グリーンピース (NGO)

グリーンピースとは

グリーンピース（Greenpeace）は、世界39か国以上に拠点を置く、国際的な環境保護団体です。1971年にカナダで設立され、オランダのアムステルダムに国際本部を置いています。彼らは、「地球が多様性の中で生命を育む能力を確保する」ことを目標に掲げ、気候変動、森林破壊、乱獲、遺伝子工学、核問題など、地球規模の環境問題に取り組んでいます。

組織概要

グリーンピースは、設立当初からロビー活動、調査、直接行動を駆使して、環境保護活動を展開してきました。彼らは政府や企業からの資金援助を受けず、個人の寄付と財団からの支援によって運営されています。国際連合経済社会理事会の協議資格も持ち、非政府組織の透明性と説明責任を確保するためのINGO Accountability Charterを創設しています。

一方で、グリーンピースの活動はしばしば論争の的となります。過激な直接行動は「エコテロリスト」と批判されることもあり、遺伝子組み換え作物への反対運動や、一部の違法行為を含む活動は、多くの批判を浴びています。過去には、活動家が遺伝子組み換え小麦の試験場を破壊したり、ペルーの世界遺産であるナスカの地上絵に損傷を与えたりする事件も発生しており、その過激な行動が非難されています。

活動分野と主張

グリーンピースは、多岐にわたる環境問題に取り組んでいます。以下に主な活動分野と主張をまとめます。

海洋生態系問題

海洋生態系全体の問題に取り組んでいます。過剰漁獲、海洋汚染、気候変動による生態系の破壊、海洋保護区の設立などを訴えています。特に捕鯨問題では、近代捕鯨に反対する立場を示しており、生存捕鯨は認める姿勢を示しています。

オゾン層破壊

オゾン層を破壊する物質であるフロンの削減を求め、フロンを使わない冷蔵庫「グリーンフリーズ」の開発・普及を支援しました。この技術は、世界の冷蔵庫業界に大きな影響を与え、家庭用ノンフロン冷蔵庫普及の流れを作りました。

森林問題

森林伐採による生態系の破壊に警鐘を鳴らし、紙の原料となるパルプ材の森林管理問題や、希少樹種の貿易問題に取り組んでいます。

原子力問題

核兵器への反対運動を継続し、原子力発電の反対運動も展開しています。核廃棄物の海洋投棄を摘発したり、核燃料輸送船の追跡プロジェクトを行ったりしました。福島第一原発事故後には、福島県での放射能調査や原発再稼働問題にも取り組んでいます。

化学物質汚染問題

塩素系化合物などの化学物質による汚染問題に取り組み、衣料品ブランドに対し、サプライチェーンでの有害化学物質の使用状況の情報開示と、全廃を求めています。

気候変動・エネルギー問題

地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの温室効果ガス排出量の抑制を訴え、石炭火力発電の反対や再生可能エネルギーの普及を推進しています。

遺伝子組み換え作物への反対

遺伝子組み換え作物に反対する活動を行い、遺伝子組み換えトウモロコシの政治家事務所前での抗議行動や、遺伝子組み換え作物のサンプル盗難疑惑などが過去にあります。

持続可能な食と農業へのシフト

ネオニコチノイド系農薬の禁止を求め、化学農薬や合成肥料に頼らない「生態系農業」への転換を提唱しています。

共謀罪創設への反対

日本国内では、共謀罪関連法案に反対する活動を展開しています。

批判

資金問題

グリーンピースは、政府や企業からの資金援助を受けないとしていますが、その資金源や使途については、多くの批判があります。創設メンバーやジャーナリストからは、巨大な資金団体であることや、資金の不透明な使途、組織内部の意思決定プロセスに対する批判があります。

組織内部の意思決定

組織内部の意思決定プロセスが、一部の幹部に偏っており、一般メンバーの意見が反映されにくいという批判もあります。元幹部や会計責任者は、組織が民主主義的ではなく、ピラミッド構造になっていると指摘しています。

人種平等会議からの批判

人種平等会議(CORE)は、グリーンピースが発展途上国の発展を妨げていると批判しています。特に、遺伝子組み換え植物への反対や、DDTの使用禁止運動は、マラリア対策を妨げていると主張しています。

日本での批判

日本では、調査捕鯨に対する過激な抗議行動が「エコ[[テロリズム]]」と批判されています。また、中国が南シナ海で行っている人工島建設に対しては、抗議活動を行わないことに対して、矛盾していると批判されています。

世界での批判

広報活動に偏重し、パフォーマンスを重視するあまり、逆効果になっているという批判もあります。例えば、ナスカの地上絵に無断で侵入し、損傷を与えた事件は、その活動に対する批判を強めることになりました。

歴史

1971年: 核実験反対運動

グリーンピースは、1971年にアメリカの核実験に反対する運動から始まりました。「波を立てるな委員会」という組織が前身となり、「グリーンピース」という名前が生まれました。初期の活動では、核実験阻止のための直接行動が展開され、アメリカの核実験断念につながりました。

1972年: フランスの核実験に反対

1972年からは、フランスが南太平洋で行っていた核実験に反対する航海を企画しました。この抗議活動は、グリーンピースの「非暴力直接行動」の原点となり、フランス軍による暴行事件も発生しました。また、この時、高速ゴムボート（ゾディアック）を使った抗議活動が始まりました。

捕鯨問題への取り組み

1970年代後半から捕鯨問題に取り組み始めました。ポール・ワトソンが中心となり、捕鯨船への直接的な抗議活動が開始されました。しかし、ワトソンは後にグリーンピースを離れ、より過激な環境保護団体であるシーシェパードを設立しました。

レインボー・ウォーリア号事件

1985年には、フランスの核実験に反対する航海の準備中だったグリーンピースの船「レインボー・ウォーリア号」がフランス情報機関によって爆破され、乗組員が死亡する事件が発生しました。

1995年: フランス核実験への抗議行動

1995年にフランスが核実験を再開した際には、大規模な抗議活動が行われ、フランス政府に核実験の中止を確約させました。

日本との摩擦

1992年には、グリーンピースの船と日本の海上保安庁の巡視船が接触する事故が発生しました。2000年代以降は、日本の調査捕鯨船に対する抗議活動が激化し、衝突事件や活動家の転落事故などが相次ぎました。

グリーンピース・ジャパン

グリーンピースの日本事務所は1989年に設立されました。商業捕鯨には反対していますが、生存捕鯨は認める傾向にあります。日本国内では、企業へのアンケートや経済界へのキャンペーン、反原子力発電運動も行っています。

グリーンピース・ジャパンによる宅配便窃盗事件

2008年には、グリーンピース・ジャパンのメンバーが、捕鯨関係者の横領を告発するために、宅配便の荷物を窃盗した事件が発生しました。この事件により、グリーンピースの活動方法が批判され、窃盗罪で有罪判決を受けるメンバーも出ました。

まとめ

グリーンピースは、その積極的な活動を通じて、世界中の環境問題に対する関心を高めてきました。しかし、その過激な活動や資金源、組織運営に対する批判も根強く、賛否両論が渦巻いています。彼らの活動を評価する際には、その功績と同時に批判的な側面も考慮する必要があるでしょう。

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