クラス1

クラス1：ツーリングカーレースの進化を彩った規定

「クラス1」とは、国際自動車連盟(FIA)が定めたツーリングカーレースの車両規定です。その歴史は長く、大きく分けて第一期と第二期の2つの時代があります。それぞれの時代で、技術革新やレギュレーションの変更、そしてレースシーンにおける盛り上がりと衰退を経験しました。

第一期：ハイテク技術が花開いた時代

第一期クラス1は、1993年に「クラス2」(後のスーパーツーリング)とともにFIAによって導入されました。1996年にはFIAのグループ規定に「グループCL1」として編入されました。

当時、[ドイツツーリングカー選手権]はグループA時代から独自規定で発展を遂げており、他のツーリングカーレースがクラス2規定を採用する中、DTMは唯一クラス1規定を採用しました。[メルセデス・ベンツ]]、オペル、アルファロメオの3メーカーが参戦し、四輪駆動やトラクションコントロール、ABSといった最先端技術を投入。F1にも匹敵する開発競争が繰り広げられ、[[国際ツーリングカー選手権]へと発展しました。

しかし、高コストがネックとなり、オペルとアルファロメオが撤退。1996年末にはクラス1規定は事実上終焉を迎えます。BMWやアウディもクラス1車両を開発していましたが、グループA時代の運営や規則解釈をめぐる争いを原因に開発を中止しました。

グループCL1という名称は、2000年頃までFIA規定として残りました。

第一期クラス1の車両規定 (1993年施行時点)

車両: 全長4.3m以上の4座席車両。年間25,000台以上の生産台数を誇る量産モデルシリーズに属し、ベースグレードが年間2,500台以上生産されていることが条件。
エンジン: 同一メーカーで年間2,500基以上生産されている、排気量2,500cc以下、最大6気筒の自然吸気レシプロエンジン。気筒あたり4バルブ以下。量産エンジンから±2気筒の変更が認められた。
最低重量: 二輪駆動1,000kg、四輪駆動1,040kg。四輪駆動車を二輪駆動化しても、元の駆動形式の重量が適用される。
燃料タンク: 110L以下
サスペンション: フロントは形状変更不可だが、シャシー側のピボットは50mmの範囲で変更可能。リアは同一車種であれば他形式に変更可能。
その他: TCS、ABSなどの電子デバイスの使用が可能。ボディ外板の材質は自由。

1994年には燃料タンク容量が120L以下に、1995年には最大回転数が12,000rpmに制限されるなど、その後も規則の改定が繰り返されました。

第二期：共通部品とシルエットフォーミュラの時代

2000年に復活したDTMは、コスト削減のため、共通部品の駆動系と市販車由来ではない鋼管パイプフレームを用いたシルエットタイプカーを採用する新規定「DTM2000」を導入しました。

2010年前後には、DTM、IMSA、SUPER GTの3シリーズによる車両規定統合の議論が活発化。DTMの2012年規定をベースに、クーペ化とダウンサイジングターボ化を盛り込んだ新規定が構想され、再び「クラス1」の名前が使用されました。IMSAは離脱しましたが、SUPER GTのGT500クラスで2014年から試験的に導入されました。

2018年には「完全版」クラス1規定が発表され、2020年から施行される予定でしたが、DTMではメーカー撤退が相次ぎ、BMWのみとなり、2020年末にクラス1を廃止してグループGT3に移行しました。SUPER GTのGT500クラスでは、独自開発領域を残した「クラス1+α」規定として導入されましたが、「クラス1」の名称は廃止される見込みです。

第二期クラス1（GT500版）の車両規定 (2014年規定)

車両: 運営指定の共通部品（60品目以上）を用いた、FRレイアウトの左ハンドル、レース専用設計車。全長4,775mm、全高1,150mm、全幅1,950±6mm、ホイールベース2,750±10mm。デザインは各メーカーのクーペをスケーリングして使用可能。
エンジン: 燃料リストリクター付き、2.0L直列4気筒直噴シングルターボ。ターボチャージャーはギャレット社の共通部品。
サスペンション: 前後ダブルウィッシュボーン式。ショックアブソーバはマルチマティック社の共通部品。
その他: TCS、ABSなどの電子制御デバイスは禁止。ディフューザーのフラットボトム面は共通デザイン。

2017年、2020年と規則改定が行われ、ダウンフォースの低減や共通部品の増加などが図られました。

第一期と異なり、第二期のクラス1車両は、市販車に似せたシルエットカーです。空力性能は非常に高く、「世界最速の箱車」とも呼ばれています。

クラス1の名称使用例

「クラス1」という名称は、ツーリングカーレース以外にも使用されています。例えば、バハ1000のバギーカーの最高クラスや、ダカール・ラリーのカミオン部門にも「クラス1」が存在しました。

このように、「クラス1」は、その時代時代のレース規定や車両特性を反映しながら、モータースポーツの歴史に刻まれた重要な規定です。

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