グアラニー族

グアラニー族：南米の先住民と彼らの歴史、文化、そして現代

グアラニー族は、南アメリカ大陸の先住民であり、パラナ川とパラグアイ川流域を中心に、アルゼンチン、ボリビア、パラグアイ、ウルグアイ、ブラジルといった国々に広く居住しています。かつては広大な地域に勢力を保っていましたが、ヨーロッパ人の到来と植民地化によって人口は減少しました。現在では、純粋なグアラニー族は少数派であり、多くは先住民とヨーロッパ人の混血であるメスティーソとなっています。しかし、彼らの文化と言語は、現代社会においても重要な要素として残されています。

グアラニー文化：豊かな伝統と現代社会への影響

グアラニー族の文化は、農業、独特の宗教観、そして豊かな口承文化によって特徴づけられます。彼らは伝統的に農耕生活を営んでおり、マテ茶の栽培と消費は彼らの文化の中心的な要素となっています。マテ茶は現在では南米全域に広がり、グアラニー文化の大きな影響を示しています。

彼らの宗教観は、自然との深い結びつきと、シャーマン（呪術師）による指導に基づいています。グアラニー族の中には、楽園の存在を信じ、シャーマンの導きにより楽園への旅に出る人々もいました。この楽園への旅は、時にブラジル奥地、またある時は遥か海の彼方へと向かう、1000キロメートルを超える大移動となることもありました。1912年には人類学者のクルト・ニムエンダジュが、アパポクバー・グアラニー族の移住に同行し、その記録を残しています。この移住は、ヨーロッパ人からの圧力や、世界の終末を予言するシャーマンの影響などが背景にあったと考えられています。

グアラニー語は、パラグアイでは公用語の一つとして使用されており、パラグアイ文学はグアラニー語によって表現されるグアラニー魂を体現しているとされています。南米南部の地名にも、ウルグアイ川やパラグアイ川など、グアラニー語起源の言葉が多く残っており、彼らの歴史と文化的影響力の広がりを示しています。ガウチョという単語も、グアラニー語の孤児や放浪者を意味する言葉に由来すると言われています。

グアラニー族の歴史：植民地化と抵抗

ヨーロッパ人との接触は、グアラニー族の歴史に大きな転換をもたらしました。当初は、スペイン人やポルトガル人と同盟を結び、敵対部族との戦いに協力するケースもありました。しかし、スペイン人、特にブラジルのバンデイランテスと呼ばれる奴隷商人の侵略によって、多くのグアラニー族が奴隷として捕らえられました。

これに対抗するため、スペインはイエズス会の宣教師をパラグアイに派遣しました。イエズス会はグアラニー族にカトリックを布教するとともに、バンデイランテスに対する自警団を組織しました。グアラニー族はしばしばバンデイランテスの攻撃を撃退し、イエズス会の活動は一定の成功を収めました。しかし、スペインにおけるイエズス会の追放に伴い、パラグアイからも撤退せざるを得なくなり、グアラニー族への影響は変化しました。

パラグアイ独立後、初代独裁者ホセ・ガスパル・ロドリゲス・デ・フランシアは、クリオージョ（スペイン系白人）の反乱を防ぐため、政策的にグアラニー族との通婚を奨励しました。その結果、グアラニー族とクリオージョの混血であるメスティーソの人口が増加し、現在ではパラグアイ人口の90％を占めるまでになっています。

ウルグアイでも、グアラニー族は重要な先住民集団の一つであり、スペインとポルトガルの植民地争いにも巻き込まれました。1750年のマドリード条約によってウルグアイ川東岸がポルトガル領となると、イエズス会とグアラニー族はこれに抵抗し、グアラニー戦争が起こりました。この戦争の結果、多くのグアラニー族はパラグアイへと撤退しました。

ブラジルでは、ポルトガル人との通婚を通じて、グアラニー文化が継承され、現在では先住民性＝グアラニー性はブラジル国民のアイデンティティの一部となっています。

アルゼンチンでも、ミシオネス州などにイエズス会が設立した伝道所跡が残っており、彼らの歴史と文化を物語っています。

現代のグアラニー族

現代のグアラニー族は、パラグアイ、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイの各地に居住し、それぞれの国の社会に統合されつつも、独自の文化と伝統を維持しています。グアラニー語を話す人々は、依然として多く存在し、彼らの文化は、音楽、美術、そして日常生活の中に息づいています。しかしながら、土地問題や経済的な格差といった課題に直面しており、彼らの権利保護と社会経済的な自立が重要な課題となっています。

グアラニー族を題材にした作品

グアラニー族の歴史と文化は、多くの芸術作品にインスピレーションを与えてきました。有名な作品としては、映画「ミッション」や、オペラ「グアラニー族の男」などが挙げられます。これらの作品は、グアラニー族の歴史と文化への理解を深める上で、重要な役割を果たしています。

まとめ

グアラニー族は、南米の歴史と文化において重要な役割を果たしてきた先住民集団です。彼らの歴史、文化、そして現代社会における課題を知ることは、南米の多様な文化を理解する上で不可欠です。彼らの伝統と文化の保護は、未来世代への重要な遺産であり、持続可能な発展のために、更なる理解と支援が必要です。

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