グレイヴ・アクセント
グレイヴ・アクセント（`、◌̀）は、主にラテン文字を使用する言語の表記に用いられるアクセント符号であり、ダイアクリティカルマーク（発音区別符号）の一種です。抑音符、抑音符号、重アクセント、低アクセント、鈍アクセントとも呼ばれることがあります。
各言語における用法
ラテン・アルファベット
ポルトガル語:
「à」のみが使用され、2つの「a」の縮約を表します。
フランス語:
「accent grave」（アクサン・グラーヴ）と呼ばれ、「à」、「è」、「ù」が存在します。「è」は広い[ɛ]の音を表すほか、同音異義語の区別にも使用されます。「à」、「ù」は同音異義語を区別するために使用されます（例：ou「または」とoù「どこ」）。
カタルーニャ語:
「à」、「è」、「ò」が使用され、強勢の位置を表します。「è」、「ò」は広い[ɛ]、[ɔ]の音を表し、狭い[e]、[o]を表す「é」、「ó」と対立します。「à」に関してはグレイヴ・アクセントのみが使用されます。
イタリア語:
「accento grave」（アッチェント・グラーヴェ）と呼ばれ、最後の音節に強勢があることを示したり（例：caffè「コーヒー」）、同音異義語を区別するために用いられます（例：li「彼らを」に対するlì「そこ」）。ただし、付号する母音が狭い「e」や「o」（広めの[ɛ]や[ɔ]ではない[e]や[o]）であるいくつかの語については、「accento acuto」（アッチェント・アクート、アキュート・アクセントのこと）を用います。
ウェールズ語:
母音が短いことを表します。「à」、「è」、「ì」、「ò」、「ù」、「ẁ」、「ỳ」が存在します。
セルビア・クロアチア語:
「à」、「è」、「ì」、「ò」、「r̀」、「ù」が上昇調短母音を表すために使われることがあります。正書法上はアクセントは付加されません。キリル・アルファベットでも使われますが、Unicodeの合成済み文字はラテン・アルファベットのもののみが定義されています。
スロベニア語:
「è」が上昇調短母音を表すために使われることがあります。正書法上はアクセントは付加されません。
リトアニア語:
正書法上は使用しません。基本的には辞書や学習書・研究書等でアクセントを持つ短い音節を表すのに用いられます（例：žmogùs「人間」）。また、アクセント記号なしではあいまいになる語を区別する目的で使用される場合もあります。なお、「il」、「im」、「in」、「ir」、「ul」、「um」、「un」、「ur」が他の子音の前にある場合は例外的に下降アクセント（通常はアキュートを使用）を表します（例：gìnti「防衛する」）。
ラトビア語:
正書法上は使用しません。下降調の声調を表す声調記号として学術書で用いられます。
ベトナム語:
フイェンという声調を示す声調記号です。「à」、「ầ」、「ằ」、「è」、「ề」、「ì」、「ò」、「ồ」、「ờ」、「ù」、「ừ」、「ỳ」が存在します。
中国語
拼音・注音で、第四声（去声）を示す声調記号として用いられます。拼音には「à」、「è」、「ề」、「ì」、「m̀」、「ǹ」、「ò」、「ù」、「ǜ」が存在します（例:sì）。
キリル・アルファベット
ブルガリア語・マケドニア語:
代名詞の女性単数与格が「ѝ」と書かれることがあります。これは「…と」を意味する「и」と区別するためです。
ギリシャ・アルファベット
ギリシャ語は古典時代には高低アクセントを持ち、伝統的にグレイヴ・アクセント（ギリシア語: βαρεία ヴァリア）で低い音を表しました。現代ギリシャ語では用いられていません。
音声記号
国際音声記号でも声調記号として用いられますが、中国語拼音表記のグレイヴ・アクセント（第四声）が下降調を示すのとは異なり、低平調を示します。低平調を示すグレイヴ・アクセントの用法は越南語国語（クオックグー）表記の声玄（thanh huyền = 陰平、平声低）と同じです。アメリカの言語学界では、音声記号として声調だけでなく、第2強勢を示すのにも用いられることがあります。日本語で発行されている英語の辞書や教科書などでも、第2強勢を示す場合が多く、音声記号や英語での単語表記と組み合わせて用いられます。なお、国際音声記号では第2強勢を示す記号は[ˌ]です。
コンピュータ
ASCIIでは、6016がグレイヴ・アクセントであり、UnicodeではU+0060です。この符号位置は特に、伝統的に開きシングルクォーテーションマークが無かったため、コンピュータ上で代用として多用されています。そのため、バッククォート（back quote）や、英語ではbacktickとも呼ばれます。
いくつかのシェルスクリプトやPerlなどでは、「`……`」と文字列を囲むと、文字列をコマンドとして実行し、実行結果の標準出力を文字列として返します。
LISP系の言語では、quasiquoteという機能に使われます。通常のquoteではその内側は全て評価しませんが、quasiquoteではその内側でコンマを前置した要素だけは評価されます。例えば、「 `(a ,b) 」は、「 (list 'a b) 」と同じです。主にマクロの構文を読みやすくするのに用いられます。
Markdownなど、いくつかの軽量マークアップ言語では、コードをバッククォートで囲みます。
「' (U+0027 アポストロフィ)」とのセット「`……'」がシングルクォーテーションマーク「‘……’」の代用として使われます。また、「``（グレイヴ2つ）」を「" (U+0022 クォーテーションマーク)」またはアポストロフィ2つと組み合わせた「``……"」・「``……''」がダブルクォーテーションマーク「“……”」の代用として使われます。TeXではソースに「`」や「``」を書くと引用符に変換されます。
