があります。しかし、キレスクスの推定全長は、代表的なプロケラトサウルス類であるグアンロンよりも大きいため、獲物の選択に変化があった可能性も考えられます。

分類と系統

キレスクスは、2010年と2013年の系統解析において、基盤的なティラノサウルス上科に分類されました。特にプロケラトサウルス科の中でも基盤的な位置付けにあることから、プロケラトサウルス科がアジア地域で誕生した可能性が示唆されています。

研究者

キレスクスの研究には、アレクサンドル・O・アヴェリアノフ、セルゲイ・アナトリエヴィッチ・クラスノルツキー、ステパン・V・イヴァンツォフ（ロシア）、オリバー・ラウフット（ドイツ）、マーク・A・ローウェン（アメリカ）など多くの研究者が関わっています。彼らの研究により、キレスクスの分類、形態、系統、古環境に関する知見が深まっています。

参考文献

Averianov et al., 2010
Averianov et al., 2019
Rauhut et al., 2010
Loewen et al., 2013
Wick et al., 2015
Yun, 2016

これらの論文は、キレスクスに関する詳細な情報が記載されています。さらに、書籍やウェブサイトの情報も参照することで、キレスクスについての理解を深めることができます。

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