ギシギシ

ギシギシ（羊蹄）

ギシギシ（学名: Rumex japonicus）は、タデ科に属する多年草です。別名として、シノネ、ウマスカンポ、オカジュンサイなど、地域によって様々な呼び名があります。生薬名としては「羊蹄（ヨウテイ）」と呼ばれ、古くから人々の生活に利用されてきました。

名称の由来

和名「ギシギシ」の語源は諸説ありますが、はっきりとした由来はわかっていません。一説には、京都の方言に由来するとも、子供たちが茎を擦り合わせて音を出す遊びに由来するとも言われています。また、実が密集して穂を振ると「ギシギシ」と音がすることから名付けられたという説もあります。

古い名称は「之（し）」であり、根が薬用として用いられたため、「之の根」（シノネ）という別名も生まれました。

地方名も豊富で、イヌスイバ、ウマスカンポ、オカジュンサイなど、様々な呼び名で親しまれています。花言葉は「忍耐」「隠れ話」「抜け目のなさ」「朗らか」です。

漢名の「羊蹄」は、花の形が羊の蹄に似ていることに由来すると言われています。

分布と生育地

ギシギシは、日本全国（北海道から沖縄まで）、朝鮮半島、中国、千島列島、樺太に広く分布しています。市街地周辺から山地まで、様々な環境に適応し、やや湿った道端や野原、土手、公園、水辺、湿地、田の畦などに群生します。低地から標高1000メートル程度の高地まで生育し、水脈に沿って群生する傾向があるため、地下水位を知る指標植物としても利用されています。

形態と生態

草丈は40cmから130cm程度に成長します。根は太くて硬く、黄色をしています。春から夏にかけて茎が伸び、高さ1メートル内外になります。根元からは束状に葉が生え、早春に出る根生葉は長さ10cmから25cmの長楕円形で、長い柄があり、先端が尖っています。葉の縁は大きく波打ちます。

5月から8月頃にかけて、茎の先に花穂を伸ばし、多数の小さな花を咲かせます。花は花弁を持たず、6枚の萼が2列に並んでいます。花が終わると、内側の3枚の萼が発達して翼状になり、中央部が膨らんで痩果を包みます。実は緑色から褐色に変化し、3稜形で両端が尖った形をしています。

秋には発芽し、ロゼット状で越冬します。

利用

ギシギシは、薬用や食用として利用されます。

薬用

根や根茎には、エモジンやチリソファノールなどのアントラキノン誘導体、アントロン、タンニンが含まれています。アントラキノン誘導体には緩下作用があり、便秘薬として用いられます。タンニンには収斂作用があり、消炎薬として腫れ物などに用いられます。

秋に根を掘り上げ、乾燥させたものが生薬「羊蹄根」として用いられます。便秘薬としては、羊蹄根を煎じて服用します。生の根をすり潰して、皮膚病の患部に塗る民間療法もあります。ただし、胃腸が弱い人や妊婦は服用を避けるべきです。

食用

早春の若芽は食用とされ、東北地方では「オカジュンサイ」と呼ばれています。若芽は透明な粘液に覆われており、独特の食感があります。採取にはナイフなどが必要です。アク抜きのため、茹でて水にさらし、お浸し、和え物、煮浸し、汁の実などに調理されます。生の若芽を塩漬けや味噌漬けにしても食べられますが、シュウ酸を含むため、生食や多食は避けるべきです。

近縁種

ギシギシによく似た植物として、スイバがあります。ギシギシは根が黄色いのに対し、スイバは葉が細長い三角形で基部が矢じりのようになっていることで区別できます。また、ナガバギシギシ、エゾノギシギシ、アレチギシギシなどの外来種も存在します。

競走馬

南関東大井競馬には「ギシギシ」という名前の競走馬がいます。これは牧場にギシギシが自生していたことに由来します。

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