キーストーン種

キーストーン種とは

キーストーン種（中枢種とも呼ばれる）とは、生態系において、その生物量は比較的少ないにも関わらず、生態系全体に対して非常に大きな影響を与える生物種のことです。この概念は、生態学者のロバート・トリート・ペインによって提唱されました。

生態系に大きな影響を与える種であっても、生物量が多い優占種は、キーストーン種とはみなされません。キーストーン種であるか否かは、「少ない生物量」と「大きな影響」という2つの条件を満たす必要があります。

キーストーン種の判定

ある生物種がキーストーン種であるかどうかを判断するためには、群集重要度（CI）という指標と、その生物の生物量が群集全体に占める割合を算出します。これらの値を基に、先述の2つの条件を満たしているかを確認します。

また、群集構造や環境条件が異なると、生物と生態系の相互作用も変化します。そのため、キーストーン種となる生物種は生態系ごとに異なる場合があります。

キーストーン捕食者

キーストーン種は、捕食行動を通して生態系に影響を与えることが多く、そのようなキーストーン種は「キーストーン捕食者」と呼ばれます。また、その捕食行動は「キーストーン捕食」と呼ばれます。

キーストーン捕食者は、食物連鎖における上位の捕食者であることが多いですが、下位の捕食者である場合も少なくありません。

キーストーン捕食者の例

北太平洋岩礁潮間帯のヒトデ：この地域では、フジツボとカルフォルニアイガイが同じ場所に生息しており、競争関係にあります。しかし、ヒトデが存在すると、競争排除は起こりません。ヒトデを排除すると、イガイが岩礁を占有し、他の生物が減少します。このことから、この生態系ではヒトデがキーストーン捕食者であると考えられます。
北太平洋沿岸のラッコ：ラッコが減少すると、その餌であるウニが増加します。ウニはジャイアントケルプの根を食い荒らすため、ケルプの海中林が破壊され、生物群集に大きな影響を与えます。18世紀に発見されたステラー海牛の個体数が少なかったのも、ラッコの減少によってウニが増え、コンブなどが被害を受けたことが原因であるという説もあります。

捕食者以外のキーストーン種

キーストーン種は、捕食行動以外にも、さまざまな行動を通して生態系に影響を与えます。例えば、ビーバーは、営巣のためのダム作成を通じて生態系に大きな影響を与えるキーストーン種です。また、植物の種子を運搬する渡り鳥や、陸地に栄養塩をもたらす海鳥などもキーストーン種となりえます。

キーストーン種は、生態系のバランスを保つ上で非常に重要な役割を担っています。そのため、キーストーン種が減少したり、失われたりすると、生態系全体に大きな影響が及ぶ可能性があります。キーストーン種の保全は、生態系全体の保全にもつながる重要な課題と言えるでしょう。

参考文献

宮下直、野田隆史『群集生態学』東京大学出版会、2003年。
宮下直、「キーストーン種、生態系エンジニア、生態系機能(コメント,宮地賞受賞者総説)」『日本生態学会誌』 2010年 60巻 3号 p.321-322, doi:10.18960/seitai.60.3_321, 日本生態学会

関連項目

保全生態学
食物連鎖
象徴種
アンブレラ種
生態系エンジニア

外部リンク

EICネット 環境用語集：「キーストーン種」
熊本大学合津マリンステーション - 実習・講義 - 環境適応学 5.群集 - ウェイバックマシン
Linking Keystone Species and Functional Groups: A New Operational Definition of the Keystone Species Concept

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