ギャヴィン・ブライアーズ

ギャヴィン・ブライアーズ（Gavin Bryars）は、1943年 1月16日にイギリスのヨークシャー、グールで生まれた作曲家であり、コントラバスの演奏家でもあります。

生涯と経歴

シェフィールド大学で哲学を修めた後、３年間音楽を学びました。彼の初期の音楽活動はジャズ・ベーシストとして始まり、デレク・ベイリーやトニー・オクスレイらと共にトリオ「ジョセフ・ホルブルック」で活動しました。当初は比較的オーソドックスなジャズを演奏していましたが、次第にフリー・インプロヴィゼーションへと移行します。しかし、ジャズの定型的な演奏法に違和感を覚えるようになり、ジャズ・ベーシストとしての活動から作曲へと関心を移していきました。

作曲家としては、イリノイ大学滞在中にジョン・ケージに短期間師事したほか、モートン・フェルドマン、アール・ブラウン、そしてミニマル・ミュージックといったニューヨークの実験的な音楽から強い影響を受けました。

主要作品

彼の名が広く知られるようになったのは、1969年にポーツマスの美術学生のために書かれた作品『タイタニック号の沈没』（The Sinking of the Titanic）によってです。この作品でブライアーズは、1912年に北大西洋で氷山に衝突し沈没したタイタニック号の甲板で、乗客や船員たちが避難する中、最後まで演奏を続けた楽団員たちの演奏を、生存者の証言をもとに再現しようと試みました。諸説ある沈没間際に演奏された曲の中から、彼は賛美歌『オータム』（Autumn）を選択しました。この作品はブライアーズにとって「Work in Progress」（常に進行中の作品）となり、新たな証言や資料が発見されるたびに改訂され、これまでに３度録音されています。1975年の最初の録音（ブライアン・イーノのオブスキュア・レコードよりリリース）では、実際の楽団と同じ６弦構成で約25分間にわたり『オータム』が繰り返し演奏されました。1995年の最新録音版では、貯水塔やプールといった独特の反響空間を利用して録音が行われ、沈みゆく船を表現する効果音に加え、別の賛美歌や子供の合唱なども追加され、約61分と大幅に拡張され、より重層的な音響空間が構築されています。この1995年版の初回プレス特典として、テクノアーティストのエイフェックス・ツインによるリミックス「Raising the Titanic」が収録されたことは、この作品（特に1975年版）がテクノアーティストたちにも大きな影響を与えたことを示しています。

初期の代表作としては他に『イエスの血は決して私を見捨てたことはない』（Jesus' Blood Never Failed Me Yet、1971年）が挙げられます。この作品は、浮浪者が賛美歌『イエスの血は決して私を見捨てたことはない』を感情を込めて即興的に歌っているのを録音した音源を延々とループさせ、そこにオーケストレーションが徐々に加わっていくという構成で、最後はゆっくりとフェードアウトしていきます。この作品もまた1993年に再録音され、歌手のトム・ウェイツが終盤のセクションにボーカルとして参加しています。

その他の活動と教育

この時期、ブライアーズは楽団ポーツマス・シンフォニアを結成しました。これは、音楽の専門的な知識や技術を持たない素人の学生たちを集めてクラシック音楽を演奏させるというユニークな試みでした。音楽的な完全性を最初から期待しないこのアプローチは、偶然性を取り入れた音楽の一種であり、ブライアン・イーノにも影響を与えたと言われています。

後期の作品では、BBCラジオ3と芸術団体アートエンジェルの依頼で作曲された『賭ける男』（A Man In A Room, Gambling、1992年）が知られています。この作品では、スペインの彫刻家ホアン・メノスがカード賭博でいかに不正を行うかを詳細に語るモノローグの背景に、ブライアーズによる美しいオーケストレーションが流れます。ラジオでの放送時には、事前に一切の説明なくオンエアされ、リスナーに自由な想像を促すことを意図していました。

ブライアーズはこれまでに、上記の他にも３つのオペラ（Medea, Doctor Ox's Experiment, G, Marilyn Forever, The Collected Works of Billy the Kidなど）、４つの弦楽四重奏曲、数曲の交響曲を含む多岐にわたるジャンルの作品を作曲しています。マース・カニンガムのために書かれた舞踏音楽「Biped」のように、振付家との共同作業による作品も手掛けています。

現在

彼は現在もイギリスに生活拠点を置きつつ、夏の期間はカナダの西海岸、ブリティッシュ・コロンビア州で過ごしています。教育者としては、以前レスター・ポリテクニックとして知られていたドュ・モントフォート大学に音楽学科の設立に貢献し、1986年から1994年まで教鞭をとった経験があります。

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