ビヨウヤナギ

ビヨウヤナギ（未央柳・美容柳、学名: Hypericum monogynum）は、オトギリソウ科オトギリソウ属に分類される半落葉性の低木です。一般的には「ビョウヤナギ」という名で親しまれていますが、これは園芸上の通称であり、植物学的な正式名称ではありません。

名称の由来

ビヨウヤナギという名前は、枝先がやや垂れ下がる様子と、葉がヤナギに似ていることに由来します。しかし、実際にはヤナギの仲間ではなく、オトギリソウ科に属する植物です。中国では「金糸桃」と呼ばれています。日本では、特に「未央柳」という名前が用いられることがありますが、これは中国の故事に由来するものです。

その昔、白居易の詩「長恨歌」に「太液の芙蓉、未央の柳、此に対ひて如何にしてか涙垂れざらむ」という一節があります。これは、玄宗皇帝が楊貴妃と過ごした場所を訪れた際に、太液の池の蓮の花を楊貴妃の美貌に、未央宮殿の柳を楊貴妃の眉に例えたものです。この故事にちなみ、美しい花を咲かせ、柳の葉に似た葉を持つこの木を「未央柳」と呼ぶようになったと言われています。

特徴

ビヨウヤナギは中国原産で、日本へは江戸時代に渡来しました。古くから庭木、生け垣、公園樹として広く利用され、生花としても人気があります。樹高は1.5メートル程度で、よく枝分かれし株立ち状になります。葉は十字対生し、長さ約5cm、幅約25mmの披針状の長楕円形をしています。葉の中央部が最も幅広く、葉質は薄くて柔らかいです。冬でも完全に落葉せず、新葉が出ると同時に古い葉が落ちるのが特徴です。葉の縁には鋸歯がなく、基部が茎を抱え込むように生えます。

花期は6月から7月頃で、枝先に直径5cmほどの鮮やかな黄色の花を多数咲かせます。花弁は5枚でくさび形をしており、特に多数の長い雄しべが目立ちます。雄しべの基部は5つの束に分かれており、雌しべの先端は5つに裂けています。果実は円錐形で、先端には萼片が残ります。

ビヨウヤナギとよく似た植物にキンシバイがありますが、キンシバイは葉の基部が最も幅広く、平面的に対生しています。また、花がやや小ぶりで雄しべが長くないため、容易に見分けることができます。

薬用としての利用

ビヨウヤナギは、全草に消炎、利尿、鎮痛の効果があると言われています。特に、全草を煎じて飲むと、腎臓結石を排出する効果があるとされ、婦人病の薬としても利用されてきました。また、虫刺されには葉を揉んで汁を患部に塗ると効果があると言われています。

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