グレイ (単位)

グレイ（記号：Gy）は、放射線が物質に与えるエネルギー量を表す国際単位系（SI）の組立単位です。具体的には、放射線が1kgの物質に1ジュールのエネルギーを与えたときの吸収線量を1グレイと定義します。この単位は、吸収線量だけでなく、間接電離放射線によって放出される荷電粒子の運動エネルギーを表すカーマの単位としても用いられます。

定義

吸収線量の単位

吸収線量とは、放射線が物質に吸収されたエネルギーの量を表す指標です。1グレイは、1キログラムの物質が放射線によって1ジュールのエネルギーを吸収した状態を指します。数式で表すと、1 Gy = 1 J/kgとなります。これは、放射線が人体や他の物体に与える影響を定量的に評価する上で重要な概念です。

カーマの単位

カーマは、間接電離放射線が物質に与えるエネルギーを、直接放出される荷電粒子の初期運動エネルギーの和で表したものです。1グレイは、1キログラムの物質に間接電離放射線が照射された際に、放出される全荷電粒子の初期運動エネルギーの和が1ジュールに相当する場合を指します。カーマは、特に放射線が物質と相互作用する際の初期段階におけるエネルギー付与を評価するために用いられます。

単位の変遷とラド

以前は、吸収線量の単位としてラド（記号：rad）が広く用いられていました。しかし、1ラドは0.01グレイであり、SI単位系との整合性が取れないことから、現在ではグレイが国際的に標準的な単位として採用されています。ラドは計量法では法定[[計量単位]]として認められていますが、国際的には使用が推奨されていません。アメリカ国立標準技術研究所（NIST）も、ラド、キュリー、レントゲン、レムといった非SI単位の使用を避けるように強く勧告しています。

語源

グレイという単位名は、放射線生物学における先駆者であるルイス・ハロルド・グレイ（1905-1965）の功績を記念して、1975年に命名されました。グレイは、放射線が物質に与えるエネルギーを定量化する上で重要な貢献をしました。彼の研究は、放射線治療や放射線防護の基礎を築く上で不可欠なものでした。

Unicodeにおける表記

グレイを表す文字はUnicodeにも収録されていますが、これはCJK互換用文字であり、既存の文字コードとの後方互換性を保つためのものです。したがって、グレイを表記する際は、通常のアルファベットの「Gy」を使用することが推奨されます。

医療分野での応用

医療現場では、グレイは放射線治療における被曝線量を評価する上で不可欠な単位です。臓器吸収線量の単位として用いられ、患者が受ける放射線量を正確に把握し、治療計画を最適化するために利用されます。放射線治療は、がん細胞を破壊するために高エネルギーの放射線を使用するため、グレイ単位による正確な線量管理が非常に重要です。

その他の関連単位

放射線に関連する単位として、シーベルトがあります。シーベルトは、放射線が人体に与える生物学的影響を考慮した線量当量を示す単位であり、グレイで表される吸収線量とは異なる概念です。線量当量では、放射線の種類やエネルギーによって異なる生物学的効果を考慮に入れます。

まとめ

グレイは、放射線が物質に与えるエネルギー量を表す基本単位であり、医療、産業、研究分野において幅広く活用されています。この単位の導入により、放射線量の評価がより正確かつ国際的に統一されたものとなり、放射線利用の安全性向上に大きく貢献しています。

もう一度検索