クンドゥーズ州

クンドゥーズ州：歴史と地理が織りなすアフガニスタンの要衝

クンドゥーズ州は、アフガニスタン北東部に位置する州で、面積は約8,081平方キロメートル、人口は約95万人を擁します。州都はクンドゥーズ市で、古くから交通の要衝として栄えてきました。この地域は、豊かな自然と歴史的な背景を持ち合わせています。

地理

クンドゥーズ州の北部には、パンジ川が東から流れ込み、広大なオアシスを形成しています。このオアシス地帯は、タジキスタンへと続いており、肥沃な土地は農業を支えています。パンジ川はタジキスタンのヴァクシュ川と合流し、中央アジアの大河であるアムダリヤ川となります。一方で、州の南部はトルクメニスタンのカラクム砂漠から続く荒野となっており、カラ・バトゥール山脈やクリワジャ・タウ山脈などの山脈が連なっています。これらの山脈はヒンドゥークシュ山脈からアムダリヤ川に向かって北西に伸びる支脈であり、支脈と支脈の間には盆地が広がっています。中央の最も広い盆地には、南からクンドゥーズ川、東からはハーナーバード川が流れ込み、州都クンドゥーズの付近で合流し、オアシスを形成しながらアムダリヤ川へと注ぎます。

歴史

クンドゥーズ州の歴史は、19世紀末の第二次アフガン戦争後に大きく動きます。1896年、アブドゥッラフマーン・ハーン王は、ギルザイ部族連合のシール・ハーン・ナセルを北部地域に強制移住させました。ナセルはクンドゥーズの街やシルハン・バンダル港を建設し、スピンザー・コットン・カンパニーを創業し、この地域を発展させました。

1921年の第三次アフガン戦争での独立後、1933年にザーヒル・シャーが国王に即位し、スピンザー・コットン・カンパニーは製綿や製陶業を開始しました。この会社は成功を収め、ゴラム・セルワール・ナセルの時代には2万人の従業員を抱える大企業となり、地域の発展を牽引しました。

冷戦時代には、1950年代にはカタガン州の一部でしたが、1958年から1964年頃に独立した州となりました。1973年のクーデターで王政が倒れ、アフガニスタン共和国が成立し、スピンザー・コットン・カンパニーは国有化されました。1978年の軍部クーデターによりアフガニスタン民主共和国が成立し、土地改革をめぐって内戦が勃発。ソ連の軍事介入を招き、アフガニスタン紛争が始まりました。

冷戦終結後、1992年にはムジャーヒディーンが政権を倒しましたが、内紛が激化しました。1993年頃にはアブドゥル・ラスル・サイヤフの影響下にあり、地元豪族が勢力争いを展開しました。1990年代のタジキスタン内戦では、クンドゥーズ州に多くの難民が流入しました。1997年にはターリバーンがクンドゥーズを占領し、その後のアメリカ同時多発テロ事件後の2001年、アメリカ軍の侵攻によってターリバーンは一時的に退却しました。

2004年以降は、大統領選挙が行われましたが、2009年にはドイツ軍の空爆事件が発生し、国際的な注目を集めました。2010年には日本人ジャーナリストの誘拐事件も発生しています。2014年以降、ターリバーンの攻勢が再び強まり、2015年には州都クンドゥーズが一時的に占領されました。

2020年にはアフガニスタン政府とターリバーンの和平交渉が始まりましたが、ターリバーンは攻撃を継続。2021年には、州都周辺の郡がターリバーンに占領され、国境の港も失陥。アフガニスタン軍の一部が国境を越えてタジキスタンに逃れる事態となりました。最終的に8月にはクンドゥーズ市もターリバーンに占拠されました。

行政区分

クンドゥーズ州は、1市6郡で構成されています。州都クンドゥーズの他、イマーム・サーヒブ郡、アルチー郡などが人口が多い地域です。主要な都市には、クンドゥーズ、カーン・アバード、イマーム・サヒーブなどがあります。

アリーアーバード郡
アルチー郡
チャハール・ダラ郡
イマーム・サーヒブ郡
ハーナーバード郡
クンドゥーズ（州都）
カライ・ザール郡

特にイマーム・サーヒブ郡は州内で2番目に人口が多く、パンジ川沿いの肥沃な土地が特徴です。一方、チャハール・ダラ郡は、クンドゥーズ川沿いのオアシスと荒野が広がる地域で、治安が不安定な地域でもあります。

産業

クンドゥーズ州は、農業が盛んで、小麦、米、綿花の生産量は国内でも上位に位置します。また、桃の栽培も盛んです。鉱業では、天青石の鉱脈が発見されています。

住民

クンドゥーズ州の住民は、パシュトゥーン人、タジク人が多数派ですが、ウズベク人、ハザーラ人、トルクメン人なども居住しています。主な部族としては、アイマーク人、Sujani族、Sadaat族、シーク・アリ族、イスマーイール派、Omarkhil族、Ibrahimkhil族、Amadzaee族、カルルク族、Toghli族、アラブ人、クチ族、バローチ人などが挙げられます。

主要言語はパシュトゥー語、ダリー語、ウズベク語です。識字率は20%と低く、教育の向上が課題となっています。

主な出身者

グルブッディーン・ヘクマティヤール - 政治家、ムジャーヒディーン、アフガニスタンの首相
* アブドゥル・ラティフ・イブラヒミ - 前州知事、現タハール州知事

クンドゥーズ州は、肥沃な土地と戦略的な地理条件を持つ一方で、歴史的に多くの紛争を経験してきました。現代においても、治安情勢は依然として不安定であり、復興に向けた課題が山積しています。

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