キンカメムシ

キンカメムシ（金椿象・金亀虫）

キンカメムシとは、カメムシ目カメムシ亜目に属するキンカメムシ科の昆虫を総称して指します。この仲間は、比較的大型のカメムシ類に含まれ、主に熱帯地域を中心に分布していますが、一部の種は温帯地域でも見られます。キンカメムシ科には世界におよそ80属450種が知られており、日本国内では現在までに10種が確認されています。

特徴的な姿

キンカメムシの外見は、一般的なカメムシ類と基本的な構造においては類似しています。具体的には、先端がとがった三角形の頭部、左右に張り出した前胸部、後方に向かって細まる胴体、そして細く単純な形の触角と脚を持っています。しかし、多くの種では胴体に厚みがあり、背中側が丸みを帯びて盛り上がっているのが特徴です。

キンカメムシを他のカメムシと見分ける上で最も顕著な特徴は、その背面全体の構造にあります。一般的なカメムシでは、胴体の前方の両端から伸びる一対の前翅が背面の大半を覆い、その中央には前胸部の後方から後方へ細まる三角形の「背盾板」という部分があります。これに対し、キンカメムシでは、この背盾板が極めて大きく発達しており、背面全体をまるで一枚の硬い甲羅のように完全に覆い尽くしています。このため、翅は完全に背盾板の下に隠されて外からは見えなくなっています。

また、その体色もキンカメムシの大きな魅力の一つです。地味な色合いの種も存在しますが、多くの種は鮮やかな赤や朱色、あるいは光沢のある金属的な色彩（金緑色、青紫色など）を持ち、非常に人目を引きます。これらの派手な体色は昆虫愛好家からも高い関心を集めています。ただし、注意すべき点として、生きた状態で見られる鮮やかな輝きや金属光沢は、個体が死ぬと急速に失われてしまいます。色は残りますが、生きている時の美しさとは比べ物にならないほど色あせてしまうのが一般的です。

なお、一般的なカメムシ類と同様に、キンカメムシも身の危険を感じると特有の不快な臭いを放ちます。

生活と食性

キンカメムシの仲間は、様々な種類の植物に付着し、その汁を吸って生活しています。特に幼虫の食性は興味深く、多くの種が植物の果実や種子に口吻（口の部分）を突き刺し、種子内部にある胚乳や子葉といった組織に蓄えられている栄養分を液状化して吸収します。

卵を守る習性

キンカメムシ科の中には、雌が産み付けた卵を熱心に保護する習性を持つ種がいます。例えばアカギカメムシでは、雌はアカメガシワなどの植物の葉の裏に100個を超える卵をまとめて産卵します。産卵後、雌はその卵塊の上に覆い被さるようにして静止し、外敵から卵を守り続けます。卵が孵化して幼虫となり、さらに成長して2齢幼虫になるまでの間、雌は献身的に卵や幼虫を保護する行動が観察されています。

集団を作る奇妙な習性

キンカメムシ類の興味深い生態の一つに、集団を作る習性を持つ種が散見される点があります。なぜ集団を作るのか、その適応的な意味についてはまだ十分に解明されていません。

例えば、沖縄などでよく見られるナナホシキンカメムシは、アカギなどの葉の裏に数個体ずつ集まって静止している姿が頻繁に観察されます。単独で見られることもありますが、一枚の葉に複数の個体が一塊になっていたり、一本の木にそのような集団が複数形成されたりすることがあります。アカギカメムシも、夏から秋にかけてアカメガシワなどの植物に同様の集団を作ることがあり、時には一本の樹木のほとんど全ての葉の裏に隙間なくアカギカメムシが密集し、その重みで枝がたわむほどになる極端な例も知られています。

また、オオキンカメムシは「集団越冬」を行うことで知られています。紀伊半島の南端にある江須崎などでは、冬になると多数のオオキンカメムシが一箇所に集まり、低木の葉の裏に密集して越冬する様子が見られます。アカギカメムシの集団も、越冬を目的としている可能性が指摘されています。

日本に生息する主な種

日本国内で確認されているキンカメムシ科の種には、チャイロカメムシ、アカギカメムシ、ミヤコキンカメムシ、ナナホシキンカメムシ、ハラアカナナホシキンカメムシ、オオキンカメムシ、アカスジキンカメムシ、ニシキキンカメムシ、ミカンキンカメムシ、ラデンキンカメムシなどが含まれます。

もう一度検索