クロスオーバーイレブン

『クロスオーバーイレブン』（英: Crossover Eleven）は、かつてNHK-FM放送で長きにわたり親しまれた深夜の音楽番組です。1978年 11月23日にレギュラー放送を開始し、2001年 3月29日まで足かけ23年、実に22年以上の長きにわたり放送が続けられました。

番組の始まりとその変遷

レギュラー放送開始に先立ち、1977年12月25日からは試験的な特別番組として数回にわたり放送されていました。本格的なレギュラー化が1978年 11月23日となったのは、国際電気通信連合（ITU）の取り決めに伴い、中波放送の周波数が10kHz単位から9kHz単位に変更される日であり、これに合わせてNHKがラジオ第1放送とFM放送の番組を大規模に改編したタイミングでした。

番組開始当初から1987年度までは、深夜における実質的な最終番組として位置づけられていました。1988年4月からは、FM放送の放送時間が午前1時まで延長されたことを受け、番組も23時から午前1時までの2時間の2部構成へと拡大されます。前半パート（23時～23時50分）は、それまでのスタイルを踏襲し、音楽とスクリプト朗読を中心に構成されました。その後、23時50分からの10分間はラジオ第1放送と同時放送のNHKニュースが入り、午前0時の時報を挟んで始まる後半パート（0時～1時）がスタートしました。この後半パートは、1993年4月2日までは音楽に加えて各界の著名人によるフリートーク（週替わり、第1週はレギュラーゲストのピーコ）や、不定期でリクエスト特集として延長される構成でした。1993年4月5日以降は構成が変更され、好本恵がオープニングとエンディングのナレーションおよびその週のテーマ紹介のみを担当し、音楽がノンストップで流れるスタイルとなりました。これにより、放送日付上では名実ともに深夜の最終番組としての役割を担うことになります。なお、特別編成時を除いた地上波（テレビ・ラジオ）の定時放送として、NHK史上初めて「日またぎ編成」を行った番組としても記録されています。

放送曜日についても変更がありました。1991年4月1日からは月曜日から木曜日までの放送となり、金曜日については1991年4月5日から1992年4月3日まで「クロスオーバーイレブンロックン・ナイト」として、小林克也が担当する別番組が放送されました。

1997年4月1日以降は、午前0時からの後半パートが廃止され、その時間帯は日替わりの音楽番組に移行しました。さらに、1998年3月30日からは23時からの15分間がラジオ第1との同時放送ニュースとなったため、番組は23時15分から午前0時までの45分番組に短縮されました。そして、2000年3月27日以降は23時20分開始となり、午前0時までの40分番組へと、放送時間は徐々に短縮されていきます。

番組内容と特色

番組の基本的な構成は、オープニングに続いて数曲の音楽が流れ、その後はスクリプトの朗読と1曲の音楽が交互に繰り返され、最後に再び数曲の音楽を流してエンディングを迎えるというものでした。使用される音楽は洋楽が中心で、インストゥルメンタルやイージーリスニングにとどまらず、ロックやポップスなど幅広いジャンルが選曲されました。今泉洋、渋谷陽一、小倉エージといった多くの著名な選曲担当者が番組を支えました。

番組の大きな特色の一つであるスクリプト朗読は、1回完結のオムニバス形式や、複数の週にわたるシリーズものなど多様な形式が用いられました。特にシリーズものでは、『モヤシ君』（高木達）や『遊民爺さん』（小沢章友）といった印象的なキャラクターが登場する作品もありました。朗読においては、音楽に入る直前などで語りのスピードを意図的に落とし、独特の間合いを作るなど、メリハリをつけた表現がリスナーに深い印象を与えました。週末に放送されていた時期は、主にアーティスト特集が組まれていたため、平日のような長尺のスクリプト朗読はなく、短いエンディングのみの構成でした。

番組の「声」として、歴代のナレーターがその世界観を形作りました。特に、レギュラー番組時代の5代目を務めた津嘉山正種は、その後の特別番組での復活時にもナレーターを担当し、多くのリスナーにとって番組を象徴する存在となっています。

番組の終焉、そして復活

2001年、NHKの方針による番組改編に伴い、『クロスオーバーイレブン』は3月29日の放送をもってレギュラー放送を終了しました。番組の役割は、後継となる「ミッドナイト・ポップライブラリー」（後に「ポップスライブラリー」と改題）へと引き継がれました。

レギュラー放送終了後も番組を惜しむ声は多く、2005年には『期間限定復活』として1週間にわたり放送されました。その後も、2009年夏から2020年冬にかけて、夏と新春の特別番組として不定期ながらも定着し、多くのファンを喜ばせました。特別番組では毎回新作のスクリプトが制作され、ナレーターは変わらず津嘉山正種が担当しています。特別番組としての基本は午後11時開始の1時間番組でした。

番組のコンセプトはCD化もされており、2005年にはソニーミュージックとビクターエンタテインメントから関連CDが発売されています。

貴重な番組音源については、残念ながらNHKアーカイブスにはレギュラー放送時代のものが20本程度しか保存されていないことが、2024年のNHK番組発掘プロジェクトによって公表されています。現在、関係者やリスナーに対し、当時のエアチェック音源の情報提供が呼びかけられています。

『クロスオーバーイレブン』は、その静かで洗練された音楽と語りの融合により、多くの人々の心に深く刻まれた、日本のラジオ史における特筆すべき番組の一つと言えるでしょう。

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