クリッパー (船)

クリッパーの概要

クリッパー（clipper）は19世紀に登場した大型の帆船で、特に速度を重視した設計が特徴です。この船は、アメリカ合衆国とイギリスの造船所で主に建造されましたが、フランスやブラジル、オランダなど他の国でも造られていました。一般的に、クリッパーは全長に比べて船体が狭く、多くのマストと帆を持っており、巨大な総帆面積がそのスピードを支えています。そのためクリッパーは、模型としても人気があり、多くのファンを惹きつけてきました。

特にイギリスの「カティーサーク」は有名で、現存するクリッパーの代表例です。1843年、アジアからの茶の需要の増加に伴い、クリッパーはその輸送のために幅広く利用されるようになりました。さらに1848年にカリフォルニアで、1851年にはオーストラリアで金が発見されると、クリッパーの需要は一層高まりました。しかし、1869年にスエズ運河と大陸横断鉄道が完成すると、クリッパーは急速にその役割を失ってしまいました。

クリッパーの称号は、輸送する荷物によって特徴付けられることが多く、ティークリッパー（茶）、ウールクリッパー（羊毛）などの呼称があります。これらの船は、従来の輸送方法に比べて大幅に時間を短縮させ、茶の輸送では18〜24ヶ月を要していたところを100〜120日で行うことができるようになったのです。特に航海中には植民地間での競争が重要で、様々な最速記録が語り継がれることとなります。特に「カティーサーク」と「サーモピレー」の競争は有名で、1885年には「カティーサーク」がシドニーからロンドン間を72日で航行し、当時の最速記録として名を残しました。

アメリカにおいては、クリッパーは西海岸へ金を運ぶための船としても重宝され、南米ホーン岬やパナマ地峡を経由する航路が重視されました。オランダでは、ジャワ島からの茶の輸送や郵便の配達にクリッパーが使われましたが、実際にはバーク型やスクーナー型の船も多く存在しました。このため、オランダのクリッパーは他の国のものに比べて長めで、1873年までに建造が続けられました。

歴史的背景

「クリッパー」という言葉が初めて用いられたのは、ボルチモアクリッパー（Baltimore clipper）と呼ばれる2本マストの小型帆船からでした。この船は1795年から1815年にかけて建造され、私掠免許を得て米英戦争で活躍しました。その後、1833年にはアメリカで最初の大型高速帆船、アン・マッキム（Ann McKim）が誕生しました。アン・マッキムは、独特な形状と帆装を持ち、より速い船を求めて設計されたものです。

1830年代後半には、イギリスの造船会社が初の高速帆船を建造し、その後アジアとの間で茶やスパイスの輸送に利用されるようになりました。1845年には、その速度を極限まで追求したクリッパー「レインボー」が造船され、さらにそのデザインが進化しました。しかし、アメリカでは1859年以降、クリッパーの建造は縮小し、1869年の「グローリー・オブ・シーズ」が最後の大型クリッパーとされています。

イギリスでは1870年ごろまでに数多くのクリッパーが建造され、木造船に金属を使った技術も発展しました。しかし1869年のスエズ運河開通以降、主に茶の貿易が蒸気船に移行し、クリッパーはオーストラリアやニュージーランドとの移民輸送に使われるようになりました。しかし、1880年代を過ぎるとその需要は徐々に減少し、20世紀に入るとクリッパーはその歴史の幕を閉じることとなりました。

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