いずれも正規の開きシングル/ダブルクォーテーションマークを使える環境では好ましい用法ではありませんが、歴史的理由から現在でも多用されています。
各言語における用法
ラテン・アルファベット
ポルトガル語:
「à」のみが使用され、2つの「a」の縮約を表します。
フランス語:
「accent grave」（アクサン・グラーヴ）と呼ばれ、「à」、「è」、「ù」が存在します。「è」は広い[ɛ]の音を表すほか、同音異義語の区別にも使用されます。「à」、「ù」は同音異義語を区別するために使用されます（例：ou「または」とoù「どこ」）。
カタルーニャ語:
「à」、「è」、「ò」が使用され、強勢の位置を表します。「è」、「ò」は広い[ɛ]、[ɔ]の音を表し、狭い[e]、[o]を表す「é」、「ó」と対立します。「à」に関してはグレイヴ・アクセントのみが使用されます。
イタリア語:
「accento grave」（アッチェント・グラーヴェ）と呼ばれ、最後の音節に強勢があることを示したり（例：caffè「コーヒー」）、同音異義語を区別するために用いられます（例：li「彼らを」に対するlì「そこ」）。ただし、付号する母音が狭い「e」や「o」（広めの[ɛ]や[ɔ]ではない[e]や[o]）であるいくつかの語については、「accento acuto」（アッチェント・アクート、アキュート・アクセントのこと）を用います。
ウェールズ語:
母音が短いことを表します。「à」、「è」、「ì」、「ò」、「ù」、「ẁ」、「ỳ」が存在します。
セルビア・クロアチア語:
「à」、「è」、「ì」、「ò」、「r̀」、「ù」が上昇調短母音を表すために使われることがあります。正書法上はアクセントは付加されません。キリル・アルファベットでも使われますが、Unicodeの合成済み文字はラテン・アルファベットのもののみが定義されています。
スロベニア語:
「è」が上昇調短母音を表すために使われることがあります。正書法上はアクセントは付加されません。
リトアニア語:
正書法上は使用しません。基本的には辞書や学習書・研究書等でアクセントを持つ短い音節を表すのに用いられます（例：žmogùs「人間」）。また、アクセント記号なしではあいまいになる語を区別する目的で使用される場合もあります。なお、「il」、「im」、「in」、「ir」、「ul」、「um」、「un」、「ur」が他の子音の前にある場合は例外的に下降アクセント（通常はアキュートを使用）を表します（例：gìnti「防衛する」）。
ラトビア語:
正書法上は使用しません。下降調の声調を表す声調記号として学術書で用いられます。
ベトナム語:
フイェンという声調を示す声調記号です。「à」、「ầ」、「ằ」、「è」、「ề」、「ì」、「ò」、「ồ」、「ờ」、「ù」、「ừ」、「ỳ」が存在します。
中国語
拼音・注音で、第四声（去声）を示す声調記号として用いられます。拼音には「à」、「è」、「ề」、「ì」、「m̀」、「ǹ」、「ò」、「ù」、「ǜ」が存在します（例:sì）。
キリル・アルファベット
ブルガリア語・マケドニア語:
代名詞の女性単数与格が「ѝ」と書かれることがあります。これは「…と」を意味する「и」と区別するためです。
ギリシャ・アルファベット
ギリシャ語は古典時代には高低アクセントを持ち、伝統的にグレイヴ・アクセント（ギリシア語: βαρεία ヴァリア）で低い音を表しました。現代ギリシャ語では用いられていません。
音声記号
国際音声記号でも声調記号として用いられますが、中国語拼音表記のグレイヴ・アクセント（第四声）が下降調を示すのとは異なり、低平調を示します。低平調を示すグレイヴ・アクセントの用法は越南語国語（クオックグー）表記の声玄（thanh huyền = 陰平、平声低）と同じです。アメリカの言語学界では、音声記号として声調だけでなく、第2強勢を示すのにも用いられることがあります。日本語で発行されている英語の辞書や教科書などでも、第2強勢を示す場合が多く、音声記号や英語での単語表記と組み合わせて用いられます。なお、国際音声記号では第2強勢を示す記号は[ˌ]です。
コンピュータ
ASCIIでは、6016がグレイヴ・アクセントであり、UnicodeではU+0060です。この符号位置は特に、伝統的に開きシングルクォーテーションマークが無かったため、コンピュータ上で代用として多用されています。そのため、バッククォート（back quote）や、英語ではbacktickとも呼ばれます。
いくつかのシェルスクリプトやPerlなどでは、「`……`」と文字列を囲むと、文字列をコマンドとして実行し、実行結果の標準出力を文字列として返します。
LISP系の言語では、quasiquoteという機能に使われます。通常のquoteではその内側は全て評価しませんが、quasiquoteではその内側でコンマを前置した要素だけは評価されます。例えば、「 `(a ,b) 」は、「 (list 'a b) 」と同じです。主にマクロの構文を読みやすくするのに用いられます。
Markdownなど、いくつかの軽量マークアップ言語では、コードをバッククォートで囲みます。
「' (U+0027 アポストロフィ)」とのセット「`……'」がシングルクォーテーションマーク「‘……’」の代用として使われます。また、「``（グレイヴ2つ）」を「" (U+0022 クォーテーションマーク)」またはアポストロフィ2つと組み合わせた「``……"」・「``……''」がダブルクォーテーションマーク「“……”」の代用として使われます。TeXではソースに「`」や「``」を書くと引用符に変換されます。
いずれも正規の開きシングル/ダブルクォーテーションマークを使える環境では好ましい用法ではありませんが、歴史的理由から現在でも多用されています。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。