グレート草津

グレート草津：ラグビーとプロレスの狭間で生きた男

グレート草津（本名：草津正武）は、1942年2月13日生まれ、2008年6月21日没の日本のプロレスラー、元ラグビー選手である。熊本工業高校、八幡製鐵所とラグビー選手として活躍し、恵まれた体格とスピードを武器に日本代表にも選出された。大学進学の道もあったが、高校の恩師の説得により八幡製鐵へ入社。同僚には宮井国夫や土屋俊明といった名選手がおり、黄金時代を築いた。1963年には日本代表としてブリティッシュコロンビア州戦に出場、国際的な舞台も経験した。八幡製鐵退社は、上司との確執が原因とされている。

ラグビー選手としての輝かしい経歴とは対照的に、プロレスラーとしての彼のキャリアは、成功と挫折が複雑に絡み合ったものだった。1965年7月30日、日本プロレスに入団。豊登から「草津清正」というリングネームを与えられ、ジャイアント馬場の付き人を務めた。しかし、わずか数試合の出場で日本プロレスを退団。練習嫌いであったため、練習にはあまり参加していなかったという証言もある。

その後、国際プロレスに参加、北米へ武者修行に出発した。フロリダでは「タキ・ヤマグチ」、バンクーバーでは「ビッグ・クー」のリングネームを使い、エディ・グラハムやアブドーラ・ザ・ブッチャーといった名レスラーと対戦した。帰国後、1968年1月3日、TBSの『TWWA[[プロレス中継]]』初回のメインイベントでルー・テーズのTWWA世界ヘビー級選手権に挑戦。しかし、テーズのバックドロップで失神、試合を放棄する事態となり、「草津バックドロップ失神事件」と呼ばれる出来事となった。この出来事は、グレート草津のキャリアのみならず、国際プロレスの運命をも大きく左右したと言われる。TBSの期待を裏切ったこの試合は、新間寿氏からも批判された。テーズ自身も草津の実力不足を指摘し、TBSからの要求に反発して、わざと草津を負かしたとも語っている。草津自身は、セコンドの指示に従って試合を放棄したと説明している。

テーズ戦後も、国際プロレスの中心レスラーとして活躍。1968年4月8日には英国西部ヘビー級王座を獲得、以降、1969年9月まで防衛を続けた。英国南部ヘビー級王座も獲得し、二冠王者に輝いた。IWA世界ヘビー級王座への挑戦も果たしているが、戴冠はならなかった。数々のタッグチームを組んでIWA世界タッグ王座を獲得、モンスター・ロシモフ&マイケル・ネイダー、ディック・ザ・ブルーザー&クラッシャー・リソワスキーといった強豪チームと激闘を繰り広げた。アメリカ遠征ではAWA中西部ヘビー級王座を獲得。バーン・ガニアのAWA世界ヘビー級王座にも挑戦した。デスマッチにも挑戦、金網デスマッチやテキサス・チェーン・デスマッチなどで活躍し、「チェーン・デスマッチの鬼」と呼ばれた時期もあった。

しかし、国際プロレスで単独エースになることはなく、小林や木村といったトップ選手を支える役割が主だった。ジャイアント馬場ともタッグを組んで対戦し、1972年と1974年に共闘した。1975年には全日本プロレス主催のオープン選手権、1977年には世界オープンタッグ選手権に出場した。1979年以降は徐々に第一線を退き、1980年7月9日の試合中に大怪我を負って長期欠場。その後は営業責任者となり、現場を離れた。翌1981年8月、国際プロレスが活動停止し、グレート草津は引退した。

引退後は静岡県三島市に住み、湯沸かし器製造会社や健康食品会社の営業担当取締役として活躍した。2007年5月、食道がんのため入院。肺などにも転移し、2008年6月21日、多臓器不全のため66歳で死去した。

グレート草津は、ラグビーとプロレスという異なる世界で活躍した、稀有な存在だった。彼のキャリアは、成功と挫折、栄光と苦悩が複雑に絡み合った、ドラマチックな物語である。数々のエピソードは、プロレス界の伝説として語り継がれている。また、ストロング小林との確執や、大酒飲みで知られた彼の人物像も、多くの関係者によって伝えられている。

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