ケノーシャ (ウィスコンシン州)

ケノーシャ：シカゴとミルウォーキーに抱かれた都市

ウィスコンシン州南東部に位置するケノーシャ市は、アメリカ合衆国屈指の二大都市、シカゴとミルウォーキーのほぼ中間に位置する人口約10万人の都市です。シカゴからは北へ約85km、ミルウォーキーからは南へ約55kmという距離感から、両都市圏の利便性を享受できる立地が大きな特徴となっています。

ケノーシャの歴史：先住民から自動車産業都市へ

ケノーシャの歴史は古く、最終氷期にはすでに人類が居住していたと考えられています。少なくとも1万3500年前にはパレオ・インディアンが、その後はポタワトミ族やオジブワ族といったネイティブ・アメリカンが、この地を「パイク（マスキーパイカー）の地」と呼び、生活を営んでいました。ヨーロッパ人がこの地に入植したのは1830年代初頭。ジョン・ブレン・ジュニア率いる入植者たちは、1835年にパイク・クリークのほとりに定住し、やがてこの地はパイク、そしてサウスポートと名前を変えながら発展していきます。1850年に正式な自治体となり、現在のケノーシャという名になりました。

20世紀に入ると、イタリア系、アイルランド系、ポーランド系、ドイツ系移民が多数流入し、ケノーシャの建設や文化の発展に大きく貢献します。特に、20世紀初頭から1980年代半ばまでは、自動車産業がケノーシャ経済を支えました。トマス・B・ジェフリー・カンパニーによるランブラーの大量生産開始から始まり、ナッシュ・モーターズ、アメリカン・モーターズ・コーポレーション（AMC）と発展を遂げますが、1987年にAMCがクライスラーに売却され、ケノーシャ工場は閉鎖。86年に及ぶ自動車産業の歴史に幕を閉じました。その後、工場跡地はハーバー・パークとして再開発され、現在ではコンドミニアムやヨットハーバーが建ち並ぶ観光地となっています。

2020年には、警察官による黒人男性への銃撃事件が発生し、社会問題へと発展。大規模な抗議デモや暴動が発生するなど、ケノーシャ市は大きな転換期を迎えたと言えるでしょう。

地理と気候：ミシガン湖に面した都市

ケノーシャはミシガン湖に面し、総面積は約62.1km²です。五大湖地方特有の気候で、寒さの厳しい冬と涼しい夏が特徴です。7月の平均気温は約21℃、1月の平均気温は約-7℃と、年間を通して気温差が大きいため、季節ごとの変化を体感できます。降水量は夏季に多く、冬季は乾燥傾向です。ケッペンの気候区分では亜寒帯湿潤気候（Dfb）に属します。

政治と経済：シカゴ都市圏に含まれる郊外都市

ケノーシャ市の行政は、市長とシティ・アドミニストレータ、そして17人の議員からなる市議会によって運営されています。連邦議会下院議員選挙区は、ウィスコンシン第1選挙区に属しています。

かつて工業都市として栄えたケノーシャは、現在ではシカゴやミルウォーキーへの通勤者が多く住む郊外都市としての側面が強くなっています。多くの住民が市外へ通勤しており、昼夜人口比率は91.1%です。統計上はシカゴ都市圏に含まれており、特にイリノイ州北部からの移住者が多いことから、シカゴ都市圏最北端の郊外都市として認識されています。一方で、ケノーシャ市街地には小規模なダウンタウンが形成され、商業の中心地として機能しています。また、観光業も経済を支える重要な要素です。ミシガン湖のビーチ、ヨットハーバー、歴史的建造物、路面電車など、観光客を惹きつける魅力が数多く存在します。

交通：便利なアクセスと公共交通機関

ケノーシャは、シカゴのオヘア国際空港とミルウォーキーのジェネラル・ミッチェル国際空港へのアクセスも良好です。市内にケノーシャ地域空港もありますが、こちらは一般航空機用の空港です。

シカゴとミルウォーキーを結ぶ州間高速道路I-94が市内に通っており、多くの住民にとって重要な交通路となっています。また、シカゴ近郊列車メトラのユニオン・パシフィック/ノース線の終点でもあり、シカゴへのアクセスも容易です。将来的には、ケノーシャ、ラシーン、ミルウォーキーを結ぶ近郊列車の計画もあります。

市内の公共交通機関としては、ケノーシャ地域交通局（KAT）が運営する路線バスと路面電車があります。2000年に復活した路面電車は、ダウンタウンを循環する全長約3.2kmの路線で、レトロな車体が観光客にも人気です。

教育：質の高い教育機関

ケノーシャには、リベラルアーツカレッジであるカーセイジ大学と、ウィスコンシン大学パークサイド校という2つの大学があります。カーセイジ大学は少人数教育に力を入れており、ウィスコンシン大学パークサイド校は地域密着型の州立大学として、ウィスコンシン州南東部の人材育成に貢献しています。

K-12課程の公立学校はケノーシャ統一学区が管轄しており、小学校、中学校、高等学校を多数擁し、高い教育水準を誇っています。

文化：多様な文化施設

ケノーシャには、スミソニアン協会と提携するケノーシャ公共博物館をはじめ、南北戦争博物館、恐竜発見博物館など、魅力的な博物館が複数あります。ケノーシャ公共博物館には、1万4500年前のマンモスの化石など、貴重な展示物が多数収蔵されています。

ケノーシャ交響楽団は、地元住民や学生を対象に定期公演を開催しています。また、かつてバーバーショップ・ハーモニー・ソサイエティの国際本部が置かれていたことでも知られています。

公園も充実しており、ミシガン湖沿いのビーチに加え、多くの公園が市民の憩いの場となっています。ハーバー・パーク、シモンズ・アイランド・パーク、ワシントン・パークなど、それぞれ異なる魅力を持つ公園が点在しています。

メディアに関しては、ケノーシャはシカゴとミルウォーキーの両方の放送市場に属しています。ケノーシャ住民は、地元の情報は主にミルウォーキーのメディアから得ています。

ケノーシャ市は、ドイツのヴォルフェンビュッテル、フィリピンのケソンシティ、イタリアのコゼンツァ、フランスのドゥエーと姉妹都市提携を結んでいます。

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