グルブッディーン・ヘクマティヤール

グルブッディーン・ヘクマティヤールとは

グルブッディーン・ヘクマティヤール（Gulbuddin Hekmatyar）は、1949年8月1日生まれのアフガニスタンの政治家であり、軍閥ヘズベ・イスラーミー・アフガーネスターン（HIG、通称「ヘクマティヤール派」）の創設者です。パシュトゥーン人で、ギルザイ部族連合のハロチ部族に属し、クンドゥーズ州出身です。彼は複数の言語を操り、4人の妻と多数の子を持つことでも知られています。

生い立ちと政治活動の開始

ヘクマティヤールは、クンドゥーズの有力な部族長ゴラム・セルワール・ナシェールの援助を受け、カーブルの軍事学校を経てカーブル大学工学部に進学しました。この頃から「エンジニア・ヘクマティヤール」と呼ばれるようになります。しかし、在学中にイスラム原理主義に傾倒し、反ソ連、反ダーウードの政治運動に身を投じ、パキスタンに亡命しました。

ヘズベ・イスラーミーの結成と対ソ連戦

1975年、パキスタンでヘズベ・イスラーミー・アフガーネスターンを結成。対ソ連戦で活躍し、パキスタンで多くの学校を建設したことで名を知られるようになります。当時のパキスタンの指導者ズィヤー・ウル・ハック将軍の支持も得て、反ソ連戦で精力的に活動しました。この戦いで何度も負傷し、多くの家族を失いましたが、パキスタンのアフガニスタン難民の権利保護にも尽力しました。

ソ連のアフガニスタン侵攻と内戦

ソ連のアフガニスタン侵攻時、ヘクマティヤールはISI（パキスタン軍統合情報局）やCIAからの資金援助を受け、ムジャーヒディーンを率いて戦いました。しかし、ソ連撤退後のアフガニスタンでの主導権を握ろうと、他の勢力との対立を深めました。1976年には、アフマド・シャー・マスードのスパイ容疑による逮捕を画策したともされています。

ヘクマティヤール派は、アフガニスタン国内のほぼ全ての勢力と争ったり、結んだりを繰り返しました。パキスタンとサウジアラビアから強力な支援を受け、多くの外国人ムジャーヒディーンを受け入れました。1992年にはマスードとの和平合意によって首相に就任しましたが、すぐに合意は破綻。その後、同盟関係を変化させながら、カーブルを巡る激しい戦闘を繰り返しました。1992年から1996年の内戦では、カーブルの大部分が破壊され、多くの民間人を含む5万人以上が死亡しました。1996年にヘクマティヤールは再び首相に就任しますが、数ヶ月後にはターリバーンがカーブルを制圧し、ヘクマティヤールはイランに亡命しました。

アメリカ同時多発テロ事件以後の活動

2001年のアメリカのアフガニスタン侵攻に反対し、アメリカを支援するパキスタンを非難しました。ターリバーン政権崩壊後も、国際連合が仲介した和平合意を拒否しました。2002年にはイランから追放され、その後の動向は不明確です。アメリカは、ヘクマティヤールがターリバーンを支援していると非難し、アメリカ軍兵士の殺害に報奨金を拠出しているとも指摘しました。また、カルザイ大統領暗殺未遂事件に関与した疑いもかけられています。

2002年5月には、CIAがヘクマティヤールを狙撃したが失敗に終わりました。その後、アメリカに対するジハードを呼びかけるメッセージを公開するなど、反米姿勢を鮮明にしました。2006年には、ウサーマ・ビン＝ラーディンの側に立って戦う用意があることを表明しました。また、2007年には、ウサーマ・ビン＝ラーディンがトラボラの山岳地帯から脱出するのを手助けしたと発言しました。

2019年にはアフガニスタン大統領選挙に出馬しましたが、2021年には再びターリバーン政権が樹立しました。2022年12月には、ヘクマティヤールが滞在していたカーブルのモスク付近で爆発事件が発生し、護衛が死亡するなどの被害が出ました。

まとめ

グルブッディーン・ヘクマティヤールは、アフガニスタンの激動の歴史の中で、常に重要な役割を果たしてきた人物です。その生涯は、政治的野心、イデオロギー、そして紛争に深く関わっています。彼の活動は、アフガニスタンの近現代史を理解する上で不可欠な要素と言えるでしょう。

もう一度検索