グロス・モーン国立公園

グロス・モーン国立公園：地球の歴史と自然の驚異が織りなす絶景

カナダ、ニューファンドランド島の西部に位置するグロス・モーン国立公園は、その独特な地形と美しい景観から、1987年にユネスコ世界遺産（自然遺産）に登録されました。1,805平方キロメートルに及ぶ広大な敷地は、アトランティック・カナダで2番目の大きさを誇り、地球の歴史を物語る貴重な地質学的特徴と、多様な動植物が生息する豊かな生態系を有しています。

象徴的な山と地形

公園の名前の由来となったグロス・モーン山は、標高806メートルでニューファンドランド島で2番目に高い山です。フランス語で「孤立した大きな山」を意味するこの山は、アパラチア山脈の一部であり、公園のシンボルとしてそびえ立っています。

グロス・モーン国立公園の最も特徴的な地形の一つは、プレートテクトニクスの影響によって形成された特異な地質構造です。この地域では、海洋地殻が陸地の上に乗り上げたことで、通常は地下深くに存在するはずのマントル起源の岩石が地表に露出しています。さらに、オルドビス紀の海底堆積物や先カンブリア時代の花崗岩、古生代の火成岩など、多様な岩石が観察できます。

氷河が刻んだフィヨルドとテーブルランド

公園内には、氷河の侵食によって形成された美しいフィヨルド、ウェスタン・ブルック池があります。氷河が解けた後、陸塊が隆起し、フィヨルドが淡水湖になったという独特の形成過程を経ており、その水質は非常に純粋です。この湖には、北アメリカ大陸東部で最も高い滝であるピッシング・メア滝が流れ込んでいます。

一方、トラウトリバーとウッディーポイントの間には、テーブルランドと呼ばれる不毛の台地が広がっています。この地域は、地下のマントルを構成するかんらん岩が露出しており、植物が生育するために必要な養分を欠いているため、荒涼とした景観が広がっています。かんらん岩はマグネシウムや重金属を多く含むため、植物にとって有害であり、その表面は鉄分によって赤茶色に染まっています。

多様な生態系

海岸線沿いには、強い海風や嵐の影響でねじ曲がったトウヒやバルサムモミの森が広がっています。また、公園内にはカナダオオヤマネコ、アメリカグマ、トナカイ、ホッキョクウサギ、テン、アカギツネ、ハクトウワシ、ライチョウなどの野生動物が生息しています。沖合や湾内では、シノリガモなどの海鳥やミンククジラなどの海洋生物も観察できます。近年、ヘラジカが外来種として増加傾向にあります。

テーブルランドの不毛な地域では、食虫植物が特筆すべき存在です。特にピッチャープラントは、葉がウツボカズラのように変形し、中に液体を溜めています。花に誘われて葉の中に落ちた昆虫は、植物の栄養源として利用されます。

世界遺産としての価値

グロス・モーン国立公園は、その自然美と地質学的な重要性から、以下の2つの登録基準を満たし、世界遺産に登録されました。

(7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
(8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。

グロス・モーン国立公園は、地球のダイナミックな歴史と、そこで育まれる多様な生態系を同時に体験できる、他に類を見ない場所です。その壮大な景観と豊かな自然は、訪れる人々を魅了し続けています。

参考文献

Gros Morne: A Cultural History
Park web site
Gros Morne National Park at UNESCO.org
Park webpage at Worldheritagesite.org
* Woody Point - Town in Gros Morne

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