マルクス・フリウス・カミッルス

マルクス・フリウス・カミッルス：ローマ第二の創建者

マルクス・フリウス・カミッルス（紀元前446年 - 紀元前365年）は、共和政ローマの軍人、政治家として傑出した人物です。彼は5回も独裁官に任命され、その手腕によってローマを数々の危機から救い、「ロムルスに次ぐローマ第二の創建者」とまで称えられました。

生涯と初期の活躍

プルタルコスによれば、カミッルスのフリウス氏族は当時それほど有力ではありませんでしたが、彼は早くからその軍事的な才能を発揮しました。紀元前431年には独裁官アウルス・ポストゥミウス・トゥベルトゥスの下で武勲を立て、その後ケンソル（監察官）に任じられます。ケンソルとしては、独身男性と寡婦の結婚を奨励したり、両親を亡くした人々への課税を試みたりするなど、独特な政策を実行しました。

ウェイイ攻略と追放

紀元前396年、カミッルスはローマ軍を率いて、エトルリア人の都市ウェイイを攻略しました。ウェイイはローマよりも都市設備が整っていたため、ローマ市民の中には首都をウェイイに移転しようと主張する者も現れました。しかし、カミッルスは「ローマを捨てることは、ローマの神々を捨てることであり、ローマ市民でなくなることだ」と強く反対しました。この一件から、カミッルスは市民からあらぬ罪で訴えられ、追放されることになります。

カミッルスは友人たちに相談しますが、「罰金を集める手伝いはできるが、追放に反対する票を集めることは難しいだろう」と言われてしまいます。カミッルスは有能な指揮官ではありましたが、強引で率直な性格が災いし、ウェイイ攻略戦でのローマ軍初の冬営の強行や、凱旋式の過度な演出、兵士たちが略奪を望む状況での無血開城など、市民からの人気は決して高くありませんでした。当時、自らローマを去る者に対しては罪を問わないという風習があったため、カミッルスはローマを去る決断をします。

ローマの危機とカミッルスの帰還

紀元前387年、カミッルスがローマを去って間もなく、ローマはブレンヌス率いるケルト人（ガリア人のセノネス族）の襲撃を受け、滅亡の危機に瀕します（アッリアの戦い）。ローマ市民たちはこれを神の怒りだと考え、カミッルスの言葉が正しかったことを後悔しました。ケルト人の侵攻によって散り散りになったローマ市民をまとめ、カミッルスはローマへと進軍します。

その頃、ローマの一角に立て籠もった市民たちは、ケルト人の王に対して身代金と引き換えに撤退するよう交渉していました。ケルト人が秤を不正に操作してより多くの身代金を得ようとした際、それに気づいたローマ人が指摘すると、ケルト人は「敗者に災いあれ」と答えます。その時、カミッルスが駆けつけ、「ローマは金ではなく、剣で応える」と宣言し、ケルト人を打ち破りました。

このカミッルスの言葉は、その後ローマの国防における指針となり、ドミティアヌス帝の時代に至るまで約400年間、ローマが身代金と引き換えに捕虜の解放を要求した例はありません。その後、カミッルスは独裁官に任命され、ローマの復興を託されます。

ローマ復興とラティウム同盟の再構築

ケルト人の侵攻によってローマが荒廃すると、ローマを中心とするラティウム同盟の結束も弱まり、各地でローマに反旗を翻す部族や都市国家が現れました。カミッルスは20年かけてこれらの反乱を鎮圧し、4度もの凱旋式を挙げるという名誉に浴しました。彼のリーダーシップと軍事的な才能によって、ローマは再び安定を取り戻し、勢力を拡大していくことになります。

カミッルスの生涯は、困難な状況下でも祖国への愛と忠誠を貫き、その危機を救った英雄の物語として、後世に語り継がれています。

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