グッバイ・クリーム

『グッバイ・クリーム』（原題：『Goodbye』または『Goodbye Cream』）は、イギリスが生んだ伝説的なロックトリオ、クリームにとって通算4作目にして最終作となったオリジナル・アルバムです。1968年11月のバンド解散という節目を迎えた後に制作され、1969年2月15日付のビルボード・チャートに初登場しました。

バンドの終焉は、フェアウェル・ツアーとロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでの最終公演を控えた1968年、マネージャーのロバート・スティグウッドによって公にされました。

制作背景とレコーディング

本作の制作は、バンドが最後のステージに向かう過程で行われました。フェアウェル・ツアーが始まる直前の1968年10月、ロンドンのIBCスタジオにてプロデューサーのフェリックス・パパラルディとエンジニアのデイモン・リヨン＝ショウと共に3曲のスタジオ録音が行われました。このセッションでは、後にシングルカットされる名曲「バッジ」や「スクラップヤード」などが生まれました。エリック・クラプトンはギターにレスリー・スピーカーを用い、ジャック・ブルースとフェリックス・パパラルディが鍵盤楽器を担当するなど、特徴的なサウンドが追求されています。

一方、アルバムに収録されたライブ音源は、1968年10月4日にオークランドでスタートしたフェアウェル・ツアーの中から選ばれました。特に、ツアー中盤の10月19日にロサンゼルスのザ・フォーラムで行われたコンサートは、プロデューサーのパパラルディに加えてエンジニアのエイドリアン・バーバー、ビル・ハルバーソンによって記録されました。最終的にこの録音から3曲がアルバムに採用されています。

アルバム構成とアートワーク

当初、『グッバイ』は前作『クリームの素晴らしき世界』と同様に、スタジオ盤とライブ盤を組み合わせた2枚組として構想されていました。しかし、アルバムに収めるに足る質のライブ演奏音源が限られていたため、最終的にはスタジオ録音3曲とライブ録音3曲を収めたシングル・アルバムとして完成しました。

オリジナル盤のジャケットは、ヘイグ・アディシアンの指示による見開き仕様でした。表ジャケットの写真はロジャー・フィリップスが撮影し、カバーデザインはアラン・オルドリッジが手掛けています。内側の見開き部分には、ロジャー・ヘインによるイラストが描かれており、そこには各収録曲名を刻んだ墓石が立つ墓地という、バンドの終焉を象徴するようなイメージが表現されています。1998年にリリースされたリマスターCD盤では、インナースリーブのイラストが変更され、ライナーノーツに使用された別のビジュアルが採用されました。

収録曲と特筆すべき点

本作の収録曲のうち、「アイム・ソー・グラッド」、「政治家」、「トップ・オブ・ザ・ワールド」の3曲が、1968年10月19日のロサンゼルス・ザ・フォーラム公演からのライブ音源です。

スタジオ録音曲の中でも特に有名な「バッジ」は、エリック・クラプトンとジョージ・ハリスン（当時ザ・ビートルズ）の共作として知られています。しかし、アルバムのオリジナル・プレス盤やシングル盤のクレジットでは、作者名にクラプトンの名前のみが記載されました。この楽曲でリズム・ギターを担当したハリスンは、「L'Angelo Misterioso」（謎の天使）という偽名で参加者の一人としてクレジットされています。

また、その後のCDリリースでボーナス・トラックとして追加収録された「エニイワン・フォー・テニス」は、映画『七人の無法者』（1968年）のテーマ曲として制作された楽曲です。これはクラプトンと漫画家のマーティン・シャープが「英雄ユリシーズ」に続いて共作したもので、元々は同映画のサウンドトラック盤に収録されていましたが、後にポリドールによって本作にも収録されることになりました。

評価

本作に対する批評家の評価は、総じて必ずしも芳しいものではありませんでした。例えば、オールミュージックのスティーヴン・トーマス・アールワインは、収録されたライブ演奏については前作よりも優れていると評した一方で、スタジオ録音を含むアルバム全体が「瞬間的に」作られたように感じられると指摘しています。ローリング・ストーン誌に寄稿したレイ・レッツォも、同様にあまり好意的ではなく、クリームのような偉大なバンドであれば、もっと質の高い、より満足のいく最後のアルバムをリリースできたはずだと述べるなど、期待値に対する物足りなさを指摘する声が多く見られました。

参加ミュージシャンと制作スタッフ

本作の制作に関わった主なメンバーとスタッフは以下の通りです。

ジャック・ブルース: ベース、ピアノ、オルガン、ヴォーカル
ジンジャー・ベイカー: ドラム、パーカッション、ヴォーカル
エリック・クラプトン: ギター、ヴォーカル
フェリックス・パパラルディ: プロデューサー、ベース（「ホワット・ア・ブリングダウン」）、ピアノ、メロトロン
ジョージ・ハリスン（L'Angelo Misterioso名義）: リズムギター（「バッジ」）
ビル・ハルバーソン: エンジニア
エイドリアン・バーバー: エンジニア
デイモン・リヨン＝ショウ: エンジニア

『グッバイ』は、短くも強烈な活動を行ったクリームの有終の美を飾る作品として、その後のロック史にその名を刻んでいます。

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