シカゴ・バーリントン・アンド・クインシー鉄道

シカゴ・バーリントン・アンド・クインシー鉄道：アメリカ中西部の歴史を刻んだ鉄道

シカゴ・バーリントン・アンド・クインシー鉄道（Chicago, Burlington and Quincy Railroad、略称CBQ、CB&Q）は、アメリカ合衆国を代表する一級鉄道として、19世紀半ばから20世紀半ばにかけて長く活躍しました。通称バーリントン鉄道として知られ、その歴史はシカゴとオーロラ間の路線開設から始まります。

発展と全盛期

1840年代の創業以来、バーリントンやクインシーといった都市への路線を次々と開通させ、農産物輸送の中核を担うことで急速に発展しました。全盛期には、イリノイ州、アイオワ州、ミズーリ州をはじめ、コロラド州、モンタナ州、ネブラスカ州、ウィスコンシン州、ワイオミング州へと路線網を広げ、シカゴ、ミネアポリス、セントポール、セントルイス、カンザスシティ、デンバーといった主要都市を結ぶ重要な交通路を形成しました。

CB&Qの経営はきわめて安定しており、1862年には配当を実施した唯一の一級鉄道会社であり、その後も債務不履行に陥ることはありませんでした。堅実な経営手腕がその成功を支えたと言えるでしょう。

バーリントン・ノーザン鉄道への合併

1970年3月2日、CB&Qはグレート・ノーザン鉄道、ノーザン・パシフィック鉄道、スポケーン・ポートランド・アンド・シアトル鉄道と合併し、バーリントン・ノーザン鉄道（BN）となりました。その後、バーリントン・ノーザン鉄道はアッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道と合併、現在のBNSF鉄道へとつながっています。BNSF鉄道は現在もアメリカ大陸横断貨物輸送の中心を担う主要な鉄道会社として、その歴史を継承しています。

軽量高速列車「ゼファー」の登場

大恐慌の真っ只中であった1934年、CB&Qは自動車の普及による旅客数の減少に対抗するため、画期的な軽量ディーゼル動車「パイオニア・ゼファー」を開発しました。バッド社が製造したこの列車は、ステンレス製の車体を採用した3車体連接構造で、従来の大型客車1両分の重量しかありませんでした。全長60メートルにもかかわらず、軽量化を実現したことで高速運転が可能になり、座席定員72名に加え、ビュッフェや郵便荷物室を備えていました。

特に特徴的だったのは、先頭部の「ショベルノーズ」と呼ばれる独特の流線形です。600馬力のディーゼルエンジンを搭載し、表定時速60マイル（約96km/h）以上の高速運転を可能としていました。1934年5月26日には、デンバーからシカゴまでの長距離テスト走行を行い、平均時速124km/hで走りきるという驚異的な結果を残しました。その高速性と優れた燃費は、鉄道業界に大きな衝撃を与えました。

パイオニア・ゼファーの成功を受け、CB&Qは同型車両を増備し、路線の主要列車を「ゼファー」に置き換えていきました。その後、機関出力の増強や編成の拡大などが行われましたが、寝台車や食堂車を連結した豪華な列車として発展しました。1971年にアムトラックによる旅客運行開始後も、カリフォルニア・ゼファーなど一部の列車はアムトラックに引き継がれ、その名称が現在も残されています。パイオニア・ゼファー自身は1960年まで営業運転を行い、現在はシカゴの科学産業博物館で保存されています。

日本への影響

「ゼファー」は、日本の鉄道車両技術にも大きな影響を与えました。特に南満州鉄道は、新型高速列車の開発において「ゼファー」の軽量構造や流線形デザインを参考にしています。「あじあ」号などにその影響が見られます。また、カリフォルニア・ゼファーの二階建て構造は近畿日本鉄道のビスタカーのデザインに、ディーゼル機関車のカラーリングは山陽電気鉄道のアルミカーのデザインに影響を与えたとされています。

主要な列車

CB&Qは「ゼファー」の名称を冠した多くの列車を運行していました。そのほかにも、自社路線のみの運行列車や、他社との乗り入れ列車など、多くの列車が運行されていました。

まとめ

シカゴ・バーリントン・アンド・クインシー鉄道は、アメリカ中西部の発展に大きく貢献した鉄道会社であり、「ゼファー」は鉄道史における重要な技術革新の象徴として、今も記憶されています。その歴史と技術的功績は、現代の鉄道産業に大きな影響を与え続けています。

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