グランドパレス事件

グランドパレス事件とは

グランドパレス事件は、1963年（昭和38年）3月に神奈川県横浜市中区山下町のサパークラブ「グランドパレス」で発生した、錦政会（後の稲川会）と三代目山口組井志組横浜支部との間の暴力団抗争事件です。この事件は、右翼活動家の児玉誉士夫が推進していた東亜同友会構想が頓挫する契機となりました。

事件の背景

1961年12月、三代目山口組組長・田岡一雄は、菅谷組の菅谷政雄に横浜市に菅谷興業横浜支部を設立させました。しかし、ここは錦政会の縄張りでした。

1962年2月、田岡は井志組の井志繁雄に横浜市中華街に井志組横浜支部を作らせました。同年6月には、三代目山口組益田組の益田芳夫が横浜に「山三食品」を開店するなど、山口組は着々と横浜に進出していました。

一方、右翼活動家の児玉誉士夫は、「全国の博徒を大同団結させ、日本国内の共産主義勢力を押さえ込む」という構想を抱き、博徒の大同団結組織「東亜同友会」を設立しようと動いていました。児玉は1962年夏頃から、錦政会の稲川角二会長、北星会の岡村吾一会長、東声会の町井久之会長らに根回しを行い、大同団結の同意を取り付けました。

1963年2月11日、児玉誉士夫は稲川裕芳、松葉会会長・藤田卯一郎、港会会長・磧上義光、岡村吾一、町井久之、田岡一雄ら全国の主要暴力団組長を京都市の「都ホテル」に集め、「東亜同友会」構想を披露しました。稲川裕芳が関東の暴力団組長を、田岡一雄が関西・中国・四国の暴力団組長を、児玉誉士夫が九州の暴力団組長をまとめ、意思統一を図りました。

事件の発生

1963年3月、山口組井志組横浜支部長・堀江清一ら2人が、サパークラブ「グランドパレス」で、錦政会幹部の林喜一郎や佐藤義雄ら5名に挨拶代わりに酒を送りました。しかし、林は酒の受け取りを拒否。堀江は井志組横浜支部に電話を入れ、組員20人に日本刀を持参させて呼び寄せました。井志組組員20人は「グランドパレス」を取り囲み、林や佐藤ら5名が店を出る際に、両者の間で喧嘩が勃発しかけました。駆けつけた警察隊が、凶器準備集合罪で井志組組員を逮捕しました。

事件の影響とその後

グランドパレスでの事件を受け、稲川角二は東亜同友会から脱退しました。

事態を収拾するため、児玉誉士夫が田岡と稲川の仲介に入り、田岡に「襲撃に関係した井志組横浜支部組員全員の除名、井志繁雄の断指、横浜在住の山口組関係者を10人にする」という手打ちの条件を示しました。田岡はこの条件を受け入れ、一応の和解が成立しました。

しかし、1963年4月、田岡は右翼活動家の田中清玄、麻薬審議会会長・菅原通済、参議院議員・市川房枝、作家・山岡荘八、評論家・劇作家の福田恆存らと麻薬追放国土浄化同盟を結成し、横浜市で結成大会を開きました。同盟の総本部を山口組本部に置き、益田芳夫を横浜支部長として、横浜に同盟の横浜支部事務所を開設させました（実質的には益田組横浜支部として使用）。これは、田岡が児玉との手打ちを反故にしたことを意味しました。さらに、田岡は東亜同友会への参加を取りやめました。

その後、児玉誉士夫の東亜同友会構想は、各組織の対立によって立ち消えとなりました。特に、山口組と錦政会の対立は決定的となりました。

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