クロイチゴ

クロイチゴ：日本の山野に自生する甘酸っぱい宝石

クロイチゴ（学名：Rubus mesogaeus Focke var. mesogaeus）は、バラ科キイチゴ属に分類される落葉低木です。高さ1～1.5メートルほどに成長し、ツル状の茎を伸ばして周囲に広がります。その姿は、日本の山野にひっそりと佇む、野生的な美しさを感じさせます。

葉：掌状の三出複葉

クロイチゴの葉は、掌状の三出複葉で、互生します。つまり、葉柄から3枚の小葉が伸びる形です。まれに、5枚の小葉を持つ奇数羽状複葉になることもあります。小葉は、長さ8～25センチメートル、葉柄は6～7センチメートルと、比較的大きめです。特に頂小葉は側小葉よりも大きく、長さ5～12センチメートル、幅4～8センチメートルの広卵形または三角状卵円形をしています。そして、冬には落葉します。

花と実：淡紅色の花から黒く熟す実へ

6～7月頃には、淡紅色の可愛らしい花を咲かせます。この花から、やがて実が育ちます。最初は赤い実ですが、熟すと黒く色づき、甘酸っぱい香りが漂います。この黒く熟した実が、クロイチゴの名前の由来となっています。この実は食用として利用され、ジャムやジュースなどに加工されることもあります。その独特の風味は、多くの人々を魅了する魅力の一つです。

キイチゴ属における分類：ラズベリー類

クロイチゴは、キイチゴ属の中でもラズベリー類に分類されます。ラズベリー類は、果床（果実の軸の部分）が木質化し、熟すと集合果が果床から分離するという特徴があります。一方、ブラックベリー類は果床が木質化せず、集合果もろとも収穫されます。果実の色が似ているものの、クロイチゴとブラックベリー類は、植物学的には異なる分類に属します。

分布と生育環境：日本全国の山地

クロイチゴは、中国、台湾、そして日本の各地に分布しています。日本では、北海道から九州まで、幅広い地域の山地に自生しています。比較的日当たりの良い場所を好み、山地の斜面や林縁などで生育していることが多いです。

クロイチゴの利用と保全

クロイチゴは、古くから食用として利用されてきました。近年では、ジャムやジュースなどの加工品だけでなく、生食されることも増えています。しかし、開発や環境の変化によって、生育地の減少が懸念されています。この貴重な植物の保全のためにも、生育環境の保護と持続可能な利用が重要となります。

参考文献

* 林弥栄『日本の樹木』（増補改訂新版）山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2011年11月30日。ISBN 978-4635090438。

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