クィントゥス・カエディキウス・ノクトゥア

クィントゥス・カエディキウス・ノクトゥア

紀元前3世紀初頭の共和政ローマにおいて、政治家および軍人として活動した人物、クィントゥス・カエディキウス・ノクトゥア（ラテン語: Quintus Caedicius Noctua）。彼の生没年は明らかになっていない。

彼は紀元前289年にローマの最高公職である執政官（コンスル）の職に就き、その後、紀元前283年には公衆道徳の監督などを担う監察官（ケンソル）も務めた。彼の生涯における具体的な活動や業績については、当時の主要な歴史記録が断片的にしか残っていないため、詳細を知ることは困難である。

出自

ノクトゥアは、ローマの平民階級を構成するプレブスに属するカエディキウス氏族の一員であった。この氏族から執政官が出たのは、ノクトゥアが初めてのことである。カエディキウス氏族の歴史は必ずしも詳細に伝わっているわけではないが、ノクトゥアより前の時代にも、共和政ローマの歴史に名を残した人物がいた。

例えば、紀元前475年には護民官を務めたルキウス・カエディキウス、また紀元前390年にガリア人がローマに侵攻した際、追放されていたマルクス・フリウス・カミッルスを呼び戻すことを訴えたとされるマルクス・カエディキウスなどが知られている。しかし、氏族全体の系譜や活動の全貌については、不明瞭な点が多いのが実情である。

家族

ノクトゥアの父もまた、クィントゥスという個人名を持っていたことが分かっているが、その経歴については記録が残されていない。

親族関係については、紀元前293年に執政官ルキウス・パピリウス・クルソルのもとでレガトゥス（副官）としてアクイロニアの戦いに参加し、騎兵部隊を指揮して戦死したガイウス・カエディキウスは、おそらくノクトゥアの兄弟であったと考えられている。

また、紀元前256年に執政官を務めたクィントゥス・カエディキウスは、ノクトゥアの息子にあたる。父子で執政官に就任したことは、カエディキウス氏族が共和政ローマの政治において地位を向上させていったことを示している。

経歴

ノクトゥアが執政官に就任したのは、紀元前289年のことである。この年の同僚執政官は、マルクス・ウァレリウス・マクシムス・コッリヌスであった。しかしながら、この時代のローマ史を記述したティトゥス・リウィウスの『ローマ建国史』、ハリカルナッソスのディオニュシオスの『ローマ古代誌』、ディオドロスの『歴史叢書』といった主要な歴史書は、該当する年代の記述が欠落したり断片化したりしているため、ノクトゥアが執政官としてどのような業績を残したのかは、残念ながらほとんど分かっていない。

執政官を務めた数年後、紀元前283年には監察官に選ばれた。この時の同僚監察官の名前は記録に残っておらず、不明である。監察官の任期は通常18ヶ月だが、ノクトゥアは詳しい理由は伝わっていないものの、途中でその職を辞した。これは、おそらく同僚監察官が任期中に死去したことによるものと推測されている。

このように、クィントゥス・カエディキウス・ノクトゥアの生涯には不明な点が多い。しかし、彼がプレブス出身のカエディキウス氏族から初めて執政官に就任し、さらに監察官という要職も経験したことは、紀元前3世紀における氏族の政治的進出を示す重要な事実であると言えるだろう。

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