ギリシャワイン

ギリシャワイン

ギリシャワインは、ギリシャ共和国で生産されるワインであり、ギリシャ語では「Κρασί（クラシ）」または「οίνος（イノス）」と呼ばれます。ギリシャは世界で最も古いワイン生産国の一つであり、古代ギリシアはワインの歴史において重要な役割を果たしました。特にエーゲ海の島々からワインが庶民に広まり、ギリシャ本土やイタリアへと普及していきました。ギリシャワインは、豊かな酸味が特徴です。

概要

ギリシャの気候は、ブドウ栽培には厳しい面もありますが、高原や北側の斜面を利用することで良質なブドウが栽培されています。3500年の歴史を持つサントリーニ島では、フィロキセラ（ブドウネアブラムシ）の被害を受けていません。サモス島では、カトリック教会が聖餐用の甘口ワインを生産し、その権利がサモス県に譲渡されました。ギリシャは生食用ブドウと干しブドウの生産も盛んであり、食用として知られるマスカットはワインの主要品種の一つです。

ギリシャワインのボトルラベルは、商品名のみギリシャ文字で、生産地やブドウ品種はラテン文字で表記されることがあります。生産地はギリシャ語に英語やフランス語が併記されることが多いですが、ギリシャ語が省略されることもあります。

歴史

古代から中世へ

ワイン造りは、紀元前2000年頃にフェニキア人によってオリエントから古代ギリシア世界へ伝わりました。当時、ワインは水で割って飲まれており、現在のギリシャ語で「ワイン」を意味する「κρασί」は「混合」を意味します。古代ギリシアではワイン醸造が盛んに行われ、地中海全域に広がりました。ワインの運搬・保存にはアンフォラが用いられ、タソス島の博物館には紀元前4世紀の生産者と役人の名が刻印されたアンフォラが展示されています。

ローマ帝国時代（紀元前146年 - 紀元後330年）には修道院でブドウが栽培され、東ローマ帝国時代（331年 - 1453年）を通じてワイン生産が続けられました。オスマン帝国時代（1454年 - 1821年）にはワイン生産は停滞しました。

現代

1960年代には、ハルキディキのドメーヌ・ポルト・カラスで革新的な取り組みが行われました。1971年にはギリシャ農務省がワイン保護法を制定し、ナウサが最初の原産地呼称として認定されました。1981年のギリシャのEU加盟により、EUのワイン法が導入され、投資と技術が向上しました。1985年には、海外で学んだ栽培学者と醸造学者が帰国し、新たな時代を切り開きました。2007年には、ロドス島で世界最優秀ソムリエコンクールが開催されました。

ギリシャワイン法による4つの分類

ギリシャのワイン法では、ワインは以下の4種類に分類されています。

O.P.A.P. - 高品質ワイン
O.P.E. - 高品質甘口ワイン
トピコス・イノス - ヴァン・ド・ペイ（地ワイン）
エピトラペジオス・イノス - テーブルワイン

O.P.A.P.

O.P.A.P.（Ονομασίας Προέλευσης Ανώτερης Ποιότητας）は、高品質な原産地呼称ワインであり、ギリシャで最初に認定されたのは1971年の「O.P.A.P.ナウサ」です。O.P.A.P.認定産地の70%は、古代からの伝統を持つワイン産地です。熟成度合いにより、レゼルヴとグランド・レゼルヴの表示が可能です。

レゼルヴ：白は2年熟成、赤は3年熟成
グランド・レゼルヴ：白は3年熟成、赤は4年熟成

O.P.E.

O.P.E.（Ονομασίας Προελεύσεως Ελεγχόμενης）は、甘口ワインとデザートワインに関する原産地呼称ワインです。原料ブドウはマスカット種とマヴロダフネ種に限定され、マスカットからは甘口白ワインとデザートワイン、マヴロダフネからは甘口赤ワインが生産されます。残糖が多く、非常に甘口なワインとなります。

トピコス・イノス

トピコス・イノス（Τοπικός Οίνος）は、ヴァン・ド・ペイ（地ワイン）に相当します。

エピトラペジオス・イノス

エピトラペジオス・イノス（Επιτραπέζιος οίνος）は、テーブルワインに相当し、一般テーブルワイン、カヴァ、伝統的アペラシオンに分類されます。

一般テーブルワイン: 日常消費用のテーブルワイン
カヴァ: 熟成させたテーブルワインで、白は2年以上、赤は3年以上熟成
伝統的アペラシオン: ギリシャ特有の白ワイン（一部ロゼワイン）が含まれ、レツィーナが代表的

レツィーナ は、サバティアノ種のブドウを主に使用し、醸造中に松脂を加えて独特の香りと味わいを出すギリシャ特有の白ワインです。松脂はアンフォラにワインを貯蔵していた時代の接着剤に由来し、現在でも1リットルあたり1〜5グラム添加されます。アッティカが主要な生産地です。ロゼのレツィーナはコッキネリと呼ばれます。

主要なワイン生産地域

エーゲ海諸島: リムノス島、パロス島、ロドス島、サモス島、サントリーニ島、クレタ島
中央ギリシャ・テッサリア: アッティカ、メセニコラ、アンヒアロス、ラプサニ
イピロス: ジツァ
イオニア諸島: ケファロニア島
マケドニア: アミンデオ、グメニサ、ナウサ、メリトナ
* ペロポネソス半島: マンディニア、ネメア、パトラ

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