キンシバイ

キンシバイ（金糸梅）

キンシバイ（学名: Hypericum patulum）は、オトギリソウ科オトギリソウ属に分類される半常緑性の小低木です。中国を原産とし、その美しい姿から観賞用として広く栽培されています。

特徴

名前の由来: 和名「金糸梅」は、梅に似た5枚の花弁と、長く突き出した多数の雄しべを金の糸に見立てたことに由来します。
分類: オトギリソウ属の中でも、ビヨウヤナギなどとともにビヨウヤナギ節に属します。
樹高: 通常は0.3～1.5m程度ですが、大きく成長すると3mに達することもあります。
樹形: 株元から多数の枝を出し、株立ち状になります。枝は垂れ下がるように伸び、先端が垂れるのが特徴です。
葉: 対生で、長卵形の葉が1本の枝に6～7枚ほど平面状に並びます。葉はやや厚みがあり、表面は緑色で光沢があり、裏面は白緑色です。若い葉は赤みを帯びることがあります。冬には紅葉し、一部が落葉します。
花: 初夏から夏にかけて（5～7月）開花します。鮮やかな黄色の花は、直径25～40mmで、花弁は5枚、雄しべは多数で、金色に輝きます。
果実: 結実すると、広卵状球形の蒴果となります。

分布と生態

自生地: 中国中南部が原産で、低山の渓谷の湿った岩場などに自生します。
日本での分布: 日本では、関東地方以西の本州、四国、九州、沖縄の暖温帯に野生化しています。自生地と同様に、湿った崖や渓流の岩場などに生育しています。寺社など人の手の入る場所で見られることが多いです。

詳細な形態

枝: 若い枝は紫色を帯び、断面は四角形ですが、成長するにつれて円柱形に近づきます。枝には毛がありません。
葉の形状: 葉の形は披針形から楕円状披針形、卵形、楕円状卵形と変化に富みます。葉の長さは15～60mm、幅は5～30mmです。葉の先端は鋭頭から鈍頭、基部は丸みを帯びるか細くなり、短い葉柄へと繋がります。葉柄はごく短く、0.5～2mm程度です。
葉の質感: 葉は厚みがあるように感じられることもあれば、薄く落葉樹のようだと感じることもあります。
花序: 花は集散状に、1～3個、最大で5個ほど咲きます。
萼: 萼片は5枚で、広卵形から広楕円形をしており、長さは5～10mm、幅は3.5～7mmです。先端は鈍頭から円頭、微凸頭で、縁には腺点があります。
花弁: 花弁は5枚で、楕円状卵形から広倒卵形または円形をしており、長さは12～18mm、幅は10～14mmです。先端は鈍頭で、縁は全縁または波状縁です。
雄しべ: 雄しべは50～70本あり、花糸の基部が合着して5つの束を形成します。葯には明点があります。
雌しべ: 雌しべは1本で、花柱が5本あります。
蒴果: 蒴果は広卵状球形で、長さ9～11mmです。先端には5本の花柱が残ります。
種子: 種子は暗褐色で、長さは1～2mmです。

人間とのかかわり

利用: 庭木や公園樹として広く利用されています。
日本への渡来: 江戸時代の宝暦10年（1760年）に渡来したとされ、観賞用として栽培されてきました。
栽培: 日向でも半日陰でも丈夫に育ち、株分けで容易に増やすことができます。移植後に地上部が枯れることがありますが、心配する必要はありません。剪定にも強く、小さくしたい場合は強剪定も可能です。剪定の適期は冬です。

類似種

キンシバイとよく似た植物として、以下のものがあります。

タイリンキンシバイ (Hypericum × hidcoteense)：セイヨウキンシバイとの雑種で、葉が平面状に並ばず、花の直径が6cmと大きいのが特徴です。
*ビヨウヤナギ (Hypericum monogynum)：葉や樹高がやや大きく、葉がやや十字対生状につきます。花は平開し、花弁に隙間があり、雄しべが長く伸びるのが特徴です。

その他

染色体数はおそらく 2n = 20 です。

参考文献

長田武正『原色日本帰化植物図鑑』保育社、1976年6月1日。ISBN 4-586-30053-1。
門田裕一 著「オトギリソウ科」、大橋広好・門田裕一・邑田仁・米倉浩司／木原浩 編『日本の野生植物 3 バラ科～センダン科』平凡社、2016年9月20日、234-247頁。ISBN 978-4-582-53533-4。
林将之『山溪ハンディ図鑑14 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類』山と溪谷社、2020年1月5日。ISBN 978-4-635-07044-7。
平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、85頁。ISBN 4-522-21557-6。
* 邑田仁・米倉浩司 編『APG原色牧野植物大図鑑Ⅱ〔グミ科～セリ科〕』北隆館、2013年3月25日。ISBN 978-4-8326-0974-7。

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