クロスレイ (高速輸送艦)

USSクロスレイ（APD-87）：太平洋を駆け抜けた高速輸送艦

USSクロスレイ（APD-87）は、アメリカ海軍のクロスレイ級高速輸送艦のネームシップとして、太平洋戦争および戦後の混乱期において重要な役割を果たしました。その名は、海軍の功労者ウォルター・S・クロスレイに由来します。

起工から就役、そして太平洋へ

当初、クロスレイは1943年10月16日にラッデロウ級護衛駆逐艦 (DE-226) としてフィラデルフィア海軍造船所で起工されました。しかし、建造途中で高速輸送艦へと設計が変更され、1944年2月12日にW・S・クロスレイ夫人によって命名、進水しました。そして同年10月22日、高速輸送艦として正式に就役を果たしました。

就役後、クロスレイは1944年12月21日にノーフォーク海軍造船所を出航し、1945年1月16日に真珠湾に到着。翌月には水中破壊チームと共に訓練を行い、2月14日にはサンペドロ湾に向けて出航、3月4日に到着しました。サンペドロ湾では、間近に迫った沖縄侵攻のリハーサルに参加し、作戦1週間前には第17水中破壊チームの母船として指定されました。

沖縄戦での活動

1945年4月1日に開始された沖縄作戦において、クロスレイは海岸線の偵察巡航を担当しました。4月2日には、特攻機の攻撃を受けたディカーソン (USS Dickerson, APD-21) の乗組員救助を支援し、4月12日には同様の攻撃を受けたホワイトハースト (USS Whitehurst, DE-634) を支援するなど、救助活動にも従事しました。4月20日から6月7日までの期間は、沖縄とウルシー環礁、レイテ島間の船団護衛任務に就きました。

終戦と戦後の活動

終戦後、クロスレイはレイテ島から韓国の占領を担当する第40歩兵師団を8月28日に仁川へ送り届けました。その後は仁川港でパイロット艦としての任務に従事し、続いて陸軍兵士を釜山へ輸送しました。10月3日には、釜山港を巡航中に破損した帆船を発見。その船には抑留を逃れようとする元日本兵45名が乗船しており、保護しました。その後もクロスレイは同海域に留まり、兵員輸送任務に従事し、1946年3月29日に帰国の途に就きました。

退役とその後

クロスレイは1946年11月15日にフロリダ州グリーンケーヴスプリングスで退役し、大西洋予備役艦隊で保管されました。1960年6月1日に除籍され、動力ハルクとしてエクアドルに売却されました。

太平洋戦争における上陸作戦支援や船団護衛、そして戦後の兵員輸送など、USSクロスレイは多岐にわたる任務を遂行し、その生涯を終えました。

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