クレメンス12世 (ローマ教皇)

クレメンス12世の生涯と業績

クレメンス12世（Clemens XII、1652年4月7日 - 1740年2月6日）は、18世紀のローマ教皇であり、その在位期間は1730年7月12日から1740年2月6日まででした。本名をロレンツォ・コルシーニ（Lorenzo Corsini）といい、教皇庁における財務の専門家として、また、数々の建築事業を推進した人物として知られています。

生い立ちと聖職者への道

フィレンツェの貴族出身のコルシーニは、ピサ大学で法学を修めた後、伯父であるネリ・コルシーニ枢機卿の下で財政の実務を学びました。伯父と父の死後、コルシーニ家の家長となる立場を放棄し、当時の慣習に従い、教皇インノケンティウス11世から高位聖職者権を購入して聖職者の道へ進みました。この際に、莫大な財産を相続し、それを書籍の充実にあてたと言われています。

教皇庁での活躍

教皇庁では、その財務家としての能力を発揮し、歴代の教皇たちから厚遇を受けました。サンピエトロ・イン・ビンコリ教会の司祭枢機卿からフラスカーティの司教枢機卿へと昇進し、順調に出世を重ねました。78歳という高齢で教皇に選出されましたが、視力は衰えていたものの、明晰な頭脳を持ち、コルシーニ家の有能な縁者を側近として実務をこなしました。

教皇としての業績

教皇クレメンス12世を名乗ったコルシーニは、まず教皇庁の財政再建に取り組みました。前教皇時代の財務責任者であったコスチア枢機卿の職権濫用が財政悪化の原因だと考え、彼を筆頭とする責任者たちに損害賠償を求めました。特に責任が重いとみなされたコスチア枢機卿には10年の禁固刑を科しました。さらに、ベネディクトゥス13世が禁止していた富くじを復活させ、教皇庁に年間50万スクードにのぼる収入をもたらし、財政を急速に立て直しました。この収入を元に、ローマの建築物の修復や新築を積極的に行いました。

ローマの建築事業

教皇はまず、教会としても教皇宮殿としても重要な役割を持つサン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂のファサードのコンペを行い、アレッサンドロ・ガリレイの案を選出しました。この結果、今日でも見ることができる、聖人たちがそびえ立つ壮麗なファサードが完成しました。また、コンスタンティヌス帝の凱旋門を修復し、クィリナーレの丘にコンスルタ宮殿（現在の議事堂）を建立しました。さらに、ローマ市全体の道路舗装やコルソ通りの拡張、アンコーナにローマの外港を建設するなど、都市インフラの整備にも尽力しました。これらの事業の中でも、最も有名な業績は、ローマの観光名所の一つであるトレビの泉をニコラ・サルヴィに命じて建設させたことでしょう。また、6万スクードという大金を費やしてアルバーニ枢機卿の美術品や古書籍のコレクションを教皇庁のものとするなど、文化的遺産の保護にも貢献しました。

その他の業績

クレメンス12世は、高齢で弱視でありながらも、数多くの業績を残しました。サンマリノ共和国に侵攻したアルベローニ枢機卿に自制を促し、同国の独立を維持させた他、パルマとピアチェンツァの両大公の仲介も行いました。また、在位中の1738年には、フリーメイソンを排斥する初めての教皇文書である「イン・エミネンティ」を発令しました。さらに、ヴィンセンシオ・ア・パウロを列聖し、フランスのジャンセニスムを非難しました。東方教会との合同を目指し、アルメニア正教会の一部とコプト正教会の一部に教皇権を認めさせ、東方典礼カトリック教会の教区を設置しました。

死と埋葬

教皇クレメンス12世は、自らが手塩にかけたサン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂に埋葬されました。その生涯は、教皇としての職務だけでなく、財政家、建築家、そして文化人としての多岐にわたる業績によって彩られています。

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